ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第79回 アイドルやめすぎ問題

「なんか、最近アイドルめちゃくちゃ辞めてないですか? あれ、なんででしょう?」と編集氏。確かに、アイドルの引退、卒業、解散をTwitter上でアーカイブ化していたgoodbye, idolアカウントがフォローしきれないくらい、辞めるアイドルは増えているような気はします。なぜ、このように辞めていくアイドルが増えたのでしょうか?
 まず、アイドルの総数が増えすぎたということが考えられます。総数が増えたのだから必然的に辞めるアイドルの数も増えます。ただ、全体数が増えたので相対的に辞めていく人の人数も増えたという単純な話だけだったら話は簡単ですが、そういう話だけでもないのです。
 例えば、ライブアイドルと呼ばれるような小規模なライブ中心の活動をしているシーン。2010年以降、アイドルブームを受けて新規参入してくる運営が後をたたず、てっとりばやくグループを作りたい運営の手によって、本来だったらアイドルに絶対なれないような資質の子、地底アイドルですら無理じゃないかというような資質の子がアイドルとしてデビューできてしまうような状況です。アイドルに必要な資質といっても、人によって色々な考え方はあるでしょう。それでも、誰がどう見ても資質を持っていない子がアイドルを名乗って活動していることも珍しくはないのです。そういう子はたいてい人気がでないのでつらくなって辞めてしまうし、人気があっても性格面で不向きな子も結局続かないわけで辞めてしまいます。向いてないのは誰が見ても確かなのに、不屈の精神だけはある子もいて、延々とやり続けたりして、これはこれで大変なことなのですが、違う話なので、ここではおいときます。
 人気といいますが、都内のマイナーなアイドルシーンに関してはアイドルの数に比べてオタクの数が不足しています。アイドルは増え続けるのに、オタクの総数は増えないので、結局どこのグループもファンの数が伸び悩みます。3、4年前だったら、かなりの数のオタクが付いていただろう良グループでも、動員がないことも珍しくありません。以前の状況なら3年持ったようなグループが2年ぐらいで解散を迎えてしまう、そんな感じです。
 新規参入してくる運営の中には運営としての資質に欠けているところもあります。結局、そういうところは短期間でトラブルが起こって解散することになります。
 原宿系と呼ばれるようなグループの中には動員があるところも珍しくありません。しかし、これらのグループが大メジャーになる可能性があるかというと微妙なわけで、有名アイドルになりたいというモチベーションでアイドルを始めたのであれば、気持ちが折れてしまうこともあるでしょう。
 大メジャーなアイドルにしたって、そこの子たちが全員芸能界に残れるわけではありません。そこから先に進むことを考えた場合、芸能界の中のポジションは限られています。椅子の数が足りないのです。48、坂道系のグループに属しているアイドルの数だけでも莫大な人数になります。地上だってアイドルの人数が多すぎるのです。
 あと、そういう話とは関係なくブームの中で長年アイドルを続けてきたような中堅グループのメンバーの引退の知らせを目にすることが最近多い気がします。このまま続けていって、潰しのきかない年齢になって、第2の人生の選択が狭まる前に引退をするのは仕方がないことだと思います。昔からアイドルの寿命は一般的に3年ぐらいで、大スターになった人たちをのぞけばそんなもんなんです。宍戸留美さんのいわゆるアイドルとしての活動期間も三年内でした。それを思うと充分長く活動を続けられた人が多いのではないでしょうか。理不尽な匂いを感じる辞め方も中にはあるけれども。
 ライブアイドルシーンの過剰供給による共倒れは続くだろうし、メジャーどころも今の状態がいつまで続くかわからない感じもありますが、個人的にはあまり気にはしてないのです。自分が面白ければ見に行くし、面白くなければ見に行かないだけなのです。それは流行り廃りとは関係なく、自分の趣味だから。つまらなくなるまでは見ていくだろうし、今見ているものも、やっぱり面白いのです。

(隔週金曜連載)

写真:生ハムと焼うどん(編集部撮影)

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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。

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