【インタビュー】MR.BIG エリック・
マーティン「君たちと同じくらい音楽
の力を信じているよ。9月に日本で会
おう!」

待望のニュー・アルバム『Defying Gravity』をリリース、そして9月には来日公演を行うMR.BIG。そのフロントマンであるエリック・マーティンへのインタビューを敢行した。それを紹介しよう。タイトルの『Defying Gravity』は“重力に逆らう”という意味。そのアルバムに秘めた熱いロックの思い、そしてMR.BIGの現状、来日公演に向けた意気込みを語ってくれている。
■MR.BIGとしてスタジオに入ったのだけど遊んでるヒマはなかった

■そのまま全員で火の輪に飛び込んでいった気分だったよ
──このアルバム『DEFYING GRAVITY』を作るまでのキッカケや流れを教えてください。
エリック・マーティン(以下、エリック):2016年12月にマネージメントの呼びかけで、メンバー全員で、ニュー・アルバムについて電話会議をしたんだ。それからわりとすぐ、ポール・ギルバートとビリー・シーンとパット・トーピーの3人でスタジオに入り、20曲分くらいのアイデアを出し合い、ジャム・セッションで揃えた素材を僕のところに送ってきた。そこから2、3曲選んで僕なりに発展させてみたんだ。もちろん、僕自身が書きためた曲もいくつかあった。ただこの時点で、僕も他のメンバーも、すでに決まっていたツアーやクリニックの予定があったから、まずはそっちをやり遂げた。そしていよいよMR.BIGとしてスタジオに入ったのだけど、遊んでるヒマはなかったから、そのまま全員で火の輪に飛び込んでいった気分だったよ。
──どんなアルバムにしようと考えていましたか? メンバー同士の話し合いや、プロデューサーもケヴィン・エルソンとはどういう話になっていたのですか?
エリック:いや、話し合いというのはなかった。最初は6曲くらいしかなかったけど、気がつけば11曲揃っていた。実はこれ、すごく僕たちらしい。いつもこんな感じなんだ。そりゃね、時間に急かされることなく、もっとじっくり曲に磨きをかけることができればもっと良いかもしれない。でも僕からすると、プレッシャーって悪いものじゃないと思う。集中力が増すし、フットワークが軽くなる。
──タイトル『DEFYING GRAVITY』に込めた意味や意気込みとは?
エリック:“Defying Gravity”とは、予測可能な当たり前の生き方に“ノー”と言うこと。普通に仕事して、結婚して、子供を作って、お手本通りの人生を送り、いつか死んでいくという……、極端な言い方かもしれないけど、そういう生き方じゃなくて、僕をはじめとする、ずっと夢を追い続けている人々のための歌なんだ。Defyとは逆らうこと、そして、ここでのGravity(重力)は、僕らを押さえつけようとするネガティヴな力を意味している。
──このニュー・アルバムは約3年ぶりですね。この3年を振り返って、どういう月日を過ごしてきましたか?
エリック:3年! つまり僕は3年間ロードで過ごしていたということ? MR.BIGで『…Stories We Could Tell』を作り、ツアーに出たものの、残念ながら4ヶ月ほどで終わってしまった。でも僕は家族を養うために働かなきゃならない。だからソロ・ツアーと、ドイツのロック・オペラ、AVANTASIAとの活動を、かなり長いこと行なっていた。僕には12歳になる双子の息子たちがいて、とにかく育ち盛り。2ヶ月ごとに新しいスニーカーを買わなきゃならない!(笑)仕事が必要なんだ。MR.BIGがここまで久しぶりになるとは思ってもいなかったよ。だけど、今こうして活動再開して本当に嬉しい。
──レコーディングは6日間で終えたそうですが、レコーディングはどういう風に進められたのでしょうか?
エリック:そうなんだよ。めちゃくちゃ早くてさ。ケヴィン・エルソンと一緒にLAのオーシャン・スタジオに入って、メンバーがお互いのデモを聴かせ合うんだけど、僕の場合はデモがなかったから、みんなを前に、アコースティック・ギターかピアノを弾きながら生で聴いてもらったんだ。一種のオーディションだね。で、最終的に13曲使えそうな曲があったけど、その中から11曲を6日間で録った。事前に練習する時間もなく、ぶっつけ本番で。先にトラックの方を録るんだけど、その時僕が仮のヴォーカルを入れ、素材を家に持ち帰り、リード・ヴォーカルを録ったんだ。その間もLAでは並行して、ケヴィンがミキシングを行なっていた。ヴォーカル録りの時来てもらったエンジニアは、僕のよい友達で、ジェリーフィッシュという大好きなバンドのベーシストでもあったクリス・マニングで、彼は僕の中から最高の声を引き出してくれた。ヴォーカル・ハーモニーのアレンジにも長けている。以前日本で出した『MR. VOCALIST』のシリーズも彼にやってもらったんだよ。
──長期間のレコーディングとこういう短期間のレコーディングの違いとは?
エリック:もしスタジオで曲を書く必要があるならもっと時間を使いたいと思う。ベストなサウンドを求め、しばらく曲と共に生きてみたいから。でも、今回のアルバムは、僕がこれまで関わったどのレコーディングとも違っていた。とにかく作業時間が短くて、すべてを完璧に仕上げるというわけにはいかなかったんだ。とは言え、それ自体がチャレンジであって、もしかすると、最初から、こうすべき定めだったのかもしれない。僕らは30年近く一緒にやっているから、アルバム作りの仕組みから、曲作りのアプローチまで熟知しているつもりだ。だから、やり方がどうあろうと、どこからか、マジックのようにアルバムは生まれてくるんだ。
■僕は日本のファンたちと同じくらい努力家で平和を愛してる

■そして音楽の力を信じているよ! 9月に会おう!
──『DEFYING GRAVITY』には、1、3、4、9、10曲目など、ロックの原点に戻ったような曲が多いですね。とても楽しく表現しているように感じます。こういう音楽性は意識してのことですか?
エリック:いや、プランと呼べるものは何もなかったんだ。頭を使って意識したと言うより、どちらかというと、パズルみたいな感じ。みんなでいじっているうちに、奇跡的にすべてのピースが揃った。
──エリックのヴォーカルは、昔と変わらない新鮮さと迫力を感じます。特別なエキササイズがあるのでしょうか?
エリック:嬉しいなあ、そう言ってもらえて。ありがとう。今は、特にツアー中は、昔みたいに酒は飲まない。そういう音楽ライフって身体を蝕むからね。昔は、ショー前にウォーミングアップをしたり、エキササイズをしたり、ヘルシーな物を食べたり、規律を守っていた時期があった。でもその後、かなり乱れた時期もあって……今は、昔に戻っているよ。それもあって、これまでで一番ハッピーでパワフルなのかもしれない。
──「Nothin' Bad」のヴォーカルは素晴らしい。聴く側としてもとてもエキサイトします。「Green-Tinted Sixties Mind」や「To Be With You」をしのぐ名曲になりそうな気がします。この曲に込めた思いを教えてください。
エリック:これはポールの曲だけど、'60年代っぽいグルーヴが凄くいいよね。僕もその時代が大好きだから、これは歌っていて楽しかったなあ。ヴァースは可愛いビートルズって感じだけど、サビの部分はGodspellというアメリカのロック・ミュージカルを彷彿させる。とてもクールで、かなりクセがあって…。
──「Mean To Me」のビリーとポールの演奏は心が震えます。エリックはどう思いますか?
エリック:ほんと、カッコいいよねえ。二人は、エレクトリックな決闘の戦士たちだ。特にあのパートは、2時間くらい掛けて完璧を目指していたよ。
──「1992」。この年はバンド初期の絶頂期ですね。この曲に込めた思いを教えてください。
エリック:いかにもポール・ギルバートって感じでしょ? キャッチーで、どこかちょっとおばかで。でもさ、きっと僕が「To Be With You」というシンプルな曲を持ってきた時も、同じようなこと言われたんだろうね(笑)。「1992」は、まあ、一種のうちわウケだね。ここに出てくるレコード会社とはアメリカのレーベルのことで、彼らは、「To Be With You」がナンバー1になったあと、アルバムを出すごとに僕らの契約を切ろうとした。いかにアメリカでのサバイバルが大変だったかって話だよ。でも実際は、アメリカのファンも、その他たくさんの国のファンもがあの曲を愛し、結果『LEAN INTO IT』というアルバムを買ってくれた。僕は純粋に嬉しかったし感動したんだ。ファン層は世界中におよんでいた。なのに、レコード会社とは苦難の連続だった。それがミュージック・ビジネスというもの。でもね、僕は今でも夢を生きているよ!
──「Be Kind」はバンドの新しい代表曲になる気がします。ポップでスパイスが効いている。この曲について教えてください。最後のフリージャムっぽいところもとても面白い。このアイデアは?
エリック:これもポールの曲だけど、一種のプロテストソングだね。連日ニュースでは争い事や人間同士の憎しみが伝えられる。いや、ニュースの中だけじゃない。そのあたりの街角にも憎しみがはびこる。そんな状況に嫌気がさしたポールが、変化を求めて書いたんだ。曲調はドゥワップ、R&B、ロック。ポールって一風変わったソングライターだけど、この曲はとても愛しく思う。みんな仲良くしよう、優しくなろうって言っているのだからね。それってそんなに難しいこと? 最後のジャム・セッションは、レコーディングの息抜きにみんなでジャムっている時にビリーが思いついた。アルバムの締めとしてはめっちゃカッコいいよね。Jam on!
──パットの体調はいかがでしょうか?
エリック:元気にがんばってるよ! パットは、今も昔も、僕らの精神的支え、ガイド、カウンセラーだ。今回は、アルバム全体ですべてのパーカッションを請け負っていて、もちろんバックグラウンド・ヴォーカルも。あと、ツアー・ドラマーであるマット・スターのコーチとしても活躍した。実は、僕はパットを念頭に置いて2曲ほど書いていたんだ。でも、残念ながらフルに演奏するだけの自信はなかった。とは言え「Everybody Needs A Little Trouble」では叩いているよ。
──日本のファンは来日公演を待ち焦がれています。意気込みを聞かせてください。
エリック:定番曲はもちろん、新曲もいくつかやるし、MR.BIGと言えば、な、楽器交換ソングもやるからね! 覚えているよね? 以前チープ・トリックの「Ain't That A Shame」とか、ディープ・パープルの「Woman From Tokyo」とか、デヴィッド・ボウイの「Suffragette City」、ローリング・ストーンズの「Brown Sugar」などで、僕がドラムを叩いたり、ビリーがサックスを吹いたり、ポールがミック・ジャガーになりきって登場したの。今回もきっちり楽しめるよういろいろ考えているから、9月までもう少し待っててね!
──では最後に、日本の熱狂的なファンにメッセージをください。
エリック:コンニチハ! 今このインタヴューを読んでいる僕の大切な友達! 僕は君と同じくらい努力家で、君と同じくらい平和を愛し、君と同じくらい音楽の力を信じているよ! 最後まで読んでくれてありがとう。9月に会おう!
取材・文●編集部・森本智
ライブ・イベント情報


<MR.BIG JAPAN TOUR 2017>

【札幌】

9/20(水) ニトリ文化ホール

一般発売:後日発表

問い合わせ:道新プレイガイド 011-241-3871
【金沢】

9/22(金) 本多の森ホール

一般発売:後日発表

問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
【名古屋】

9/25(月) ZEPP NAGOYA

一般発売:後日発表

問い合わせ:CBCテレビ事業部 052-241-8118
【東京】

9/26(火) 日本武道館

一般発売:6/24(土)

問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
【仙台】

9/29(金) 仙台サンプラザホール

一般発売:7/8(土)

問い合わせ:ニュース・プロモーション 022-266-7555
【大阪】

10/2(月) フェスティバルホール

一般発売:6/24(土)

問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/osaka
【福岡】

10/3(火) 福岡市民会館

一般発売:6/24(土)

問い合わせ:TSUKUSU 092-771-9009
【広島】

10/5(木) BLUE LIVE 広島

一般発売:7/15(土)

問い合わせ:YUMEBANCHI 夢番地(広島)082-249-3571
リリース情報


『Defying Gravity』

DXエディション

CD+DVD IEZP-119 ¥4,000+税

通常盤

CD IECP-10344 ¥2,500+税

1. Open Your Eyes / オープン・ユア・アイズ

2. Defying Gravity / ディファイング・グラヴィティ

3. Everybody Needs A Little Trouble / エヴリバディ・ニーズ・ア・リトル・トラブル

4. Damn I'm In Love Again / ダム・アイム・イン・ラヴ・アゲイン

5. Mean To Me / ミーン・トゥ・ミー

6. Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good) / ナッシン・バッド

7. Forever And Back / フォーエヴァー・アンド・バック

8. She's All Coming Back To Me Now / シーズ・オール・カミング・バック・トゥ・ミー・ナウ

9. 1992 / 1992~MR. BIG物語

10. Nothing At All / ナッシング・アット・オール

11. Be Kind / ビー・カインド

12. Defying Gravity(radio edit) / ディファイング・グラヴィティ(ラジオ・エディット)
DVD 収録内容(IEZP-119 のみ)

ディファイング・グラヴィティPV+メイキング映像

エヴリバディ・ニーズ・ア・リトル・トラブル PV+メイキング映像

メンバーによる全曲楽曲解説 他
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