【FoZZtone】
取材:道明利友
“音楽”は希望を交感し合うような行為
気持ちいいぐらい直球なタイトルですね(笑)。でも、だからこそ、“音楽”に対する今のFoZZtoneの思いが詰まっているんじゃないかっていう。
今って自分たちがカッコ良いって思う音楽が、必ずしも大きな話題になってるわけじゃないっていう状況があって。そういうことに対して、“なんだよ”っていう不信感みたいなものをちょっと持ってしまってた時期があったんですね。そもそも自分たちは音楽に対して“希望”をすごく抱いてたから、その分の反動とかもあったんでしょうけど。俺たちがガキの頃に触れていた音楽を振り返ってみると…個人的に吉井和哉さんの大ファンなんですけど、中学生ぐらいの俺が見ていたTHE YELLOW MONKEYの活動ぶりとかは、ものすごく面白かったんですよね。当時は、自分がカッコ良いと思うロックバンドがカッコ良く売れていて、とても楽しかった記憶があるんです。
ロックがメジャーのシーンを面白くしていた時代でしたね。
そうですね。そういうものが根底にあったり、今、俺らの周りでカッコ良い音楽をやっている人たちに触れたりしている中で、“音楽って、やっぱすごいかもしれない”っていうことをちょっとずつ噛み締めて今に至るというか。そういういろんなことを感じることのできた制作を通して、またひとつ上に行けたんじゃないかなって。
今作でまたひとつ上に行けたというポイントを、サウンド面で具体的に上げるとしたらどうですか?
まず、今回大きいのは音を重ねるのをやめたんですよ。あと、いろんなバンドさんのライヴを拝見しても、とても演奏が上手くて、きっちりノリを合わせるのが上手い人たちが最近は本当に多くて。でも、FoZZtoneはどちらかというと、とてもルーズなノリを作るバンドで。そういう自分たちの弱点として考えてたようなことを裏返すみたいな意味も込めて、よりシンプルにしましたね。
確かに。メンバー4人だけの音で勝負するライヴ時のテンションと、ある意味差がないというか。勢いとか熱が、音からダイレクトに伝わってくる感じがします。
ありがとうございます。ギターにしても、ギターの竹尾曰く、“普通なら譜面通りに弾いてきっちり収めるところを、勢いでノリノリで弾いちゃって、残りの小節が足りなくなったところを無理やり入れちゃった!”みたいなことも、プレイヤーとして魂が入ってる瞬間なんだって感じなんですよね(笑)。そういう、“人間がちゃんとやっている”っていう雰囲気とか気合って、理屈じゃなくて、音から伝えられるんじゃないかなって。
理屈抜きで感動させたりする力を、音楽って持っているはずですからね。先程の話じゃないですけど、それこそ“希望”を聴き手に無条件に感じさせるような。
俺の中ではそこはあって当たり前の前提みたいな感じで捉えていて。変な話、ただ目立ちたいだけの学生バンドでも、ライヴで人前に出れば、そこには何かしらエネルギーの交感みたいなものが発生してると思うんです。だから、“音楽”をやること自体が、もうすでに希望を交感し合うような行為なんだろうなって。“音楽”は希望があって、高揚して、崇高なもので。俺自身が感じてたそういうものを、“音楽”にしっかり向き合う機会を改めて得た最初の作品だからこそ、まず宣言するべきかなと思ったんです。