【神はサイコロを振らない
インタビュー】
神サイで描いてきた男女の歪んだ愛情
その新境地に行きたかった
L→R 桐木岳貢(Ba)、柳田周作(Vo)、黒川亮介(Dr)、吉田喜一(Gu)
2022年第一弾となる配信リリース楽曲は目下オンエア中のドラマ『愛しい嘘〜優しい闇〜』主題歌として書き下ろした「イリーガル・ゲーム」。骨太なバンド隊と拮抗するようなスリリングなストリングスとピアノが斬新な一曲だ。テーマに沿いながらも神はサイコロを振らない(以下、神サイ)らしい曲に着地した理由を柳田周作(Vo)に訊く。
2021年は無限に制作していて
“音楽人生”って感じの一年だった
まず、神サイにとって2021年はどんな年でしたか?
2021年は無限に制作してたんじゃないかというぐらい制作していて。面白い試みも…初めてのコラボで2曲作ったり、Sexy Zoneさんに初めて楽曲提供したり。神サイ自体で楽曲を制作して誰かに歌ってもらうことも経験できたり、ほんと出会いも多かったし、初体験も多かったし。“音楽人生”って感じの一年でしたね。
加えてタイアップ楽曲も多かったですね。
これがフルアルバムの話にもちょっとつながってくるんです。ありがたいことに主題歌やエンディングを書かせていただく中で、それぞれの素晴らしい作品と向き合って楽曲を書くことにも最高なやり甲斐を感じながら進めていたんですが、ただただ神サイとしての歌いたいものを楽曲にしたのがこのアルバムでの新録曲だったりするんですよ。“そうだよな”って感じがちょっとしていて(笑)、初心に戻れたというか“こういうこともやってみたい”“ああいうこともやってみたい”と、メンバーとああだこうだ言って、その中に面白い試みとかもあったり。
テーマがあったりコラボを経験したことで、逆に4人で考えた時に何がやりたいのかが見えたと。
そうですね。“今の神サイを集約させるとどういう曲ができるんだろ?”とか、何周も回って満を持して“シンプルに曲を作ってみるとどういう曲できるんだろう?”とか、いろいろ楽しく楽曲作りができました。
そして、新曲「イリーガル・ゲーム」はドラマ主題歌への書き下ろしですね。
ありがたいことに。前回のドラマ主題歌は『ヒミツのアイちゃん』という少女マンガが原作のドラマだったので、神サイにはなかったような「1on1」(2021年3月発表のシングル「エーテルの正体」収録曲)が作れたんです。今回は主題歌の「イリーガル・ゲーム」と劇中歌の「あなただけ」を書いたんですけど、すごく神サイっぽいテイストで書き下ろしができたと感じていて。今でこそ明るい楽曲というか、楽しげな楽曲もちょいちょい作り出してはいるんですけど、もともと神サイって闇属性なんですね。ライヴでお客さんが盛り上がるような曲が1曲もなかったし、お客さんを煽ることもなく、ひたすらステージの内側でコテコテのポストロックみたいなことやシューゲイザーみたいなこともやってみたりして、それをお客さんが俯瞰で聴いてるっていう。そういうカオスな状況が当たり前のバンドだったんです。で、その頃のテイストではないですけど、飽くまでも闇属性として楽曲を作れたんじゃないかと思ってます。
柳田さんは台本から曲想を得た感じですか?
そうですね。サスペンスに向けて曲を書くっていう経験がなさすぎて、今までで一番大変だったっちゃ大変だったかもしれないですね。ドラマサイドからの書き下ろしのオーダーというか、“こういうテイストで”っていうのはわりとあったんですよ。“サスペンスなんで不安感とか心がざわつく感じを大前提としてお願いします”ってことと、次回が待ち遠しくなるような盛り上がりがほしいというもので。さらに難しかったのが、“ストリングスとピアノを効果的に使ってサスペンスに合うように仕上げていただきたいです”っていう…まぁ、これはアレンジの部分ですけど。なので、結構そこで楽曲の幅がグッと狭まるというか、いい意味で方向性がすぐに固まるんですけど、何しろバンド主体で曲を作ってきてたんで、ストリングスとピアノありきというところで…もちろん既存曲でもストリングスとかピアノを使ってる曲はたくさんあるんですけど、それは歌とバンド隊がある上で、ピアノ、ストリングスをつけていたんで、そこを主体で作っていくというのが初めてだったから、久しぶりに苦戦したというか、難産ではありましたね。
ストリングスとピアノに関するオーダーまであったとは!?
曲が生まれていくのも結構ブロックごとで。AメロができてA’ができて、Bメロができて、Cメロができて。で、一日置いて聴いてみて、やっぱりCメロはこっちのほうが良いかもしれないと新たなCメロが生まれて。全体通して聴いた時に、もうひと盛り上がり欲しいと思ってDメロができて、みたいな。順序はいろいろあるんですけど、セクションごとにパズルでどういう順番になったら曲が一番美しくなるかとか、サスペンス感やざわつく感じが一番出せるかとか、パズルを組み立てていく感覚でこの「イリーガル・ゲーム」っていう曲はできていきました。
完成したものを聴くとイントロのストリングスがゾッとする感じで、むしろここから始まったのかと思うぐらい印象は強いですが。
こちらもありがたいことに、ストリングスアレンジで美央ストリングスってチームに参加してもらったんですけど、実は最終段階ぐらいにイントロは決まりました。美央さんがわりとストリングスの方向性というか、アレンジを決めていってくれて。美央さんって星野 源さんとかでも弾いてたりするんで、いい意味で普通じゃないというか、いい違和感が残るフレーズを作るのがうまくて。その違和感を神サイでも出してほしいっていうことで、ド頭のストリングスのフレーズができた感じなんです。だから、もともとはバンドサウンドが主軸で、そこにストリングスとピアノをガンガン入れていってもらった感じですね。
ピアノのアレンジャーはいらっしゃるんですか?
ピアノアレンジ自体は総合プロデュースというか、編曲家で入っていただいている小山寿さんっていう、ずっとやってもらってる方がいて、小山さんがベーシックを作って、東京事変の伊澤一葉さんにピアノをプレイしていただきました。でも、例えば間奏にギターがクロマチックでLチャンネルとRチャンネルでユニゾンするみたいなところがあるんですけど、もともとはピアノのフレーズは入っていなくて。伊澤さんに即興で考えて入れてもらったりして、伊澤さんテイストもその場で入れていただいています。
こじつけっぽいけど、このドラマ自体が複数の人間の思惑が絡み合っているので、この曲での演奏の抜き差しがリンクして聴こえたんですよ。
いい意味でカオスというか…なんだろ? こんな言い方をするのは合ってるのか分からないけど、バンド隊とストリングス、ピアノが全員違う空間にいる感じで、この3チームが融合しようとしてるんだけど、カオスなもんだから混ざりきってないのが逆にカッコ良いみたいな。
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