【ライブレポート】<千歌繚乱vol.1
3>、若手V系バンドのリアル

8月29日(火)、BARKS主催の若手ヴィジュアル系ライブイベント<千歌繚乱>が渋谷REXにて開催された。
第13回目の公演となるこの日は、ヴァージュ、MEIDARA、DIMLIM、メリーバッドエンド、GRIMORE、シェルミィの6バンドが出演した。始動して数カ月というバンドから、地方で名を上げるバンド、世界観を作りこんだバンドなど、ひとくちに“若手ヴィジュアル系バンド”と括れない多彩なラインナップだ。本記事では、それぞれのバンドが作り上げたステージの模様をレポートしていく。
ドラムのハイハットの音とともに1バンド目、ヴァージュのステージが幕を開ける。最初に披露されたのはヴァージュのライブの定番曲「二枚舌」だ。遼(Vo)が「ぶっとんで来い東京!」と叫ぶと観客は一斉にジャンプ。激しい楽器隊の演奏にあわせファンからは拳を使ったヘドバンも繰り出され、フロアは一気にヴィジュアル系らしい“非現実”の世界へ。
3曲目に披露された最新シングル曲「凶夢」では、透明感ある遼の歌声がひときわ際立つ。この曲では沁(B)が一曲通してスラップでベースを奏でているのもポイントだ。ラストの「お人形遊び」ではAメロから皆が激しく頭を振る。それでも足りないとばかりに遼はフロアに激しく怒声を浴びせ、何度もヘドバンのループが起きる。一転サビでは聴きやすいサビに合わせてファンの手扇子が舞い、美しさと激しさを兼ね備えたヴァージュならではの光景が生まれた。ヴァージュのステージは「叫べ!」「もっと来い!」という煽り以外はMCもなく、ひたすらに彼らの描く感情的でダークな世界観に浸ることができるものだった。
続くMEIDARAは、メンバー全員が般若の面をかぶって登場。和風メタルなSEが終わると一斉に般若の面を取り、その世界観のまま「鬼の目にも」「ENNMA」を披露する。バンドのモチーフである“鬼”を体現したような選曲で、初っ端からインパクトを与えてくれる。血しぶきのついた和服を振り乱すメンバーと、ファンが一緒になって頭を振っている様にも圧倒される。
そこから“お腰につけたきびだんご”というフレーズが印象的な「ココロナシ」、嫉妬を描いた「飼愛は主を喰らう。」など、本公演の翌日にリリースされるミニアルバム『六道輪廻』からの楽曲を次々披露していく。和の要素を取り入れながらもそれに引き摺られすぎない音楽性は、MEIDARAならではのものだろう。全5曲、いずれも疾走感あるサウンドで勢いよくステージを終えた。
イベントの中盤を担うDIMLIMは、圧巻のステージを作り上げる。メンバー全員の演奏力が高いので、体の奥底までずんと音が響いてくるのが実感できた。もちろん演奏力だけでなくライブ自体にも楽しみどころが満載だ。「MASSACRE」では「さっさとしろ、クソが!」という聖(Vo)の煽りでフロアは上手、下手に二分され、ウォールオブデス。フロアのファンは激しくぶつかり合い、ごちゃまぜになる。
シャウトやデスボイスを多用したメタル寄りの楽曲が次々と披露されていき、「初潮」ではサビの美しいメロディと間奏の感情的な聖の叫びに心を打たれる。ファンは音に合わせヘドバン、ジャンプを繰り返し、メンバーもそれに応えるような激しいステージング。ラストの「Regret」まで、まさに怒涛という言葉がぴったりのステージが繰り広げられた。
「殺せ、殺せ」の声とともに登場したのは、名古屋を拠点に活動するメリーバッドエンドだ。この日メリーバッドエンドは新衣装での登場ということもあり、ファンのテンションは幕開けから最高潮。“神”であるY.H.V.H ロキ(Vo)を讃える「G.D.F」からスタートしたライブは、彼らの独壇場へ変わる。“神としての力を得る”ために活動しているバンドだけに、ステージも独特だ。
「scarrification」では激しく、「羊」では妖しげな雰囲気を醸し出す。ロキは歌声だけでなく、表情や体全体を使って楽曲の持つ色を多彩に表現するため目が離せない。MCで「楽しむってことはどんなもんか見せつけてやりたい」と述べ披露された「失敗作は夢を見る」ではマニピュレーターの奇凛がフロアに降り、そこを中心にサークルモッシュが起きる。全身を使ってライブを楽しんだファンはステージ終了後、一様に憑き物が落ちたようなすっきりした表情を見せていたのが印象的だった。
続いてはGRIMOIREのステージ。おおかみ、ふくろう、ひつじ、うさぎに扮した楽器隊と、目隠しをしたRyNK(Vo)が登場するやいなやフロアはこれまでと一変、おとぎ話のようなダークファンタジーの世界に塗り替えられる。衣装やメンバーの立ち振る舞い、全てがファンタジックなのだが、それだけだと思ってはいけない。GRIMOIREは楽曲センスも演奏力も、いずれもレベルが高いのだ。
ムーディーな「ねじれインサイド」、ハンドクラップを重ねて楽しむ「せいたんデビル」など趣の異なる楽曲が披露されたあとは、ファンとのコール&レスポンスもあり一体感が生まれる。そしてラスト「ゆめのまほろば」では、Kie(G)がギターをアコギに持ち変え、優しい音色でフロアを包み込んでいく。GRIMOREは孤独をテーマに楽曲を制作しているが、この楽曲は最後に希望が見える歌。RyNKは「この世界が偽物でも僕は君といるよ」と歌い上げると、「ありがとうございました、GRIMOREでした」とぴょこんと一礼してフロアを去る。夢のような世界観が繰り広げられたライブの締めくくりに、幕が下りると同時にファンからは大きな拍手が上がった。
そして暗転した会場にアナウンスが流れ登場したのは、本イベントのトリを務めるシェルミィ。「見てろこれが下剋上だ!」と豹(Vo)が叫び始まったのは「放課後の凶室」。初っ端から彼ら独自の“メンヘラ”ワールドを作り上げていく。「僕たちドマイナーバンドはいつになれば売れるのでしょうか」と語りかけて演奏されたバンド界隈を風刺した楽曲「パライゾ」、大嫌いな大人たちに向けて“だめなら諦めるから黙ってろ”と歌う「悪い大人」など、彼らの紡ぐ言葉はリアル。どの曲もシェルミィ自身の本音なのだろうなと感じる。
だがそこにどうしようもない狂おしさ、悔しさのようなものも垣間見える。MCで豹は「気付いたら誰かに救われたいと思ってました。その方法がこのバンドで見つかりました」と述べ、救いを求めた切ないバラード「哀しい日はいつも雨」を披露する。その後ラスト2曲は「気を取り直して日ごろの恨み込めてみろ!」と暴れ倒し、「もう何も言うことはありません」との言葉を残して感情的なシェルミィのステージが終了した。
この公演に出演した6バンドはいずれも自分たちが信じるもの、目指すべき姿についてしっかりとビジョンが見えていたように思う。若手バンドらしい勢いと自らの信念に基づいた音楽で、今後も活躍していってくれるはずだ。なお、この日行われていた<千歌繚乱>オリジナル企画の「バンドくじ」や「ライブ写真即売会」など大盛況の様子だった。
次回<千歌繚乱vol.14>は10月16日(月) に渋谷REXにて開催。こちらにはSick.、ZERO MIND INFINITY、ハクビシン、まみれた、未完成アリス、ラッコの6バンドが出演する。先行チケットの受付は9月11日(月)16時まで、一般チケットの販売は9月12日(火)12時よりスタートする。
取材・文◎Yoko Hattori(BARKS)
セットリスト


■ヴァージュ

1.二枚舌

2.蓮華

3.凶夢

4.ボクノ悪イ癖

5.お人形遊び
■MEIDARA

1.鬼の目にも

2.ENNMA

3.ココロナシ

4.飼愛は主を喰らう。

5.イト
■DIMLIM

1.Destroy a desire

2.MASSACRE

3.初潮

4.虚妄の歌

5.Regret
■メリーバッドエンド

1.G.D.F

2.scarrification

3.羊

4.失敗作は夢を見る

5.どうして?
■GRIOMOIRE

1.フラブジャスナハト

2.ねじれインサイド

3.せいたんデビル

4.ブラッディマイパレード

5.ゆめのまほろば
■シェルミィ

1.放課後の凶室

2.パライゾ

3.悪い大人

4.哀しい日はいつも雨

5.ストロードール

6.ファッションマイスリー
<千歌繚乱vol.14>


日時:2017年10月16日(月) 開場17:00/開演17:30

開場:渋谷REX

出演:Sick./ZERO MIND INFINITY/ハクビシン/まみれた/未完成アリス/ラッコ

料金:【先行チケット】3,500円 【一般チケット】3,800円 【当日券】4,000円
チケット受付スケジュール

【先行抽選受付】

8月30日(水)12:00~9月11日(月)16:00

チケット購入ページURL:[チケットデリ] http://ticket.deli-a.jp/
【一般先着受付】

9月12日(火)12:00~10月15日(日)

チケット購入ページURL:

[イープラス]

http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002235976P0030001

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