【ポルノグラフィティ
インタビュー】
僕らのことを待ってくれている
人たちに向けて音楽を落としたい

L→R 岡野昭仁(Vo)、新藤晴一(Gu)

充電期間を経て、2021年に活動を再開したポルノグラフィティ(以下、ポルノ)から、約5年振りとなるアルバム『暁』が到着した。前作以降の配信を含む全シングル、さらに新曲9曲を含む15曲を収録した本作は、コロナ禍で経験したことが楽曲制作にも自然と影響を及ぼし、これまでとはひと味違うポルノらしさもある一枚に仕上がっている。この5年でどのような想いを抱き、制作されたのかについて訊くべく、ふたりを直撃した!

ポルノらしく響いてくれれば
いいなと思っています

前作『BUTTERFLY EFFECT』(2017年5月発表のアルバム)から約5年。その間に世界はコロナ禍という未曽有の出来事に見舞われました。その経験が今回リリースされるニューアルバムにもたらした影響は何かありましたか?

新藤

何かしらある…というか、生活の全てにコロナ禍の影響があったわけだから、自分の音楽にも影響があったことは間違いないんだけど、“これです”と明確に提示するのはなかなか難しいかもしれないですね。コロナ禍での経験が「テーマソング」という曲を作るきっかけになったことくらいは言えるけど、具体的な影響に関してはちょっと言いづらいというか。

無意識下への影響もあるでしょうから説明しづらいのかもしれないですね。

新藤

そうですね。震災とかもそうだけど、ああいった事態が起きるとミュージシャンであるとか、バンドマンであるとか、そういうことって一切関係なくなるじゃないですか。どんな肩書きを持っている人であっても、みんながひとりの人間に立ち返り、“さて、どうしよう?”と考えることになるわけだから。しかも、コロナ禍はそういう状態が2年以上続いている。やっぱり自分にとっても大きな出来事だったから、何かしらの影響はあったんだと思いますよ。

岡野

確かにひと言で言い表すのは難しいな…。コロナ禍を通してエンタメの価値みたいなものも問われたような気はしますけど、そこにどう影響を受けたのかは難しい部分がある。ただね、「テーマソング」を世に出した時のみなさんの反応を体感したり、その後にやったツアー『17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”』で全国を回ってみたことで、自分たちがこれからも音楽をやっていく意味みたいなものをはっきり感じることができたんですよ。コロナ禍という状況の中で自分らの無力さを感じながら回ったツアーでもあったんだけど、ファンのみなさんは温かく僕らを迎え入れてくれて、本当に素晴らしい景色を見せてくれた。その経験はものすごく大きかったと思います。それによって、これまでは世の中の大きい場所、音楽シーンという広い場所にドーンと自分たちの音楽を落とすことをイメージしていたけど、今回はそうではなく、まずは僕らのことを待ってくれている人たちに向けて音楽を落としたいという気持ちを持ってアルバム制作に臨むことができたんですよね。

なるほど。それは音楽シーンという大海にポルノが楽曲という雫を落とす意味を問う作品だった『BUTTERFLY EFFECT』とは明らかに違った視点ですよね。

岡野

そうですね、うん。そういう意味では、そこが一番大きな変化だったかもしれない。

仕上がったアルバムに関してはどんな印象を持っていますか?

岡野

手応えはものすごくあります。一曲ずつ作っていく過程でも、“これはいいものになりそうだぞ”っていう予感がありましたしね。完成したアルバムを聴き返すことって今まであまりなかったんだけど、今回は何度も何度も自分で聴き返していますから。そういった意味でも、いい作品になったんだと思います。

新藤

僕もいいアルバムになったと思っています。ただ、5年振りということを考えると、この作品がどう世間にとらえられるのかっていうことに関しては、ちょっと想像がつかないところもあるんですよね。もちろんね、ポルノらしく響いてくれればいいなとは思っていますけど。

これまでの作品はシーンの中でどう響くのかがある程度想像できていたところもあったんですか?

新藤

うん。それはね、今回ほど作品同士の期間が開いていなかったぶん、時代の流れとかポルノの活動としての文脈の中で作品をリリースすることができていたから。でも、この5年を振り返ると、いろいろ若い子たちの音楽もたくさん出てきていますからね。そういう音楽を耳にすると、“今のポルノがどう受け入れられるんだろう?”っていう想像はなかなかつかないというか。

音楽自体の聴かれ方も変わってきている部分がありますからね。短い尺で切り取られた音楽をSNSで楽しむ人も多いし、最近はギターソロを飛ばす人も多いと聞きます。

新藤

それこそTikTokとかで流れてる音楽を聴くと、自分では絶対に書かないような歌詞の曲がいっぱいあったりしますからね。結果として僕ららしいいいアルバムが作れたと思っているけど、同時にそういった今のシーンの状況は常に頭の中にあったりはします。まぁ、自分らにやれることをやるしかないという気持ちもありますけどね。

岡野

確かに歌詞を書く新藤からしたら、そういった状況を意識して、世間の流れとの寄り添い方を気にするのは当然のことのような気はしますよね。逆に僕は今回は曲作りと歌に専念したから、そこをあまり考える必要がなかったのかもしれないです。

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