【インタビュー】モグワイ、3年ぶり
AL完成「各国がそれぞれに太陽を持っ
ていると思ってた友人がいてね(笑)

今年2017年9月に3年振り通算9枚目となるニュー・アルバム『エヴリ・カントリーズ・サン』をリリースすることを発表し、それに先立って8月には<HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER>での来日が決定しているモグワイ。97年のデビューからコンスタントに作品を発表し、15年には結成20周年を祝してベスト・アルバムをリリース。昨年2016年には、広島訪問にインスパイアされたサウンドトラック『アトミック』を発表し、同年レオナルド・ディカプリオ主演のドキュメンタリー『地球が壊れる前に(原題:ビフォア・ザ・フラッド)』のサウンドトラックにも楽曲を提供するなど、もはやポスト・ロック界の最重要バンドとなった現在でも活発に活動し熱烈なラブコールが世界中から止むことはない。
来たる最新作では99年発表の傑作『カム・オン・ダイ・ヤング』のプロデュースを務めた盟友デイヴ・フリッドマン(マーキュリー・レヴ)と再タッグを組んだモグワイのバリー(G、Key)がインタビューに応じてくれた。
◆アルバム『エヴリ・カントリーズ・サン』 画像
  ◆  ◆  ◆
■ 僕たちにとってヴォーカルはあまり重要ではない(笑)
■ 言葉も楽器の一つといった感じ
▲ニュー・アルバム『エヴリ・カントリーズ・サン』
── 2年前にバンドは結成20周年を迎えられて、併せてベスト・アルバム『セントラル・ベルターズ』もリリースされましたが、今回の3年ぶりとなるニュー・アルバム『エヴリ・カントリーズ・サン』からは、バンドが再び新たなキャリアへと踏み出していくことを窺わせるような力強さが感じられます。今作についての手ごたえはいかがでしょうか?
バリー(G、Key):手応えと言うより、とにかく出来上がってハッピーだね。ニューヨーク州のすごく良い場所でレコーディングすることが出来たし、またスタジオ・アルバムをリリース出来るということに興奮しているよ。
── 出来上がって、前回にはなかった新しい感覚はありましたか?
バリー:今回のアルバムは、曲の一つ一つが似ていない。それを感じたね。前回のアルバムは収録された曲が全体的に似ていたけど、良い意味で今回は曲が全部違って幅が広くなっているんだ。
── 今回の曲作りは2016年の春ごろに始まったとのことですが、具体的にどのようなかたちで作業は進められたのでしょうか?
バリー:マンハッタンではなく、もっと北のニューヨーク州にあるスタジオで11月、12月にレコーディングして、クリスマス休暇で一回ヨーロッパに戻ってから1月にまたスタジオに戻ってアルバムを仕上げたんだ。曲作りは、前回のアルバム以降敢えてアルバムのために“さあ、曲作りを始めよう!”って感じで最初から書き始めたわけじゃない。すごく自然な流れで曲が仕上がっていったんだ。僕たちは離れて住んでいるから、まず個々でアイディアを考えて、そのアイディアのMP3を交換しながら曲を作っていった。で、スタジオに入る2週間前くらいにグラスゴーで集まって、それをもっと形にしていったんだ。でも、ニューヨークのスタジオでも結構作業したし、そのスタジオで即興で出来た部分も多いよ。サウンドのイメージは、よりギターを使ったサウンドにしようということだけ考えていたね。前回よりももっとラウドなサウンド。それだけだよ。僕たち、考えるっていうのがあまり得意ではないんだ(笑)。
── 今回のプロデューサーにデイヴ・フリッドマンを起用した理由を教えてください。
バリー:彼と以前仕事をした時、それがすごく良い経験だったから。これまで彼と再び作業してこなかったのは、僕たちが同じプロデューサーとばかり仕事をせずに新しいプロデューサーを常に起用するというスタンスをとっていたから、というだけ。時間も経ったし、彼とまた作業してみるのもいいんじゃないかと思ったんだ。デイヴは僕らにとって家族みたいな存在だしね。彼は、良い意味で細かくない。そのお陰で、僕たちがリラックス出来るのがすごく良いんだよ。ミスをそのまま活かしたり、そこで自然に生まれるものを活かすのが彼なんだ。彼自身がリラックスしているから、僕らもリラックス出来る。それが彼の魅力だね。
── フリッドマンとの共同作業は15年前の『ロック・アクション』以来となるわけですが、今作との共通点や相違点について指摘できるポイントがあれば教えてください。
バリー:『ロック・アクション』では、スタジオにあったシンセといった使い方がわからない楽器を取り入れてみた。たまたまそこにあったから、じゃあ使ってみようということになったんだ。あれは楽しかったな。ニュー・アルバムとの共通点や違いか……わからないな。違いは、曲の書き方。それだけだと思う。前は皆で一緒に書いていたけど、今はそれぞれ違う場所に住んでいるから、一人一人曲を書いてそれを持ち寄っている。その違いはサウンドにも出ていると思うよ。それもわからないけど(笑)、ははは(笑)。
── (笑)では、共通点は何だと思います?
バリー:プロデューサーが同じだから、サウンド・プロダクションが同じだと思う。曲は違うんだけど、サウンドはすごく似ていいる。わかりにくいかもしれないけど、違いと共通点はそこだと思うね。
── 前作の『レイヴ・テープス』では、アナログ・シンセサイザーで曲作りが行われたり、エレクトロニック・ベースやギターの代わりにベース・シンセサイザーが使われたりといった新たなアプローチが試されていましたが、今回の曲作りや演奏において試された新たなアプローチやアイディア、またとくに意識を置いていたポイントがあれば教えてください。
バリー:さっき話したように、今回はギター・サウンドをもっと取り入れたんだ。それだけだよ。前回のアルバムでは、ギターが少なすぎて充分ではなかった。それがちょっと問題だなと思ったから、今回のアルバムではギターをより重視したんだ。
── 「Party In The Dark」は、ニュー・オーダーも連想させるポスト・パンクやニュー・ウェイヴ風のサウンドが印象的ですが、この曲はどのようにして生まれたのでしょうか?
バリー:その曲は、デモが出来た時点では奇妙なポップソングだった。でもレコーディングの時にシンセやオルガン、その他色々な要素を加えて、始めに出来たものよりも超ビッグな作品に変化したんだ。最初の時点では、僕たちはあまり好きじゃなかったんだよね。作業していくうちに、全然違うものが出来上がったんだ。
── 「1000 Foot Face」は、ゴスペルのフィーリングも感じられるスピリチュアルなムードが印象的です。今のモグワイのサウンドにおいて「ヴォーカル」、あるいは「リリック」とはどのような意味を持つものなのでしょうか?
バリー:なかなか出来上がらなかった曲の一つだよ(笑)。ヴォーカルも長いこと決まらなかったし、何をもって完成としていいかわからずそのままになっていた曲の一つだね。よし!と思えるまでに時間がかかった。でも、僕たちにとってヴォーカルはあまり重要ではない(笑)。言葉にもそこまでこだわりはないし、楽器の一つといった感じだね。
◆インタビュー(2)へ
■ また曲の終わりに皆が拍手してくれるのを楽しみにしているよ(笑)
── 一方、今作の後半部分においては、楽曲によっては初期のモグワイ・サウンドも彷彿させるアグレッシヴなギター・サウンドやノイジーな要素が特徴的です。なかでも「Old Poisons」はその象徴的なトラックと言えますが、この曲についてはいかがでしょうか?
バリー:ライヴで演奏するのが本当に楽しい曲だよ。すごくノイジーだし、ライヴではまだ2回しかプレイしてないんだけど、パニックになりそうなくらい超早くて、演奏するのがかなり大変なんだ(笑)。それがすごく楽しいんだよね。セットリストの最後にもってこいの曲だと思う。
── 今作は、リリース前に全曲がライヴで披露されてた(※7月に開催されたバルセロナのフェスティヴァル<プリマヴェーラ・サウンド>にて)ことも大きな話題を呼びましたが、たとえば、ライヴでのサウンドの聴こえ方や聴かせ方、みたいなところも意識したうえで今作の楽曲が制作された面もあったりするのでしょうか?
バリー:そうだね。これまでのアルバムでは、使う楽器が多すぎてライヴでプレイするのが困難な曲が沢山あった。それが問題だったから、今回はライヴで演奏することをちゃんと考えたんだ。アルバム全体をプレイできる作品が出来上がったのは初めてじゃないかな。
── 長い間活動してきて、今回が初めてとは驚きですね。
バリー:そう、僕たちはアマチュアなんだ(笑)。ははは!(笑)。
── ちなみに、そのリリース前にアルバムの楽曲を全曲、それも収録順に披露するというアイディアは、どんな意図から生まれたものだったのでしょうか?
バリー:あれは、バルセロナのプリマヴェラ・フェスティバルのアイディアだったんだ。提案してもらって感謝してるよ。同じ曲を演奏するだけではつまらないし、新しい曲をプレイするのは新鮮だからね。ショーをやるまでに、3週間くらい練習したんだ。全曲をライヴで演奏出来るとはいえ、難しくはあるからまだまだ練習中だよ(笑)。オーディエンスの反応も良いんだ。フェスでも皆最後まで残って聴いてくれていたしね。未だに緊張するけど、そのうち慣れてくると思う。演奏してみて、やっぱりライヴでそれを再現するのは難しいなとは感じたよ。
── バンドは前作『レイヴ・テープス』後、『アトミック』と『ビフォア・ザ・フラッド』という2枚のサウンドトラックをリリースされましたが、その制作が今作にフィードバックされた部分はありますか? また、今作の制作に影響を与えたりインスピレーションをももたらした出来事、あるいはレコーディング中によく聴いていたレコードなど何かあれば教えてください。
バリー:シンセのセットアップとかかな。サウンドトラックを作る時に使ったものに慣れたから、それをそのまま今回のアルバムでも使ってる。制作中は、ニューヨークでホラー映画を沢山観たね(笑)。だから、もしかしたらそれが反映されてるかもしれない(笑)。人里離れた場所だったから、映画を観るしかエンタテイメントがなくてね。僕はホラーは苦手なんだけど(笑)、ホラー映画の恐怖感がサウンドに出ているかもしれない(笑)。音楽は何も聴いてなかったよ。
── 最終曲の「Every Country's Sun」からアルバムのタイトルがとられた理由は? また、今回のアルバムの構成に関して意識したポイントは?
バリー:僕らの友人で、各国がそれぞれに太陽を持っていると思ってた奴がいてね(笑)。太陽は惑星の一つって知らなかったんだ(笑)。彼は、太陽が国によって違っていて、だから気候も違うと思っていたんだよ(笑)。バカだよな(笑)。でも、それが面白いなと思ってそこからアイディアをもらったんだ。聞こえもよかったし、それをアルバムタイトルにしたんだよ。ストーリーラインは意識しているし、もしくはアップダウンのある波を作ることは意識しているね。そのためには、最初と最後のトラックは大切。お互いにプレイリストを作って意見を言い合って、どの曲順が一番良いかを3、4日話し合ったんだ。
── ところで、バンドがサウンドトラックを制作した『アトミック』と『ビフォア・ザ・フラッド』は、ともに社会的・政治的なメッセージ性の強いドキュメンタリー/映画でした。その背景には、バンド側の意図的な判断があったのではないかと想像するのですが、一方、近年ヨーロッパではイギリスのブレグジットやそれに連なる様々な対立や分断、またアメリカではトランプ政権を巡る混乱と、いま世界はとても緊張した状況を迎えています。そうした世の中の空気というのも、今作には反映されていると言えますか? たとえばアメリカのフェイク・ニュースやポスト・トゥルースの言説なんかを見ると、あなた方が20年前にリリースしたEPのタイトル「No Education = No Future」が予告していたとも言えるような気がしてくるのですが(※あの作品は夜間外出禁止令に対する抗議のメッセージだった)。
バリー:スチュアートが似たような質問をされていたインタビューを読んだんだけど、彼は自分たちは外界と遮断されていたから、あまりそういった社会情勢には影響されていないと話していた。スタジオがあった場所は人里離れていたし、テレビも全く見ていたなかったし、孤立していたんだ。それが逆に良かったと思うけどね。……(No Education=No Futureに関して)ははは(笑)、その通りだね(笑)。まあ、あれは夜間外出禁止令に対するものだったけど、あの法律は長く続かなかったから、僕たちが勝ったってことで(笑)。
── ボブ・ディランの言葉で「今の時代に何が起きているのか知りたければ、音楽を聴く必要がある」というのがあります。仮にもし同じことが今作についても当てはまるとしたら、今作には今の時代の何が反映されていると言えると思いますか。
バリー:僕たちは、リスナーに自由に解釈して欲しいし、それぞれ自分なりに作品を楽しんでもらいたい。だから、あまり何か決まったものを反映させようとはしないんだ。何を感じるかは、オープンにしたいんだよね。
── 個人的な今作のベスト・トラックを教えてください。
▲ニュー・アルバム『エヴリ・カントリーズ・サン』
バリー:最後のトラックかな。アルバムの最後を飾るのにふさわしいトラックだと思うし、爆発するような感じが好きだね。(日本語で)バクハツ!(笑)。僕はこの曲でギターを担当しているんだけど、ギタリストではないからすごく難しいんだ。でもすごく楽しいよ。
── 8月に<HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER>での来日が決定しています。そこでも今作の楽曲を全曲披露されるそうですが、どんなライヴになりそうですか。
バリー:他の国では昔の曲を半分、新曲を半分っていう割合で演奏することもあるんだけど、日本では新曲をより多めに演奏しようと思っているんだ。
── 次回の来日時に何か日本でしたいことや楽しみにしていることはありますか?
バリー:友達に会ったり、色々見てまわりたいね。日本って何回行っても退屈しないんだ。ニューヨークは退屈することもあるんだけど、日本はまだそれを感じたことがないんだよね。
── 日本のファンにメッセージをお願いします。
バリー:ショーに来て、また曲の終わりに皆が拍手してくれるのを楽しみにしているよ(笑)(曲のおわりごとに拍手をするのは日本のオーディエンスだけなので)。とにかくショーを楽しんで! 300%楽しいショーになるはずだから(笑)。
  ◆  ◆  ◆
アルバム『Every Country’s Sun (エヴリ・カントリーズ・サン)』
レーベル: Rock Action Records / Hostess
海外発売日:2017/9/1(金)
【トラックリスト】
1. Coolverine
2. Party In The Dark
3. Brain Sweeties
4. Crossing The Road Material
5. aka 47
6. 20 Size
7. 1000 Foot Face
8. Don't Believe The Fife
9. Battered At The Scramble
10. Old Poisons
11. Every Country's Sun
12. Fight For Work ※
※日本盤ボーナストラック

7インチシングル「Coolverine (クール
ヴェリン)」

レーベル: Rock Action Records / Hostess
発売日:2017年8月2日(水)
品番:HSE-4207
形態:7インチ
価格:1,500円+税
※完全生産限定盤、日本独自企画盤、歌詞対訳付(予定)
<トラックリスト>
1.Coolverine
2.Party In The Dark

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