【セカイイチ】
取材:宮本英夫
実験的なことをやるのがポップスの究極
の形
アルバム4枚目にして初のセルフタイトル! 自信作ですね。
とりあえずこのアルバムで、セカイイチがやりたかった音楽はピリオドを打ったと思います。ずっと読点を繰り返してきて、最大の読点が前のアルバムだったと思うんですよ。バンドの持っていた武器やフォーマットを全部崩して再構築して、そこで掴んだものは大きかったですね。
セカイイチの音楽は、基本的に慧さんの弾き語りでも通用するシンプルなメロディーに、すごくイマジネーション豊かなサウンドが乗ってますよね。今回は特に生々しいバンドサウンドとクールなトラックミュージックが自然に溶け合っていて、1曲ごとの個性がすごく強いです。
1曲ごとにロールモデルとなるバンドが存在しているんですよ、一応。ネタばらしになるからあんまり言えないですけど(笑)。例えばブルーハーツもそうだし、ELOとか、NO AGEというハードコアっぽいバンドとか、メタルとか。オザケン(小沢健二)の『天気読み』とか、あの曲のアイディアは結構参考にしましたね。前作ぐらいから気付いたんですけど、曲とか詞はオリジナルだと思うんですよ、誰もが。それを骨としたらアレンジは洋服で、洋服はサンプリングというか、そういう作り方をしてるのかなと思いますね。ヒップホップ的な。
セカイイチの洋服はどんどんモダンに、カラフルになっていると思います。
自分たちは生粋のクリエイターなので、同じところに留まっていられないんですよね。僕たちはコロコロ変わっていくバンドだと思うし、でも変わることのない情熱が確実に存在しているので、何をやってもいい。そのぐらいの無敵感があります。
その象徴が、“感覚の世界へドロップアウトしろ”と歌う1曲目「New Pop Song Order」だと思うのですが、この曲のアイディアはどこから?
ぶっちゃけ言うと、ティモシー・リアリーの『Turn On,Tune in,Drop Out』かな。“Peace”“Pot”“Microdot”でヒッピー用語で“サヨナラ”っていう意味になるとか、いろんな言葉を入れているので、そういうものが好きな人は面白がってくれるんじゃないかと思います。
60年代の、サイケデリックの時代のメッセージですね。
“サイケデリックを現代版にアップデートできないかな?”ってずっと考えてたんですよ。その世界観に挑戦したのが前作だったんですけど、今回はそれをもっとポップスに仕上げた形ですね。僕は結局、お客さんのことしか考えてないんですよ。そして、お客さんとはポップソングというものでつながっていると思うので。でもポップソングって、ただドラムとベースとギターに合わせて歌うとか、そんなんじゃないと思うんです。僕の中でポップソングというのはすごい刺激的なものだし、アーティスティックなことだから、それを完成させたい。もっとアバンギャルドで、しかしポップスで、という制限が僕は楽しくてしょうがないんですよ。
制限、ですか。
ポップスという制限があるからキャンバスをはみ出すこともできるし、色を自由に描くこともできる。僕の中ではQUEENも、10ccも、コーネリアスもポップスだし。実験的なことをやるのがポップスの究極の形だと思っているので、自分たちもそういうバンドになりたい。自分はそれしかできないんですよね。
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