『We're in the Mood』から振り返る
類稀なる音楽ユニット、
ICEの本質
他の誰にも似てない音楽ユニット!?
その1990年代後半の邦楽シーンがどうであったかを記そう。即ち“CDバブルを牽引したものは何か?”ということである。もちろんCDというマテリアルそのものの出現とその価格の安定というハード面の要因が何より一番大きいわけだが、ソフト面で言えば、(邦楽に話を絞ると)“小室ブーム”と“ビジュアル系ブーム”を含む何度目かのバンドブームがそこにあった。小室ブームは安室奈美恵、globe、trf、H Jungle With t、華原朋美。ビジュアル系ブームはX JAPAN、LUNA SEA、GLAY、L'Arc〜en〜Ciel辺りで、ビジュアル系以外のバンドではMr.Children、スピッツ、ウルフルズ、THE YELLOW MONKEY、JUDY AND MARYなどの名前が上げられるだろう。まだまだあるだろうが、代表的な存在を思い付くままに書いて上げてみた。
ICEはそのどこにも似ていない。男女ふたりのユニットというルックスで言えばglobe辺りに近いと言えなくもないけれど、小室ブーム以外のavex勢のMY LITTLE LOVER、Every Little Thingに近い気もする。ダンスチューンということで言えば、今となれば、小室ブームのいわゆるTKサウンドと同じフォルダーに入れられてしまいそうになるのかもしれない。しかし、音楽的には別物と言っていいはずである。avex勢とも異なっていると思う。
一方、サウンド面で見ると、ICEのギターサウンドは当時のバンド勢にも近い印象もある。ただ、少なくともビジュアル勢と一緒にするには無理があるように思う。音楽性ではウルフルズが圧倒的に近いだろう。だが、ルックスの違いは言うまでもない。総合的に見たら、時間軸は少しずれるけれども、2000年前後の、俗に言う“DIVA(歌姫)”が最も近いかもしれないとも思う。 女性ヴォーカルによるコンテンポラリーR&B。もう少し突っ込んだ言い方をすると、邦楽≒J-POPの要素を取り込んだR&Bだ。それを持って、ICEは時代を先取りしていたとか、出てくるのが早過ぎたとか、簡単に言いたくはないのだけれど、彼らの売上のピークであった1994年から1998年辺りは、(ルックス、音楽性も含む)ICEの存在がリアルタイムにフィットしていたかというと、それは微妙だったと言うしかない。逆に言えば、独特の存在感を示していたバンドだったということだし、時代に迎合することがなかった音楽グループという言い方もできるかもしれない。以下、4th『We're in the Mood』を解説するが、本作からもそうしたICEの特徴が掴めるように思う。
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