【Wienners インタビュー】
“分かる奴だけに分かればいい”
では意味がない
L→R アサミサエ(Vo&Key&Sampler)、玉屋2060%(Vo&Gu)、∴560∵(Ba&Cho)、KOZO(Dr)
2年振りとなるアルバム『BURST POP ISLAND』が完成! 満を持してのメジャー進出作となる今作は、パンクでポップなWiennersらしさを今まで以上に推し進め、バンドの本質をあからさまに露呈したかのような意欲作である。時節がらリモート取材となったが、モニター越しに玉屋2000%(Vo&Gu)の熱い想いが伝わってくるかのようなインタビューだった。
Wiennersでやりたいことって
非日常的な熱狂や興奮
ニューアルバム『BURST POP ISLAND』の資料に“日本コロムビア・メジャー1st ALBUM”というキャッチコピーが踊ってますが、意外なことにここまでメジャーではなかったんですね(笑)。
あぁ、それは結構言われますね(笑)。以前はTOY'S FACTORYでやっていたんで、いろんな人から“それ以降はメジャーじゃなかったんだ!?”って。
メジャーになって何か変わるんですか? …ってアーティストに訊くことじゃないですけど(苦笑)。
あははは。単純に流通が変わって、関わる人数が増えて、宣伝費もかけれるようになったというのはありますね。No Big Deal Records(日本コロムビア内のインディーズレーベル)へ移籍したのは、メンバーも替わったし、また1からのスタートでもあったので、当初は“インディーズに戻って、再びメジャーを目指して活動していこう”という想いからだったんです。で、今のメンバーになって5年くらい経って、地盤も固まってきたから、今だったら多くの人と一緒に作品を制作して、より多くの人に届けるというマインドで挑めるんじゃないかと。まぁ、これまでも何度か“この辺からメジャーで”というタイミングはあったんですけど、今回がベストだろうということで、そういうことになりました。
創作する上においては何かが大きく変わることはないんでしょうが、制作した作品を広げていくことにおいて、決意を新たにして…といった感じでしょうか?
そうですね。メンバーともども、その意志は同じだと思います。
創作する上においては大きく変わったことがないのは、全11曲で約32分と、曲数と総タイムが前作『TEN』(2018年6月発表のアルバム)とほぼ同じことからも分かりますね。
そっか…そうですね! 今言われて気付きました(笑)。自分の中では“長くなったかな?”という印象だったんですけど、意外と分数は変わってないんですね(笑)。
曲数とタイムが前作と同じという指摘は半分冗談として、前作『TEN』以上にノンストップ感が強いと思ってまして。その辺からは今作への心意気と言いますか、気持ちが前のめりになっている感じが伝わってくるようです。実際、今作の取り組みはどんな感じだったんでしょうか?
おっしゃっていただいた通り、芯の部分は変わってはいないんですけど、バンドのスタンスとして“もっと、もっと”って。はっきり言ってしまえば、“お茶の間まで行きたいよね”“『紅白歌合戦』に出たいよね”というマインドが高まっていたので、音楽的に伝えたいことの芯は変わってはいないんですけど、どうやったらそれをもっと多くの人に理解してもらえるのかということは、これまで以上に…それこそ今まで考えてなかったところまで、曲作りの段階から考えるようになりました。僕は音楽的にかなり偏った種類の人間だと自負しているので、僕の普通が世間の普通じゃないということは、ここ何年かで身をもって理解していて(苦笑)。“俺がこんだけ歩み寄ったと思ってても、こんなに伝わってないんだ”って思うことがすごくあったから、そこはメンバーからも意見をもらいながら、メジャーでやるというタイミングも含めて、“どういうふうにやったら、この曲で言いたい音楽的な部分が伝わるんだろう?”とか、今までで一番考えて作りましたね。
“多くの人に理解してもらえる”ことを考えたとはいえ、大衆に阿ったわけではないですよね。「プロローグ」と「ゆりかご」の2曲はその好例で。ともに良質なメロディーで、Wiennersにしては曲の展開も派手ではないですから、これをスロー~ミドルのテンポすると一般的に言う“いいバラード”になると思うんです。
あぁ〜、確かにそうですね。
それをアップチューンに仕上げているのが何ともWiennersらしく思ったところではあります。
あははは。そこですよね、やっぱり。そこは自分たちの中で重要なところではあると思うんです。良質なメロディー、普遍的なメロディー、弾き語りにしても歌えるようなメロディー…実はそういうメロディーなんだけど、テンションは高いという。さっき言った“伝えたかったこと”…このWiennersでやりたいことって非日常的な熱狂や興奮みたいなもので。そうなってくると、伝え方はどうしてもこうなってしまうという感じですね(笑)。
でも、そこがとてもいいんですよ。
ありがとうございます。いいメロディーの新たなる可能性みたいなところも探したいと思っていて。「プロローグ」や「ゆりかご」って普通だったらテンポを落とすのかもしれないですけど、今、“確かに言われてみれば、このメロディーだったらテンポを落としてもいいよな”って思ったくらいなので、そこはもう身体に染み付いているというか、当たり前のように出てくるものですね。
「MY LAND」の歌詞に《punkやrockはノイズになって 鼓膜とか心臓ぶち抜いたら》とある通り、そもそもロックミュージックはゆったり聴かせるものじゃなくて、“drive me crazy”がその本質と言いますか…
はいはいはいはい!(笑) そう言ってもらえるのは嬉しいですね。今作に“BURST POP ISLAND”というタイトルをつける時、“POP”という言葉を使うのか、“PUNK”という言葉を使うのか、メンバーの間ですごく話したんですよ。で、僕らはパンクが大好きなので、あえて“PUNK”という言葉は使えないなと。パンクが好きだからこそ自分たちのことをパンクバンドだと思ってないというか、自称することをおこがましいと思っているというか。そのくらいパンクが大好きだし、自分たちのマインドはパンク…そもそもパンクってマインドだと思っているから、そこはすごく重要ですね。そういう意味で、あえて“POP”という言葉を使ったところはあります。
玉屋さんの中では“PUNK”に“POP”が含まれているということでしょうか?
そうですね。あと、ポップじゃないと意味がないとも思っていて。“PUNK”というマインドって伝えなきゃいけないものだと思うんです。僕はそれをポップにキャッチーに吐き出さないといけない…“分かる奴だけに分かればいい”では意味がない。それは自分が大好きなアンダーグラウンドのパンクシーンにも言えることなんですけど、政権を批判するようなポリティカルなことを言うんだったら、もっと大きい音楽性でやらないと何も動かないと僕は思うんですよ。もちろんそういうバンドがいてもいいんですけど、Wiennersはポップでキャッチーなものを…という。でも、“ポップでキャッチー”って“分かりやすい”とはちょっと違うというか、“簡単”とかそういう意味ではなくて、“伝わりやすい”という意味でのポップだったり、キャッチーというのはWiennersがすごく大事にしているところですね。
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