【ネクライトーキー
ライヴレポート】
『ネクライトーキー「FREAK」
リリースツアー
「ゴーゴートーキーズ︕ 2021」』
2021年9月30日 at 豊洲PIT
2021年9月30日 at 豊洲PIT
『ルパン三世』を彷彿させる“参上!”感満載の「北上のススメ」では、メンバーが左右を向くシュールな振り付けがお決まりで、アンプで爆音を鳴らした時の衝動が詰まった「はよファズ踏めや」では朝日(Gu)がお立ち台に乗って思う存分ギターをかき鳴らす。劣等感を歌う「きらいな人」でさえもフロアーからキレキレの拳が突き上がるのは、ネクライトーキーが生きづらさをロックで表現してきたからこその光景だ。会場の盛り上がりは、もっさが“びっくりした…こんなに知っててくれてたんやと思って”とこぼすくらいの迫力で、場内換気のために設けているMC時間が束の間の休憩時間に思えるほどだった。
そんな中、印象的だったのは東名阪ラスト3公演で演奏した、約10年前に朝日の石風呂名義での楽曲「魔法電車とキライちゃん」だ。ノスタルジックなギターのかけ合いと朝日のシャウトがエモーショナルに響き、《僕ら明日も見えず/それでも進んでいくよ》を歌うさまは“今までも進み続けてきたから、これからも大丈夫”という示唆であり、ファンを同志だと思っている彼らからの応援歌に聴こえた。そして、毎公演でファンお待ちかねの「許せ!服部」では、もっさが“ライブ”と書かれたパネルを上げた時はアップテンポ、“CD”と書かれたパネルの時は通常のスローテンポで演奏するという至難の技を実演。まったく予想のできないタイミングでパネルが変わり続け、それをクリアーすると各々のソロパートに突入していく。藤田(Ba)のベースソロは誰よりも前のめりなプレイで会場を焚きつけ、朝日がギャンギャンと鳴かせるギター、ここぞとばかりに全ての楽器を置いていくカズマ・タケイ(Dr)のドラミング、ダンスミュージック化しそうなくらいにムードを一変させる中村郁香(Key)のシンセなど、楽曲の原型をとどめていない暴れっぷりに改めて強烈な5人がいるバンドなのだと実感。それぞれの魅せ場のたびに盛大な拍手が送られ、まるで大道芸を観ているようなスリルがあるパフォーマンスだった。
どんどんヒートアップしていく会場に圧倒されながらも、この日のライヴの観どころはそれだけではなかった。浮遊感のあるシンセの音とほんわかとしたヴォーカルが印象的な「ふざけてないぜ」では、朝日が急に雄叫びをあげたり、唐突にシンセでキメが入ったりと、思わずニヤリとしてしまう突拍子のない展開に心が弾む。イントロで哀愁を帯びたギターアレンジが施された「豪徳寺ラプソディ」は、もっさの気怠げな歌声がサビでは叱咤するような強さに変わり、「大事なことは大事にできたら」の冷静さと切羽が詰まった様子を交互に見せる表現力も圧巻だった。
《嫌いだからみんな死ねばいいんだ、と/そう言えないほど丸くなれたよ》と歌う「大事なことは大事にできたら」は時間の経過と、それで失っていくものの虚しさ、変われない自分の無力さが込められているが、次に組み込まれた「続・かえるくんの冒険」はそんな感情を抱える最中も人生は続いていくことを俯瞰して描いており、行進曲のようなリズムと勇敢な歌声が届けられる。朝日が「続・かえるくんの冒険」の説明として“日が当たっている人たちを歌う曲はあんまり持ち合わせていなくて、ずっと教室の隅で漫画を読んでいた自分に歌うことばかりなんです。ずっと陰で何も言えず、砂を嚙んでいた奴らに向けた歌があると、きっと“つまんねえな”って思ってたあの日がヘッドフォンの中で少しだけ楽しく、可笑しく過ごせるような気がしています”と語ったことはネクライトーキーの真髄そのもので、このセットリストにはネクライトーキーなりの励ましが含まれているように感じた。
終盤は戦隊モノを思わせるド派手なイントロが特徴の「オシャレ大作戦」や、疾走感あふれるサウンドに乗せて力を振り絞るように開けていく「Mr.エレキギターマン」など、4曲を一気に披露。本来、スポットが当たりにくい世知辛い想いばかりが曲になっているにもかかわらず、会場が凄まじい熱量でいっぱいになるネクライトーキーのライヴは、毎回快進撃を見ているような気分になる。同じく憮然とした想いを抱えてきた人たちを引き連れて好きな音楽を鳴らし、冒険するように進んでいく先にどんな景色が待っているのか。ライヴが終わってもしばらく贈られ続けた拍手を聞きながら、より胸が高鳴るステージだった。
なお、12月からは『オーキートーキーvol.4』と題した全6カ所での2マンツアーを開催。対バンにはフジファブリック、POLYSICS、ニガミ17才らが決定している。
撮影:橋本塁/取材:千々和香苗
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