【9mm Parabellum Bullet
インタビュー】
バンドが経験したあれこれを
素直に書いても大丈夫だと思った
L→R 中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)、菅原卓郎(Vo&Gu)、滝 善充(Gu)
結成19周年を迎えた9mm Parabellum Bulletが、12枚目のシングル「Brand New Day」をリリースした。まだまだ無我夢中でやっていきたいというポジティブな意志を掲げた、さわやかで疾走感のある表題曲の聴きどころについて、そして絶賛開催中の『19th Anniversary Tour』の近況について、菅原卓郎(Vo&Gu)に語ってもらった。
“苦しかったんだよ!”ではなく
“今、めちゃくちゃいい景色だよ!”
結成19周年、改めておめでとうございます。
どうもありがとうございます!
9mm Parabellum Bulletは現在アニバーサリーイヤーということで、毎月“9”日もしくは“19”日に開催している『19th Anniversary Tour』など、19周年はこれまでにないくらいいろいろな試みを行なっていますね。
好きなことを我儘にやらせていただいています(笑)。祝ってもらおうという感じで、メンバーそれぞれの故郷でライヴを開催したり。通常のアニバーサリーだったら全国30カ所のツアーを回るとかだと思うんですけど、“9”が入る周年なのでスペシャルな企画が多めになりました。
ここまでのツアーを振り返ってみていかがですか?
毎回セットリストを大幅に変えるから、たとえ全てのライヴに来てくれていたとしてもすごく楽しめていると思いますね。東京キネマ倶楽部(5月9日)は9mmが初めて出る会場で新鮮だったし、チャラン・ポ・ランタン、メルテン(fox capture plan/JABBERLOOPの岸本 亮)くん、タブゾンビ(SOIL &“PIMP”SESSIONS)さん、栗原 健さんと、キネマが似合いそうなたくさんのゲストを招いて豪華なセッションとなり、コロナ禍で無観客配信での開催になった2020年9月9日のライヴ、台風で中止になってしまった2019年8月16日の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で予定していたセッションを取り返すような一日にできたんです。シチュエーションはまったく同じではないにしろ、当時やれなかったことを19周年のタイミングでやれました。
何年か前にできなかったことが実現できるのは嬉しいですよね。
前進している感覚があります。あと、かみじょうくんの地元(3月9日@長野 辰野町民会館)と滝の地元(6月9日@茨城 ザ・ヒロサワ・シティ会館)での凱旋公演は、シンプルなライヴの喜びに加えて、“メンバーが故郷に帰ってきてくれて嬉しい”“9mmがここに来てくれて嬉しい”という熱気がお客さんから強く伝わってきたのが印象的でした。
次の凱旋ライヴシリーズは、卓郎さんの地元・山形の荘銀タクト鶴岡 大ホール。しかも、ご自身の誕生日である7月19日に開催されますね(取材は7月上旬に実施)。
新しいホール(2018年にグランドオープン)なので、青春時代に通っていた会場とかではないんですけど、そうは言っても自分の地元だし。9mmのツアーは基本的にライヴハウスが多いじゃないですか。やっぱり特別なワクワクがありますよね。僕の弟がパティシエをやっていまして、今回はコラボクッキーをグッズで売ることにもなったり(笑)。バンドとは全然関係なく弟のお店にはちゃんとファンがいて、これまではお互いにあえて距離を取ってきたんですよ。でも、故郷に錦を飾る公演ならいいんじゃないかなって。
そういった企画も楽しいですよね。では、新作の話を聞かせてください。表題曲「Brand New Day」はバンドが19年かけて培ってきた9mmらしさが揺るぎなくありながら、流れるような展開も素晴らしくて、抜群に聴きやすい曲だなと思いました。2022年8月にリリースされたアルバム『TIGHTROPE』のサウンド感、あの耳当たりの良さがますます洗練されたというか。
嬉しいです。9mmが持っているいろんなスタイルの中でも、さわやかで疾走感のある曲になりましたね。『TIGHTROPE』ではいつになくヘヴィなアプローチにもトライしたんですけど、アニバーサリーのシングルでものすごいヘヴィな曲を出すのはなんか違うと思って。ここまでバンドをやってきて良かったという想いを聴いてもらうこと、19周年のお祝いとしてみんなに届けることを考えたら、しっくりきたのはこのストレートな作風でした。
曲が出来上がるまでの過程というのはどんな感じだったのでしょうか?
滝とアレンジを進めた結果、完成しかけたのが2曲あったんです。ただ、その2曲はわりと極端なタイプの仕上がりというか。ひたすらハードコアな曲と、歌謡ロック色がかなり濃い曲で。“アイディアとしてはもちろん面白いけど、19周年っぽくないんじゃない?”という話になったんですね。そんな感じで悩んでいた中、「Brand New Day」のデモが発掘されたのが大きかった。
新たに作っていた2曲ではなく、最終的には過去のデモ音源が決め手になったと。
はい。スタッフが“この中にあったりしないですかね?”みたいに引っぱり出してきてくれた音源が、不思議と今の自分たちにすごく合っていたという。もしかしたら『TIGHTROPE』を作ったあとだけに、それをさらに上回る極端なエネルギーを持った楽曲じゃないとダメだと無意識に思い込んでいたのかもしれないです。「Brand New Day」のデモを聴いて、むしろストレートでいいんだと気づけた感じがしたので。
そこから方向性が定まった?
そうですね。デモの段階で実はOfficial髭男dismのサポートとかをやっている宮田'レフティ'リョウさんにアレンジやエンジニアリングを手伝ってもらっていて、彼がフレーズのアイディアを出してくれたりもしたんです。そんな風通しのいい空気を活かしながら、ブラッシュアップしてサウンドを詰めていきました。
歌詞は19年間を思い返して書き進めていった感じですか?
19周年をスタート地点には置かず、まずは曲のイメージをもとに歌いたいことを見つけていきましたね。でも、メロディーを聴くうちに、この曲はバンドが経験したあれこれを素直に書いても大丈夫だと思ったので、歌い出しから《無我夢中で 走り続けてるよ/向かい風を 笑い飛ばしながら》と迷いなく書けたし、そうやって9mmの歩みを想像させつつ、現時点で僕らが目指しているもの、“Brand New Dayが欲しい”という感情までを、スムーズに描けた気がしています。
《したたか雨に うたれ続けて ここまで来たから》という歌詞もありますけど、9mmが険しい道のりを歩んできたことを全面に出したいわけではなさそうですね。
険しい道のりも忘れてしまえるタイプなんですよ、僕は。そのあとにドラマチックな経験をすれば、“言われてみたら、確かに大変だったね”と思うくらいで(笑)。だから、“苦しかったんだよ!”ということよりも、“今、めちゃくちゃいい景色だよ!”ということに比重を置きたかった。そう歌いたい気持ちが強くあったんです。
すごく9mmらしいと思います。
それにバンドの軌跡だけじゃなく、自分の人生とも照らし合わせながら聴いてもらえるとしたら、“ここまで来たからもういっちょういこうか!”とポジティブな想いになってほしいじゃないですか。9mmがずっと好きな人は僕たちの曲をそう楽しんできてくれたはずなので、自然とこの曲タイトルになりましたね。
「Brand New Day」のMV撮影では、実際に雨が降っていたそうですね。
ものすごい大雨でした(笑)。晴れた日に「Brand New Day」を撮ったらまったく違うテイストの映像になったでしょうけど、ただ爽快なだけじゃなくて雨も降っているっていう。光の加減とかを含め、曲の描写に合った奥ゆかしい表現ができて、ある意味ラッキーだったなと思います。
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