【fhána】理想とはほど遠い、今とい
う世界を肯定する!
これまで数多くのアニメタイアップをリリースし、実験性と普遍性を兼ね備えた独自の楽曲で音楽ファンの間でも話題になっているfhána。2ndアルバム『What a Wonderful World Line』は、そんな彼らのアイデアと想いが詰め込まれた、ストーリー性の高い作品となった。
取材:榑林史章
今回のアルバムは英語詞の曲があったり、歌とほぼピアノだけとか、アッパーのロックもあれば、エレクトロ系サウンド、佐藤さんがメインヴォーカルの曲もあったり、振り幅が広いものになりましたね。タイトルはルイ・アームストロングの「What a wonderful world」という曲に関係が?
佐藤
あの曲はベトナム戦争というとてもワンダフルとは言えない時代に、あえて“この素晴らしい世界!”と歌っていて。それから数十年経った今も理想とほど遠くて、綺麗事だけでは済まされない世界線だと思うんです。だからこそ、今のこの世界を肯定したくて、このタイトルにしました。
yuxuki
実は初自主制作盤CD(2012年発売)のタイトルが、“New World Line”だったんです。最初に男3人が集まって新しい世界へと旅立ち、towanaと出会って憂鬱の向こう側(前作のタイトル“Outside Of Melancholy”)へと行って、今のこの世界を肯定する…というfhána物語が、このタイトルには込められているんです。
towana
正直最初は、タイトルにしてはちょっと長いかな?と思いましたけど(笑)。でも、そういう話を聞いて、fhánaらしいタイトルだなって思いましたね。
収録曲の「Relief」は、fhána初の英語詞の曲ですよね。
佐藤
昨年アトランタでライヴをやって以降、世界に向けて発信したい気持ちが高まっていて。11曲目の「追憶のかなた」の英語のコーラスを録った時、towanaの声がすごく気持ち良かったので、これはやれそうだなと思ってチャレンジしました。サウンド的にもテクノやハウスのエッセンスがありながら、今時のEDMでもなくて。自分らしくいい塩梅でできたんじゃないかと自負しています。
towana
歌詞を英訳していただいた方に、発音とか指導してもらいながら。英語だとリズムのノリ方が違うので、それは面白いなと思いましたね。それによって発声も自然と変わって、少し大人っぽい声になりました。ちなみに「追憶のかなた」はコーラスを12声も重ねているんです。苦労して録っただけあって、聴き応えがあると思います!
yuxukiさんとkevinさんの曲も収録されていて、まずyuxukiさん作曲の「little secret magic」は、バンドサウンドですね。
yuxuki
このオケはバンドで“せーの”で4回くらいしか録ってなくて。ギターもあとで修正もしていないし。その時の勢いが、そのまま出ていると思いますね。
towana
私はそのオケ録りのすぐあとにブースに入って録ったんです。音がすごく楽しくて、私もスッと曲の世界に入ることができました。バンドサウンドは私も好きなので、結構アツく歌っていますね。
同じくyuxukiさん作曲の「Critique & Curation」は、佐藤さんがメインヴォーカルという。
yuxuki
クラムボンのミトさんが超ファンキーなベースを弾いてくれて、演奏的にも楽しい曲になりました。もともと僕は佐藤さんが前のユニットで歌っていた声が好きだったので、4〜5年前から1曲メインで歌ってほしいとずっと言っていたんです。それがやっと叶いました。
佐藤
歌うのは大変だなと、改めて実感した曲です(笑)。
kevinさんの「Antivirus」は声を加工して?
towana
ラジオヴォイスって言うのかな? あれは加工ではなく、そういうふうに録れるマイクを使っているんです。
kevin
この曲は試行錯誤の上、ちょっと前のJ-R&Bという感じになりました。fhánaの曲には今までなかった質感の曲なので、アルバムではポイントになっているかも。でも、リズムが実はすごく複雑なので、ノリが難しいんです。
kevin
towanaさんは、リズム感が良すぎなんですよ!(笑)
歌詞もSFっぽくて面白い世界観ですよね。
towana
kevinくんの作曲だと、作詞家の林 英樹さんはこういうテイストで書いてくださるんですよね。kevinくんの趣味に合わせて、コンピュータっぽいというか。
yuxuki
歌詞の出だしが“sensuous”というのもね。
kevin
大好きな Corneliousさんのアルバムタイトルです!
yuxuki
僕の曲だと“空”という言葉が歌詞によく出てくるんですけど、僕が昔ボカロで“そらいろくらぶ”という名義で活動していたことに掛けてくれているみたいで。
towana
私は曲を作っていないので、そういうのがないんですけど…。「little secret magic」の仮タイトルが“とわの魔法”だったのは、もしかしてそうなのかな?
ラストの「gift song」ついては?
佐藤
デビュー前から歌詞のないデモで存在していた曲で。タイトルだけは当時から決めていて、今回は絶対にこの曲をラストに入れようと考えていました。人と人は分かり合えない。でも、だからこそ分かり合えたような気がする瞬間は奇跡的で、神様からのギフトなんだと歌っています。
towana
あまり歌にこなれた感じが出ないようにというか、リラックスした素の状態が出るようにと思って、ひとり掛けのソファで、初めて座って歌いました。
yuxuki
いい意味でベッドルームレコーディングみたいにしたくて。曲としても、お母さんが子供に歌って聴かせる子守歌のような感じを出したかったんです。
towana
両手で包み込んで渡すような雰囲気ですね。
そんな今作のレコーディングはギリギリまで大変だったそうですが、やっと完成してみていかがですか?
kevin
歌詞もサウンドも歌も、すごく内容が濃くて。出来上がってから、ずっと聴きまくってます!
佐藤
たくさんの人に聴いてほしいです。それだけですね!
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『What a Wonderful World Line』2016年04月27日発売Lantis
- 【初回限定盤(Blu-ray付)】
- LACA-35557 3888円
- 【通常盤(DVD付)】
- LACA-15557 3240円
ファナ:2011年、佐藤純一(Key&Cho)を中心に結成されたtowana(Vo)、kevin mitsunaga(Sampler、etc.)による3人組バンド。13年8月にシングル「ケセラセラ」でメジャーデビューを果たし、その後は新人アーティストでは異例とも言える連続アニメタイアップなど、シーンを問わず各界から注目を集める。17年にリリースしたTVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』のOPテーマ「青空のラプソディ」、21年発表のTVアニメ『小林さんちのメイドラゴンS』OPテーマ「愛のシュプリーム!」は各界から絶賛され、さまざまなアワードも受賞した。さらに、アニメだけでなくロックフェスにも多数出演。23年に現体制となり、レーベルも日本コロムビアへ移籍した。同年5月に移籍第一弾シングル「Runaway World」をリリースする。fhána オフィシャルHP
fhána 日本コロムビア アーティストページ