歌詞オタク林部智史があの名曲の歌詞
を徹底解剖、カバーの極意も語る
歌詞オタク林部智史があの名曲の歌詞を徹底解剖、カバーの極意も語る
2015-2016 年、テレビ東京系列「THE カラオケ★バトル」で 2 年連続年間チャンピオンに輝き、『あいたい』でデビューを飾った”泣き歌の貴公子”林部智史が、10月3日に初のカバーアルバム『カタリベ1』をリリース。
記事の最後にはプレゼント情報もあるので、是非音源を聴きながらじっくりご覧ください!
──さっそくですが、カバーアルバム『カタリベ1』をリリースということで、お話を伺っていきたいと思います。『カタリベ1』...“1”なんですね!
──ですね!この『カタリベ』というタイトルに込められた想いみたいなところから伺っても良いですか。
そんなところで、やっぱり、『VOCALIST』という徳永さんのアルバムがあったり、つるの剛士さんの『つるのうた』があったり。カバーアルバムは自分色を持たせていきたい、そしてちょっとシリーズ化も考えていきたいというところで。
でも、「うたしべ」も違うし、みたいな…。
──「うたしべ」も全然ありだったと思いますけど!
それにやっぱり“べ”が良かったので、『カタリベ』になりました。『カタリベ』に歌うという意味はないんですけど。僕は、いつも、しゃべるように歌っているということも言っているし、そういう意味で話しやすいかなと思って『カタリベ』にしました。
──ぴったりなタイトルになりましたね。収録曲も最高ですが、曲順でこだわられた点について伺ってもいいですか?
今、秋のツアーでコンサートをやっているんですけれど、この曲順で歌っていて。通しで考えたときに、飽きないようにとかバランスが取れるような感じにしています。
──今回収録された曲を選ばれた理由についても伺って良いでしょうか。
僕の中でオリジナルとカバーは、同じくらいの割合でやっていきたいもので、これまでも色々なカバー曲を歌ってきましたけど、その中でも等身大のまま歌える曲や少し背伸びをしながら歌う曲みたいなものがあって。今回は、30歳になったこともあり、けっこう等身大の曲を中心に集めてみました。
──「カタリベ2」が出るときは、また収録曲も悩みますね(笑)。
僕は今回かバーした曲よりももっと古い曲をたくさんカバーしているんですけど、そういうものもまた違う企画で出せたら良いなと思いますし。
林部が今一番、自身の等身大に近いと感じている曲
──本当に選曲が最高すぎて、制作陣の方は制作中涙で大変なんじゃないかなと思って。私も今回の音源を聴いていて、リアルに3回は涙出ましたもんね。
──本当なんです(笑)!なんででしょうね…アルファ波みたいな…“泣かせる波”みたいな、そういうのが林部さんの歌声にはあるんでしょうね。
──はい、“泣かせる波”にやられました(笑)。だから、制作中に何度も聴いている制作陣の方は泣きまくっちゃってもう大変なんじゃないかと思って。
──私個人的には、元々中島みゆきさんの曲が好きというのもあって、『糸』ですかね。あとやっぱり『たしかなこと』は選曲がズルいです(笑)、泣かずにはいられないです。
──先ほど「等身大の曲を集めた」というふうにおっしゃっていただいたんですけれども、この収録曲の中で一番自分の人物像に近いといいますか、歌詞をご自身で書いていてもおかしくないというくらいに自分を投影できる曲ってどちらになりますか?
でも、自分でもこういう書き方をして、自分でよく間違えるんですよ(笑)。だから、この歌はけっこう間違いやすい歌で。
──実際に福山さんの曲だったり、他のアーティストさんの歌詞から影響を受けているということは意識的に感じられることなんですか?
──そういえば林部さんが普段聴かれる好みの曲ってどんな曲なのか伺いたかったのですが、林部さんが作詞される曲ってあまりストレートに情景や心情を表現されないと思うんですよ。
──なので逆にものすごくストレートに物事を歌っているゴリゴリのJ-POPのような曲とかって聴かれるのかなって。
──そうなんですか!
シンガーソングライターの方って具体的に詞を書く方が多くて、高橋優さんとかもすごく好きです。
──歌詞の書き方で近いのは『Squall』ということでしたが、人物像という視点で収録曲を見ると、なんとなく“林部さんはこんな人なんだろうな”という私の勝手なイメージとしては、『僕が一番欲しかったもの』かなと。なんでも自分が欲しかったものでも人にあげちゃうタイプみたいな感じがします(笑)。
──まさに(笑)!そんなイメージでした。ご自身的にはどうですか?中身が自分に近いなというような、性格的な面で。
──私個人的には『ごめんね・・・』に共感できます(笑)。
『僕が一番欲しかったもの』みたいな人でありたいなとは思うし、良し悪しありますけど僕は本当に怒らないので。怒ったほうが絶対に感情のやり取りはできるし、なあなあにしているだけだと思うけど。でもやっぱり平和主義だなと思うので。どっちかと言ったら、こういう人なのかもしれないです。
──良かったです、林部さんの等身大が『ごめんね・・・』じゃなくて。失礼な言い方になってしまうかもしれないんですが、これが、こういった経験されていないで歌われている歌い方なんだな…と。 (笑)
小田和正とユーミンの歌詞を分析
──では続いて、『たしかなこと』について触れていきたいと思います。私、ぶっちゃけもう少し林部さんの声の音量が大きくても良いんじゃないかと思ったくらい、この曲では特に林部さんの生々しい歌声を聴きたくて…。
実はこれでも結構張り上げているんですよ。優しくというよりも、歌詞的にもちょっと強さが欲しい歌なので。
その中でも一番泣けるフレーズを絶対に落ちサビに持ってくる。これで言うと「君にまだ 言葉にして 伝えていないことがあるんだ」
──ここは確かにやばいですよね。
──そのお話、すごく面白いです!歌詞サイトをやっている身として、すごく勉強になることを聞けました。
──詳しく伺えますか?
この中の「君を失くしてから」というフレーズが、言葉だけを聞くと亡くなった人だと思ったんです。でも、「失う」と書いて「失くしてから」と書いているんですよ。それって人によってはあらゆる人を想像できるんじゃないかなと思って。
──そこまで歌詞を分析してカバーを歌われているなんて…。カバーって、そうあるべきですよね。
──なるほど、だからなのですね!林部さんのカバー曲って、“林部さんが歌っているから聴く”というより “林部さんの声でこの曲が聴きたいから聴く”という感覚の方が大きいような。
歌詞サイトが驚くほどの歌詞オタク
──林部さんの『たしかなこと』では、サビの頭「忘れないで どんな時も」の“わ↑”で抜ける感じが最高で、もちろんオリジナルを知っているからサビがくるぞって構えるというか期待が膨らんでいくんですけど、期待以上の“わ↑”に涙が出るんです(笑)。
──大事ですよね。こういうメロディーにこの歌詞がはめられているのは必然というか、そういうものなのでしょうけど、小田さんの想いや計算を受け止めているからこそのあの表現、最高でした。
自分の良さとか、曲をこうしたいというのが、自分で分かってプロデュースしているんだろうなと思うとすごいですよね。
──そのように歌詞やメロディーを分析されて、ご自身の楽曲にてその技法を使ってみるということもやはりあるのでしょうか?
──すごい。歌詞オタク…ですね。
──なんか嬉しいです…なんで私が嬉しいんだ(笑)?なんというか、林部さんがカバーをされる想いやこの姿勢を多くの人に知っていただきたい。言葉悪いですけど、売れた曲を歌って自分もカバーで売れればいいっていうような考えでカバーを歌われているわけではないことを知って欲しい。
個性を出していかないとというところはあるけど、歌い方も真似するところは真似していきたいし。
──そんな中でアレンジに関しては、林部さんの方からリクエストはあったんですか?
やっぱり、アレンジャーさんはそのアレンジャー色に変えたいんですよね、それが仕事だし。それは分かるんですけど、僕はこのイントロは絶対に変えたくないとか、そのせめぎ合いをずっとしてきました。だから、『ごめんね・・・』の前奏とか、『たしかなこと』とか。『ひまわりの約束』は、一回お蔵入りしましたね。結局、原曲の感じに戻して、やっぱりこれだなって落ち着いた結果です。
でも先ほど言っていただいたように『たしかなこと』は、確かにもうちょっとだったんですよ。もうちょっと声の音量が大きくても良かったですね。
──ですね〜、ライブを楽しみにしていますね!
こだわりのアレンジ〜「糸」「たしかなこと」編〜
──先ほどのアレンジに関しての話ですけど。『糸』は、個人的にオリジナルも大好きですが、振り切ったアレンジをされている林部さんのカバーのアレンジもめちゃくちゃ良いと思いました!
林部智史:これはこれで、ギターではじまってほしいというリクエストをしたものですね。歌いだしはギターで始まっていますね。本家はピアノだけど。
──原曲の『糸』よりポップになって若い世代の子でも聞きやすいような。“良い曲そうだぞ!?”って感じる前奏ですよね。
──『たしかなこと』にのアレンジに関してですが、ハモリが入ってくるじゃないですか。「疑うより信じていたい」の部分で後ろで囁くように入ってくる声がありますよね。
これは絶対に、なんなら“歌詞でしょ”くらいの感じで入れます!ということは言っていましたね。
──恥ずかしながら、コーラスで何と言っているか知らなかったです。
──オリジナルを聞いてきている人はやっぱりあれがないと違和感ですもんね。
──2番の「疑うより信じていたい」の部分から、同じ歌詞をハモっている声も入っていますよね。すごくエモくて美しいハモリ!原曲にはなかったですよね?
──そして、「君は空を見てるか」と大サビで開ける部分はすごくキャッチーになっていく感じになっていますよね。
歌い方へのこだわり
──レコーディングで苦労した曲とか、歌い方をすごく最後まで悩んだような、そういう意味で印象に残っている曲はありますか?
──こう見ると、歌詞自体の文字数は少ないんですけどね。
──『糸』で押すところといえば、「どこにいたの 生きてきたの」の部分「いた」で音が上がるところがすごく好きでした。
──全然嫌じゃなかったです!私はここで、心臓をギュッと掴まれる感じ、恋をしたときに近いような心地のいい痛み(笑)がありましたね。
──ありました!!
──やられました(笑)!
──具体的にどの部分ですか?
──マニアック…。
何回も歌ったらと言っても、僕は1曲まるっとしか歌えないので。こだわりで。そこのためにもう一回頭から歌ったりとかしましたね。
──そこは林部さんの絶対的なこだわりですか?
林部智史の好きな歌詞
──林部さんが今作の収録曲の中で一番好きな歌詞のフレーズと、そこを選ばれた理由について聞かせてください。
──歌詞サイト向きのコメントをありがとうございます(笑)。UtaTenのアンバサダーになっていただきたい(笑)。
──本当に私たちも、歌詞を音の一部として楽しむだけじゃなく、じっくり読み込んでいろんなことに気づいたり感じたりして欲しいんです!
「あいたい」は平仮名なんですけど。意味を固定しないようにという意味で。
──なるほど。あの歌詞も改めて向き合ってみるとやっぱりすごいですよね。「あいたい」というフレーズがこれでもかというほど出てくるじゃないですか。
あいたいという想いを綴る曲なら、そして何より自分をアピールする最初の機会であるデビュー曲なら、なおさらもっと情景とか背景とか、いろいろ言いたくなっちゃうんじゃないかと思うんですよね。
でも、多くを語りすぎず、あの数分の中に「あいたい」だけをたくさん詰め込まれているという。
──やりがち。
──すごい…ぞっとする。
──本当に是非!とても面白かったです、ありがとうございました!
Photo:橋本美波
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