TiAが『Deal with the devil』で見せるマルチな表現者としての可能性

TiAが『Deal with the devil』で見せるマルチな表現者としての可能性

TiAが『Deal with the devil』で見せ
るマルチな表現者としての可能性

これまで顔は非公開であっただけにファンとしてはついにといったところであろうか。MVはアニメのイメージに合わせて少し大人な世界観を演出したものになっている。
本題に入るまえにTiaについて軽く紹介しておきたい。
彼女がデビューするきっかけとなったのは動画投稿サイトのニコニコ動画で活動していたところsupercellのプロデューサーであるryoに見出されたことによる。当時は中学生でありながらも、特徴ある歌声とふんわりとしたやわらかなキャラクター性を発揮しており、スカウトされたのも納得だ。
今回は表題曲の『Deal with the devil』とカップリング曲『Say you love me』の対照的な二曲を取り上げ表現者という観点から見ていきたい。
まずはTVアニメ『賭ケグルイ』のオープニングテーマに起用されている『Deal with the devil』だ。
TiA『Deal with the devil』

これまでのTiaの楽曲と言えば、甘酸っぱい恋愛模様が描かれることが多かった。しかし、本作ではより大人の世界に踏み込んだ作品になっている。それに伴い、メロディーにはジャズの要素も取り入れている。ジャジーな音楽には欠かせないウッドベースの流れるようなウォーキングベースが目を引く。このウォーキングベースを聴いていると興奮で胸が激しく波立つのを感じる。まるでギャンブルの心理状態を表しているようだ。
歌詞を見ていただくと分かるように『賭ケグルイ』のテーマに沿っていることが分かるだろう。『賭ケグルイ』はその名の通り賭博がテーマの作品。舞台となっている私立百花王学園ではギャンブルによる勝ち負けが学園内における地位に直結しており、生徒はギャンブルに勝つことに強い執着心をもっている。
作品に登場する面々には執着心どころか狂気すら感じることもある。「行きつく先はHeaven or hell」や「勝者こそが正義」はまさに『賭ケグルイ』の世界観をそのまま反映している。『賭ケグルイ』においてギャンブルでの勝敗は今後の人生を左右する。
悪魔との取引を意味する「Deal with the devil」という表現は、主人公である蛇喰夢子(じゃばみ ゆめこ)の狂気じみたギャンブルへの執着を想起させる。蛇喰夢子は普段は温和で家柄の良いお嬢様キャラなのだが、ギャンブルになると一変して悪魔に憑りつかれでもしたかのようにギャンブルを楽しむことその一点のみに異様な執着心を見せる。勝つか負けるかということ以前にギャンブルのリスクそのものを楽しんでいるようにさえ感じられる。
本作において、Tiaはこのようなアニメの世界観を余すところなく体現する。表現力という観点からみると、前作『ニルバナ』と比較しても表現に広がりが生まれているように感じる。特筆すべきは引用したサビの部分。
妖艶な歌声とともに疾走感のある歯切れのよいリズムで一気に頂点へと駆け上がる様は心地よい。これまでのキャッチーな路線とは一線を画すTiaの立体感ある歌唱表現に注目だ。
次は、歌詞に擬声語や擬態語が用いられた遊び心のあるカップリング曲『Say you love me』。
カップリング曲 Say you love me
『Deal with the devil』はTiaの表現の広がりを感じる作品となっていた一方で、カップリングの本作は彼女の素の魅力を引き出す作品と言えるだろう。Tiaの特徴的な歌声とキャラクターとの相性が非常に良い。歌詞の系統としては『ラブミーギミー』、サウンドは『The Glory Days』を思わせるメロディー。
何と言っても印象的なのは「うるりられろ」「ひらりるれら」などの言葉の言い回しだ。歌詞全体を通して、ひらがなやカタカナが頻繁に用いられ語感を徹底的に追求して作られた意図が伺える。
中でも面白いのは次に紹介する歌詞。
勘が鋭い方は分かると思うが、なんと夏目漱石『吾輩は猫である』のパロディになっているのだ。猫の擬声語である「にゃんにゃん」の可愛らしい語感と夏目漱石の著書との何とも言えないギャップが面白い。
このようにちょっとしたユーモアに溢れているのも本作の魅力。しかし、一見意味のないこの擬声語のやり取りがタイトルへの布石となって表れる。
実はこの曲は先生に恋する乙女の恋愛ソングだったのだ。「クラ―ヴィア」とはドイツ語でピアノなどの鍵盤を有する弦楽器の総称のこと。これまでの擬声語に見られるやり取りは、先生の奏でる鍵盤楽器に憧れを抱く女の子の「妄想劇」であると推測できる。妄想劇だとするならばなぜ「うるりられろ」「ひらりるれら」といった言葉遊びを用いたのであろうか。

理由は単純で照れくさい気持ちを表すという目的で意図的に擬声語等々を用いたと考えられる。イメージとしては、自分の心の中で「Say you love me」と伝える前の予行練習のようなもので、妄想の中においてさえも恥ずかしくて言葉にできない様子を「にゃんにゃん」として表現している。語感にばかり意識が向かってしまいそうになるが、この曲の主人公の隠れた心理に気づくと思わず笑みがこぼれてしまう。

経験の集大成
『Deal with the devil』、『Say you love me』と性質の異なる二曲について見てきたが、Tiaは前者においてジャジーで色気のある曲へと挑戦することで表現の広がりを見せ、後者では、これまで同様ポップ路線を継承しさらに磨きがかかっている。本作から顔を出したことで活動の幅も広がってくるだろう。
ぜひワンマンライブで蓄積してきた経験の集大成を見てみたい。

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