【HOTEI with FELLOWS】日本を代表す
るギタリストが放つ、
スピリットにあふれたロックンロール

アーティスト活動30周年を記念し、さまざまな活動を行なう布袋寅泰が“HOTEI with FELLOWS”名義でアルバム『ALL TIME SUPER GUEST』を発表。豪華アーティストとの競演が多彩なスタイルで実現した、彼ならではの特別盤だ。
取材:土屋京輔<br>アーティスト写真:永石 勝

僕の多岐に渡るスタイルを
みんなが増幅してくれている

30周年の起点となっているのはBOØWYが結成された1981年ですが、ここには重要な思いがありそうですね。

それはそうですね。あまり日程にこだわるタイプではないけど、あのバンドに誘われて一員としてライヴ活動を始めた、記念すべき一歩ですよね。ラッキーなことに、あの時すでにヒムロック(氷室京介/Vo)がある事務所と契約してましたから、入ったらいきなりプロみたいな状態だったんですよ。だから、恥ずかしくないようにと自分たちなりにいろいろ模索しながら…あそこがミュージシャン・布袋寅泰がスタートしたということだと思ってますね。一番はファンのみなさんだけど、今は僕のいろんなトライを見守って支えてくれた人たちへ、ひとつ残らずお礼をしたい気分なんですよ。(30周年を記念するライヴが)今年2月1日の日本武道館から始まりましたけど、久しぶりにBOØWYやCOMPLEXの曲も演奏してみて、また気持ちがリセットされたし、指先から伝わっていろんなものを思い起こすことができた。そして、何よりもファンのみんなにとても楽しんでもらえた。あの日はすごく心地の良いスタートなりましたね。

その一環で本作『ALL TIME SUPER GUEST』も発表されるわけですが、なぜこのようなアルバムの構想を?

前々からコラボレーション、ジャムやセッションは多かったけど、そういったトライアルは鏡のように、最も自分に戻ってくるものでもあるので、ミュージシャンである限りは大切にしていきたいんですよ。30周年ということで、トリビュートアルバムの話も出たんだけど、どんなかたちがこのタイミングの作品としてベストなのかを考えた中で、やっぱり僕が昔からすごく興味があって、一緒にやってみたかった人たちと音を出したり、自分たちの音楽を彼ら色に染めてもらうのはどうだろうかと思ったんですね。そこでスタッフから、“前に『ALL TIME SUPER BEST』というベスト盤があったので、ここは布袋さんが主催するパーティーにたくさんの友人をゲストとして招くという意味合いで、『ALL TIME SUPER GUEST』というタイトルはどうですか?”と。始めはプッと笑いそうになったけど(笑)、何かシャレが利いてていいなと思ってね。

結果的にトリビュートアルバムとセッションアルバムの両方を合わせたような内容になりましたね。

うん。良いアルバムになりましたね。HOTEIのニューアルバムではないかもしれないけど、自分も参加している僕の大切なアルバムだし、それぞれのアーティストが本気を出してくれてる。僕はギタリストであり、ソングライターであり、サウンドメイカーでも作詞家でもある。そして、メロウなものだったり、プログレッシヴなものだったり、スタイルもすごく多岐に渡っているんですよね。パブリックイメージでは“ビートが際立った”とか“エッジの立った”というようなものに集約されているかもしれないけど、このアルバムでカバーされた曲を聴いてみると、そのいろんな世界をすごく増幅してくれたというかさ。原曲以上にその曲らしくなっているものもあるし、それぞれのアーティストの持つ魅力、カラーが重なって、まったく違う表情を見せた曲もある。みんなの気持ちがとっても嬉しいし、聴いていると、グッと胸が熱くなるんですよね。コブクロの『YOU』なんかは、いわゆる音符にはないけど、オリジナルの空気の中にある音が全部アレンジされているというか。あれは好きじゃなきゃ、あそこまでできないでしょって思うしね。大橋トリオくんの『ラストシーン』なんて、今は原曲より好きかもっていうぐらい気に入ってるし(笑)。移動遊園地のメリーゴーランドが夕暮れで廻り始めるような途中からの感じとかは紛れもなく僕のメロディーだし、僕の音楽なんだけど、彼のマジックにかかると、あそこまで物語が変わるのかと。彼の才能にはちょっとジェラスしますよ。こと音楽になると、ピシッと自分のスタイルをしっかり持っている人たちだからこそ、それは逆に言えば、僕のスタイルを理解してくれて、リスペクトしてくれてもいる。SIGUE SIGUE SPUTNIKの『C’MON EVERYBODY』のように、曲をこちら側から提示したアーティストもいるけど、ほとんどはこの30年の中から選んでくれという感じでお願いしたんですよ。その中で、Dragon Ashから『DREAMIN’』をやると聞いた時は…ある種、勇気のある選択じゃないですか。

ええ。何しろBOØWYを代表する有名曲ですからね。

ちょっとアンタッチャブルというかね。でも、そこにはKjくんおよびDragon Ashの強い意思みたいなものを感じたんですよ。実際に彼らからデモが上がってきて聴いた時に、俺たちの『DREAMIN’』と同じスピリットだなって、すごく嬉しくなっちゃってね。彼らもロックンロールだし、僕らもロックンロールだけど、時代が違えば表現方法も違う。だけど、俺は彼らにバトンを渡したわけじゃないけど、ちゃんと伝わってるなって。それは俺らも知らないうちに誰かからもらってきた、ずっと継承されてきたものなんですよね。

世代的にはさらに下になるシドの参加も興味深いですね。しかも、彼らの選曲もBOØWYの「JUSTY」という。

これも“えっ、『JUSTY』!?”って感じでちょっとドッキリしましたね。すごく耳に残るリフだし…ああいうのはある種、僕の発明だと思うんですよ。松井常松、高橋まことにシンプルな8ビートのみで勝負してくれと言って、僕のギターをそこに絡めて、ヒムロックの色彩を変化させていく。ザクッと作っているように見えて、細かいところで絶対的に外せないフレーズで絡み合ってるんですよね。そういった曲をどんなアレンジでやるのかなと思ったら、完コピできたじゃないですか。完コピするのはなかなか難しい曲だし、しかも、ギターソロはShinjiくんが数ある僕のライヴビデオやライヴアルバムから、彼の好きなテイクをつなぎ合わせて作ったフレーズだった。だから、聴いてみたら、僕も何か覚えがあるわけですよ。“これはどこでやったソロだっけな?”みたいな。そこまで音に出せるShinjiくんの力量にまず驚いたし、シドってすごく良いバンドだなと思った。今はギターヒーローがいないって話になることもしばしばだけど、彼なんて紛れもなく新しいヒーローだと思うよ。今井 寿くん(BUCK-TICK)も始めは僕のフォロワーだったと思うけど、今は彼のスタイルがあるし、雅-MIYAVI-にしてもそう。そんなミュージシャンのエネルギーを、音を通じて、逆に僕に伝わってくる喜びもあるんですよね。

世代を超えたロック愛が
最初から最後まであふれたアルバム

ギターに関連するもので言えば、布袋さんが今井 寿さん、雅-MIYAVI-さん、永井聖一さんとセッションを繰り広げる「GUITARHYTHM」も面白いですよね。

まぁ、いわゆる変わったギタリストばかりですけどね(笑)。スタイルとスタイルのぶつかり合いというか。このテイクは基本的に一発録りなんですよ。4人で“せーの!”で頭から最後まで。竜巻のような一瞬の絡み合いとか、みんながみんなを楽しんでいる瞬間とか、そういうものが端々に表れた面白いテイクになりましたよね。右のスピーカーは今井くんで、左のスピーカーは永井くんで、2時と10時の位置辺りに僕と雅-MIYAVI-くんがいて、ソロになるとそれが真ん中にきたりするんだけど、例えば今井くんが弾くと、いきなりBUCK-TICKの世界なんだよね。そこに乾いた独特のディレイの音が鳴ると、急に相対性理論になるわけですよ。1音で伝える匂いや空気感というのは、本当に強いなというのは改めて思いましたね。

この人選そのものにも興味を惹かれますね。

これもやっぱり必然というかね。何も考えずに選んだわけじゃないけど、最高でしょ? 絶対に聴きたいと思うだろうなっていうか、想像するだけで楽しくなるしね。僕はパーティーのオーガナイザーでもあるわけだから、自分が参加していない曲でも、みんなが楽しんでもらえるようにしたかったんですよ。それぞれのアーティストも、他の人が何をやってるのか気になるわけですよ。だって、参加してくれたみんなはそれぞれなかなか接点のない人ばかりだからさ。それもまた面白いところではあったかな。

なるほど。布袋さんを中心にすればつながるとはいえ、実はそれぞれに横のつながりはなかったりもするんですね。SOIL&"PIMP"SESSIONSは初対面だったそうですが、このセッションも一発録りなんですよね? すごく布袋さんらしい試み、音楽的遊びだなと思いましたし、BBA等を思い起こすようなサウンドの力強さを感じましたね。

BBAなんて最近は誰も知らないですよ(笑)。ジャムは一音一音の勝負でもあり、そこを楽しむラリーでもある。ただ、自分を主張するのではなく、相手を引き出す、気持ち良くさせることが極意なんですよね。楽しいジャムというのは、相手が活き活きとしていることだから。SOILからも事前にデモが上がってきてはいたんですよ。でも、僕は聴かなかったんですね。メンバーとは初めてスタジオで顔を合わせたんだけど、せっかく、初対面なんだから初対面のままで音を出そうよと。実際にやってみたら、噂通りの素晴らしいバンドだったし、それこそ夜通しジャムっていられる人たちでしたね。すごく気持ち良いセッションでしたよ。

SIGUE SIGUE SPUTNIKはどんな経緯でした?

思いつきですね。イギリスからSIGUE SIGUE SPUTNIKが出てきた時、コンピューターとロックンロールという、あの超個性的な音楽はB級どころかD級みたいなゲテモノ扱いで、かなり酷評を受けていたんですよ。でも、僕はあれがすごくカッコ良いと思ったのね。これこそロックンロールのフューチャーだというか。『GUITARHYTHM』の実質的な1曲目が「C’MON EVERYBODY」だったけど、僕はBOØWYというバンドスタイルから、いわゆるソロ宣言をした時、彼らのサウンドをある種、模写してたよね。やっぱり感覚が似てるんですよ。今回、この曲をやってくれと言ったら、ふたつ返事で“OK。GUITARHYTHMスタイルでやればいいんだろ?(笑)”って。それは僕らにしか分からないジョークかもしれないけど、つまりそれはジグ・ジグ・スタイルなんだよね。かつて僕がジグ・ジグ・スタイルでやった『C’MON EVERYBODY』を、今度はジグ・ジグがやる。だから、俺にとって、これはすごく意義があるんですよ。

本作で初めて布袋さんを知る読者に何か言えることは?

こういう作品は僕を知るひとつのチャンスであってほしいし、音の中に飛び込んでくれれば、充分に楽しんでもらえると思うんですけどね。僕や参加してくれたアーティストたちの、音に対する向き合い方を感じてもらえればいいなと思うし。世代を超えたロック愛? それぞれのスタイルがぶつかり合っている爽快感みたいなものが、最初から最後まであふれている面白いアルバムだと思うんですよ。あとは、とにかくステージでの僕が一番カッコ良いので、ライヴにぜひ来てほしい。自分がこんな話をすること自体が不思議な気もするけど、僕の音楽は誰でも楽しめると思うんだよね。それと今年はみんなが元気になることだったら何でもやるって、宣言しましたから。そうやってオープンマインドしていくと、いろんなポジティブなエネルギーが集まってくるんですよ。
HOTEI with FELLOWS プロフィール

ホテイトモヤス:1981年にBO&#216;WYのギタリストとしてアーティスト活動をスタート。ギタリストとしての地位を確立し、BO&#216;WY解散後はソロ活動のほか、COMPLEX、他ミュージシャンへの楽曲提供など幅広い活動を展開。イギリスやドイツでも作品をリリースし、近年は映画やCMへの出演等、俳優としての活動も行なっている。オフィシャルHP

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