「雪国」川端康成(新潮社)

「雪国」川端康成(新潮社)

【読書のすゝめ】 超有名小説、川端
康成「雪国」1分まとめ

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」 。だれでも1度は耳にしたことがあるこのフレーズは、川端康成「雪国」の冒頭の1文です。文筆家の島村と、雪国の芸者・駒子との逢瀬を綴った世界的にも有名なこの作品は、日本人初のノーベル文学賞受賞の対象作品にもなった小説です。この時期に、ゆったりと読んで欲しい名作です!
親の財産があり食うには困らない島村が、温泉地で芸者の駒子と出会い、妻子がありながらも駒子との関係を深めていきます。
トンネルを抜けると雪景色の別世界が存在しています。島村にとっては非現実の美しい世界ですが、その雪国を現実の世界として生きている駒子がいます。愛していない許婚者の療養費を稼ぐために芸者となった駒子は、恵まれているとはいえない自分の人生を、純粋に生き生きと感性のおもむくまま生きています。
そんな駒子に惹かれていく島村ですが、駒子の自分への愛を「徒労」と言ったり、駒子に惚れられていることを「情けない」と感じたり、どこか投げやりな島村は自身のことをシニカルに捉えます。駒子の愛に応えてしまうほど、自堕落な男でもない。きっとそれは島村自身、逃避と思っている雪国も現実の延長なのだとわかっているからなのでしょう。
駒子の許婚者を世話する葉子という女性も登場し、雪国での人間関係は、しんしんと冷たい雪景色とは対照的に情熱的です。東京と雪国、3回の雪国での時間、登場人物の心の揺れ動き、どれもが傾いたり廻ったりしていますが、「国境の長いトンネル」があるからこそ、それが支点となってバランスを取っているのでしょうか。
情景を表現する言葉の構築に奥行きや影なども実感させられ、人物描写に至っては「ズバリ」を書かずとも色合いや体温までを想起させてくれる洗練された文章で綴られていきます。
読者は冒頭の1文から、島村と一緒に雪国に逗留してしまうことでしょう!
「雪国」川端康成(新潮社)

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