【ドレスコーズ インタビュー】
戯れのような言葉にも
本気なのかもしれない感じがある
ドレスコーズ
夏の恋の風景を描いている新曲「少年セゾン」。戯れのように交わされる心と身体が映し出す真の意味は何なのか? さまざまな想像が膨らみ、多彩な物語を感じさせてくれるこの曲は、何度も繰り返し向き合いたくなる。制作の過程で抱いた想い、込めた感情について志磨遼平に語ってもらった。
戯れのような言葉にも
本気なのかもしれない感じがある
前作の「最低なともだち」(2023年5月発表の配信シングル)に続いてリリースされた新曲の「少年セゾン」は夏を感じる曲ですね。
昨年は夏に作った曲を夏にレコーディングしていたらリリースが夏に間に合わなかったので、今年こそは夏に間に合うよう、早め早めで作りました(笑)。あと、前作の「最低なともだち」も含めメランコリックな曲調が最近は続いていたので、「少年セゾン」はもう少し鮮やかでスカッとしたものになるといいなぁと思っていました。
サウンド面に関して具体的に考えていたことはありますか?
僕は作曲において“コードが少なければ少ないほどカッコ良い”と思っていて。コードが少ないというのは、つまり単純になるということなので、相当な面白み、シンプルな凄みがないと、ただ退屈な曲になってしまう。なので、いつもついついコードが増えていくんですけど。「少年セゾン」は基本的にコードが3つくらいで展開して、サビでスルッと転調するという、シンプルながら気の利いたことがうまくできました。会心の出来かもしれないですね。気に入っています。
モータウン的なビートなので、オールディーズ的な風味もありますよね?
そうですね。The Supremesの「恋はあせらず」とかイギー・ポップの「Lust For Life」的な、いわゆるモータウンビートは意外と今までやったことがなくて。
歌詞も含めて、危うさのある夏の恋が思い浮かぶ曲です。“気まぐれの戯れ”ともとらえられるし、“本気ではないふりをしているけど、実は本気の恋”ととらえることもできる物語なのかなと。
そうですね。《いっそ ふたり かけおちもいい》とか、そんなつもりはなく言っているのかもしれないし、まかり間違ってそれが本当になるのかもしれないし…っていう。
《こんなこと言えるのが夏》とか、夏のムードのせいにして本心を隠していると解釈することもできそうですよね? 《ともだちがするだけのくちづけ》も本気のくちづけなのに本気ではないように装っているようにも感じますし。
このインタビューが「少年セゾン」に関する最初の取材なので、僕も今初めてこの曲と客観的に向き合っているんですけど、確かに一貫して本心を隠す嘘っぽい表現が続きますね。戯れのような言葉にも本気なのかもしれない感じがあるというか。
《火葬のような夏がくる》っていいですね。物騒な表現ですけど、夏の暑さがとてもイメージできます。
ね。いいですよね。
例えば“汗が止まらない夏がくる”とかよりも圧倒的にパンチがあります。
夏の暑さを何かに例える表現で“火葬のような”は、まだ聞いたことがないと思って(笑)。“燃えるような夏がくる”とかでも成立するんでしょうけど、“火葬”までいききるともう面白い。
《行儀のわるい あたしのアイスクリーム》も面白い表現です。アイスクリームが行儀の悪いくらいの溶け方をする猛暑をイメージできますし、どこかエロティシズムも醸し出しているじゃないですか。
この曲はバンドの生演奏の他に、いろんな音素材をサンプリングして作ったビートを混ぜているんです。いわゆるヒップホップ的な手法です。それなら歌詞も同じように別の何かからのサンプリングが混ざっていると面白いかなと考えまして。ここのアイスクリームの部分は、高田 渡さんの「アイスクリーム」という曲と、岡崎京子さんの『私は貴兄のオモチャなの』という短編漫画のイメージのサンプリングみたいな感じですね。そういう僕の好きな夏のイメージをいろいろ入れています。
この部分のあとに出てくる《あたしがとけたら 当たりが出るかな》も印象的でした。
切ない台詞ですよね。自分がいなくなっても、“当たりが出たらもう1本”で自分の代わりの誰かが彼の前に現れるのかもしれない。それを受けて《きみに代わるきみとすごす》というフレーズが続きます。
《日傘まわす ぼく退屈》も想像がいろいろ膨らみます。最近は男性が日傘を使うことも増えつつありますけど、どちらかと言うと女性のアイテムなので。
これはですね、はっぴいえんどからのサンプリングです。「夏なんです」という曲に日傘をクルクル回す描写が出てきます。でも、あの時代に日傘を持った男性の描写が出てくるのも改めて考えてみると斬新ですね。
《いたいけな胸 べにいろにそめ》もリスナーそれぞれの解釈の仕方があると思います。女の子の胸の内で恋心がほんのりと色づいているのかもしれないですし、他のとらえ方もありそうです。
単純に“日に焼けて赤くなった”ととらえることもできますしね。
歌詞って面白いですね。
面白いですよ。自分でも“えっ!? どういうこと?”ってびっくりする言葉が浮かぶまで、書きながらずっと考えるんです。《火葬のような夏がくる》もそうですし。だから、出来上がったものを読むと自分でも何を言っているのか分からないです(笑)。支離滅裂になるまで推敲します。筋が通りすぎると、ただ退屈な歌詞になってしまうので。
アーティスト
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