【オメでたい頭でなにより
インタビュー】
今のご時世もあり、
これを表現しないと
今後ふざけられない

L→R ぽにきんぐだむ(Gu&Vo)、324(Gu)、ミト充(Dr)、赤飯(Vo)、mao(Ba)

3rdアルバム『オメでたい頭でなにより3』は、これまでのオメでたい頭でなによりとはひと味もふた味も違う作風になっている。結果的にメッセージ性の強い楽曲が並び、人間味にあふれた作風がなんとも愛おしい。喜怒哀楽の全てを凝縮した今作について、赤飯(Vo)と324(Gu)に語ってもらった。

清々しく負けを認めて、
そこからまた構築しようと

結成6周年ライヴ(2022年8月29日@Zepp DiverCity(TOKYO))を終えたばかりですが、振り返っていかがですか?

324

特殊ですよね。ぽにきんぐだむ(右手骨折により、ヴォーカルに専念)の状態が状態だったから、できるのかと思ったけど。蓋を開けたら新たな発見もあったので、ポジティブにとらえてます。ギターが物足りない部分もあったとはいえ、彼が動き回ることでいい雰囲気が作れたから。

赤飯

最初は“どないなんねん?”と思いましたけど、気づきしかなかったライヴでした。ぽにきんぐだむをバンドに誘った時に、“こいつ、華があるな”と思ったんですよ。でも、ギター兼ヴォーカルだと限られた動きしかできないから、縛りを与えていたんだなと。横で自由に動くさまを見ていると、こっちのテンションも上がりましたからね。

そうだったんですね!?

赤飯

彼の持ち味が活きるから“こっちのほうがええやん!”って。別に彼からギターを取り上げるわけじゃないんですけどね。

324

もっと柔軟にやっていいんだなと。

結成6年目で新たな気づきがあったと。では、今作の話に移りたいのですが、バリエーションに富んだ楽曲が揃ったと同時に、コロナ禍の影響も色濃く反映されたアルバムになりましたね。

赤飯

うん。そんなにメッセージもなく、ウェーイ!みたいな1枚目(2019年1月発表のアルバム『オメでたい頭でなにより1』)があり…今作の変化については周りに影響を受けて、時代にも心を動かされていたんだなと(笑)。自分たちからメッセージを込めようと考えていたわけではないので。結果的にこうなって、“うわっ!”となっちゃいました。

自分たちでも予想外だったと?

赤飯

そうですね。出来上がったものを聴いた時、“なんだ、このメッセージ性の強い曲たちは!?”って。

324

今のご時世もあり、これを表現しないと今後ふざけられないなと。この気持ちを消化しないことには前に進めない。

赤飯

嘘はつけないもんね。だって、この状況下でつらくない奴なんておらんやろうし、うちらも普通に人間だったという。

このタイミングで消化したかった気持ちとは?

赤飯

敗北感ですね。自分が一番弱いことに気づいて。それを上塗りする空元気もなかったし、それをそのまま表現したらこうなりました。Red Hot Chili Peppersの『CALIFORNICATION』が大好きなんですけど、あの作品には切ない敗北感が漂っていて、久しぶりに聴いたらドンピシャでハマっちゃって。

哀愁が漂う泣ける作品ですよね。

赤飯

そう! それが自分の中にもあるから、清々しく負けを認めて、そこからまた構築しようと。

「きなしゃんせ。」はまさにレッチリの泣き感が入った曲ですね。

赤飯

そうなんです。あと、もともと昭和レトロが好きなので、それと合わせてやってみようと。

赤飯さんが感じた敗北感とは何に対して?

赤飯

時代、自分、メンバーに対してなど、あらゆるものですね。ライヴが前のようにできなくなり、ライヴに特化した曲作りもできないし。そこから自分が致命的に足りないところと向き合うようになって、いざ曲作りに取りかかっても成果を上げられないから、そこで敗北感を感じたという。それで元気な曲なんて書けるかいなって。諦めて手放して、今作が完成しました。

その意味では過去作とは違う作品になりましたね。

赤飯

1枚目はパッパラパーで、2枚目(2020年4月発表のアルバム『オメでたい頭でなにより2』)は少し真面目になったほうがいいんじゃないかって。そして、この3枚目では敗北感と言ってるぐらいだから、全然トーンは違いますね。人間臭くなっちゃいました。

324

3枚目のほうがより真面目だし、曝け出している感じはありますね。今は逆にふざけたくて、この作品のあとはどう楽しめるかに前向きに取り組めそうだなと。

なるほど。今作では曲作りの方法も変わりました?

324

全然違いますね。いろんな人の手を借りたり、maoはこれまで作詞作曲をしてこなかったけど、自分からやりたいと手を挙げましたからね。ミト以外は作詞作曲していますから(笑)。赤飯が思い悩んで曲ができなくなったので、周りが能動的になりました。だから、“この曲はこの人が主導権を握る”というのが明確になりましたね。今回はメンバーひとりひとりが深いところで主導権を握ったから、一曲一曲がバラエティーに富んだんだと思います。

赤飯

自分が音楽的な主導権を握って制作することに憧れていて、自分にはそういう器がないのに、それでもかたちにしたいというビジョンばかりが膨らんでいましたからね。