テクニカルベースだけではない!ビリ
ーシーンの魅力とは
ハードロックベースの世界では、言わずと知れたレジェンド的存在であり、世界で最も有名なプレイヤーのひとりであることは、おそらく異論のないところでしょう。
初めて聞いたという方も「To Be With You」の大ヒットで知られるMR.BIGという米ロックバンドのベースを弾いている背の高い金髪の人と言えば、ご存じの方も多いかと思います。
ビリーシーンが好きと言うと……
ビリーシーンのベース、というと「速弾き」「超絶技巧」「テクニカル」「トリッキー」「ソロ」「弾きまくる」といったイメージが定着してしまっているからでしょうね。
特に、一緒にバンドをすることになる人の場合は「ちゃんとバンドに合わせたプレイできるの?」「ひとりよがりな人かも?」という懸念を持たれてしまうのでしょう。
ビリーの特徴的なプレイの数々
すごい勢いで指板を上から下まで縦横無尽に駆け巡ってみたり。
ライトハンドタッピングは言わずもがな、両手タッピングも駆使してみたり。
さも楽しそうにギターと超高速ユニゾンフレーズを弾いてみたり。
弦4本全てを使って2オクターブのスウィープ奏法をしてみたり。
ベースなのに1音半もチョーキングしてみたり。
ギターのようなピッキングハーモニクスを出してみたり。
ネックをしならせてビブラートをかけてみたり。
などなど、俗に「超絶技巧」と呼ばれるネタは、挙げればキリがありません。
また他にも、左手をネックの上から出して弾いてみたり。
右手と左手を交差させた状態でタッピングしてみたり。
ベースを天に向けて立てて弾いてみたり。
ピアノのように床に置いて弾いてみたり。
はたまたバイオリンのように担いで弾いてみたり。
スティーヴ・ヴァイとは二人羽織で弾いてみたり。
と、ステージングやパフォーマンスの面でも非常にアグレッシブです。
また、ライブの定番となっているソロタイムも特徴だと言えるでしょう。
少なくとも5分以上、長い時は10分以上に渡って、圧倒的なスピード感と迫力のディストーションサウンドで、次々と多彩なソロフレーズを繰り出して弾きまくる姿は圧巻の一言です。
そんなテクニカルな印象ばかりが目立つビリーシーンですが、本人は「それは僕のプレイのほんの一部だよ」と言っています。
そうなのです、それだけじゃないのです。
ビリーには、他にもたくさんの魅力があるのですよね。
有用なアイディアの宝庫
フレーズ、奏法、サウンド、機材など、さまざまな観点において、とにかく「アイディア」が素晴らしいのです。
何をやっているか分からないような超絶プレイも、実は合理的であり、緻密に計算されたものだったりします。
また、ステージでミスをするリスクを減らす工夫も随所(ずいしょ)に見られます。
感覚系アーティストの中には、自身のプレイについて、「んー、なんとなく無意識のうちにこうやっているのだ」というような曖昧な説明をする方も多いですよね。
ですが、ビリーのプレイスタイルには、明確な目的と理由があり、ちゃんと技術的な裏付けもあるのです。
ちなみに、子供時代から科学が得意だったそうで、どちらかというと理系男子なのですね。
これも好きなところです。
名声をほしいままにしている稀代(きたい)のロックベースプレイヤー。
それにも拘わらず、今でも毎日ベースを弾いて「いつも新しい発見がある」「全く飽きることがない」と言いますから、その真摯な姿勢とベース愛には感服です。
ビリースタイルをもっと知ってほしい
恥ずかしながら、正直、何をどうやっているのか分からないことが多いです。
それにも拘わらず、スラップスタイルは、老若男女を問わず、世界中のプレイヤーに広く浸透していて、多くの方がそのエッセンスを自分のスタイルに取り込み、素晴らしいプレイをされています。
対して、ビリーのスタイルは、一般的になっているとはとても言えません。
その登場から40年以上も経過しているにも関わらず、です。良くも悪くも、簡単に真似ができない唯一無二のスタイルとなってしまっているのでしょう……。
僕は、ビリーシーンスタイルのベースも、スラップのように、ひとつのプレイスタイルとして認知されてもよいのではないかと思っています。
前述しましたが、ビリーのプレイは、斬新かつ有用なアイディアの宝庫です。
難解に見えるビリーの奏法やアイディアを、かみ砕いて整理し、さらに体系化することで、もっと多くの方がそのエッセンスを自身のプレイに応用できるようにしたい……。
おこがましいようですが、これを自分のミッションだと思って活動しています。
そして、僕自身、ビリーのプレイや考えを実践していく中で、バンドやセッションでご一緒した方から、「ぢゃっくさんがベースで良かったです!」というお言葉をいただけたときは、本当に嬉しかったですし、間違っていなかったのだと確信しました。
今後もそんなビリーシーンのプレイスタイル、奏法の解説や練習法の紹介だけでなく、考え方や人間性なども含めて、その魅力をお伝えしていけたらと思います。
ビリーのことが好きな方はもちろん、全然好きじゃないという方にも、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
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