【Kitri ライヴレポート】
『Kitri Live Tour 2019 AW
「キトリの音楽会#2」』
2019年11月1日 at キリスト品川教会
グローリア・チャペル

2019年11月1日 at キリスト品川教会 グローリア・チャペル

 ピアノ連弾ヴォーカルユニット、Kitriによる2度目のライヴツアーは全国7カ所で開催され、北海道は札幌時計台ホール、福岡は日本福音ルーテル博多教会と、前回よりも規模が大きくなった他、“キトリの音楽会”というタイトルにぴったりな特別感のある会場が選ばれた。東京公演は11月1日にキリスト品川教会 グローリア・チャペルにて行なわれ、11メートルを超える天井と、ステージにそびえ立つパイプオルガンがふたりを迎える。

 拍手に包まれながら、まずは挨拶代わりに「アレグロ・タンガービレ」を演奏。クラシック曲で幕を開けるのはKitriのライヴでお決まりの流れだが、チャペルの広々とした空間は独特の上品さがあり、徐々に加速していくテンポに乗って緊張感が募っていく。続く「目醒」の冷静で淡々としたヴォーカルにはミステリアスさもあり、トイピアノの音を添えた「生きるすべ」では伸びやかなメロディーが心をほっとさせる。Kitriは愛や人生を歌った楽曲も多く、それは彼女たちが常に自分自身を見つめ直し、受け取った愛情を大切にしている証だと思った。

 「矛盾律」のループマシンを使った間奏ではリコーダーや太鼓の音が重なり、これまで観てきたライヴともひと味違ったアレンジで会場の雰囲気が華やかに。コンサティーナを使ったキャンディーズ「アン・ドゥ・トロワ」のカバーと、節々に新しい試みを感じるライヴだった。中でも、フラワーカンパニーズ「深夜高速」のカバーは意外なチョイス。初めて聴くロックバラードの連弾は熱くも沈着で、丁寧に届けられる言葉のひとつひとつからはふたりにある頑固さが感じられたのも印象深い。かと思えば、心強い歌詞がリスナーの背中をそっと押す新曲「さよなら、涙目」も聴けるのだから、いろいろな表情を知ることができる贅沢な時間だった。

 最後は“みなさんがくださった素敵な時間に感謝します”と話し、“今日はKitriがくれた時間なのでは?”と思ったが、彼女たちはここにいる誰よりも会場の空気を吸い込んで、堪能していたのだろう。背筋をピンと伸ばしてステージを後にしたふたりは、達成感と期待に満ちた表情だった。

撮影:Masatsugu ide/取材:千々和香苗



セットリスト

  1. 1.アレグロ・タンガービレ(クラシック曲)
  2. 2.目醒
  3. 3.生きるすべ
  4. 4.細胞のダンス
  5. 5.一新
  6. 6.LIFE ~piano & guitar ver.~
  7. 7.リズム ~part change ver.~
  8. 8.一週間
  9. 9.深夜高速(カバー曲)
  10. 10.real ~classical ver.~
  11. 11.矛盾律
  12. 12.さよなら、涙目
  13. 13.アン・ドゥ・トロワ(カバー曲)
  14. 14.Dear
  15. <ENCORE>
  16. 1. 羅針鳥
  17. 2.終わりのつづき

Kitri

キトリ:幼い頃よりクラシックピアノを学んでいた姉のMona(モナ)とHina(ヒナ)によるによるピアノ連弾ユニット。ふたりが大ファンだと公言する大橋トリオの手に自主制作音源が渡ったことをきっかけに、大橋が手掛ける2016年公開映画『PとJK』の劇伴音楽に参加。19年には大橋がプロデュースしたEP『Primo』でメジャーデビューを果たした。その後、同年リリースの2nd EP『Secondo』、20年リリースの1stアルバム『Kitrist』に続いて、21年4月には2ndアルバム『Kitrist II』を発表。

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