【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#61 録
音エンジニア・行方洋一の言葉
とにかく『自分だけの引き出し』をたくさん作れ
行方洋一は、58年のキャリア(2018年8月1日現在)を誇る現役の録音エンジニアである。この本には、行方の経歴を通して「日本の録音史」が書かれている。今回の名言は、同著で語られた、行方が弟子達に託し続けている言葉をチョイス。「古今東西の音楽をたくさん聴いて耳を鍛え、音の記憶をストックして自分流にそれらを関連付ける。そして、その膨大な情報を『自分の引き出し』に入れておく」ことが大切だと説く。行方は2014年に、佐野元春と雪村いづみの共演ミニアルバム『トーキョー・シック』の録音を担当。前田憲男指揮によるビッグバンドでのレコーディングを「一発録り」したいという依頼だった。現在、国内では、大部屋で一からマイキングをして音をまとめられるエンジニアは、絶滅危惧種のように少ないという。この仕事を指名されたことを「僕の『引き出し』が突然認められて」と振り返っている。何の仕事にも通じる考え方ではないだろうか。
行方洋一(なめかたよういち)
1943年生まれ、茨城県出身。東芝EMI(旧東芝音楽工業)録音部に入社し、坂本九をはじめ、弘田三枝子、欧陽菲菲、渚ゆう子、奥村チヨ、小川知子、浜圭介など昭和歌謡を彩る大スターたちのレコーディングを担当する。その後、同社の制作部に移動となりプロデューサー&ミキサーとして読売交響楽団や徳永二男などといったクラシック、前田憲男、アンリ菅野、ジョニー・ハートマンなどといったジャズなど、幅広いジャンルを手掛ける。東芝 EMI在籍時に、スーパーリマスタリングシリーズ(ExMF SERIES)を立ち上げる。チューリップ、アリス、オフ・コース、甲斐バンド等のアルバム全64タイトルをリマスタリング・リリース。フリーに転身したあとは、太田裕美、ゲームソフト『ドラゴンクエスト』などの音楽録音を担当。その頃から、オーディオ雑誌やイベントなどでオーディオ評論家として活動をはじめる。現在は、音の世界において、多くの体験を活かし様々な分野で活動中。音に関する広い見識と職人技的な技術力を兼ね備えた伝説的なエンジニアである。ONKYO 社の高音質音源配信のマスタリングをはじめ、音楽関連会社などのアドバイザーとしても活躍している。
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