【CHERRY NADE 169 インタビュー】
いろいろな角度から
チェリナらしさを伝えるEPが完成
L→R 秋山貴英(Ba)、滝澤大地(Vo&Gu)、岡田ぴのり(Dr)
“fruits E.P.”と銘打ったシリーズの第一弾となるEP『檸檬』には、CHERRY NADE 169らしいギターロックの「ランナーズ・アイ」に加え、音源化が望まれていたミクスチャーロックナンバー「トゥビコン」など、それぞれに異なる魅力を持った全4曲が収録されている。
昨年9月にリリースした前作のアルバム『なまえ』は岡田さんが正式加入後初めての作品ということで、心機一転、現在のチェリナを印象付ける作品になりましたが、その後のツアーを含め、どんな手応えを感じたのでしょうか?
滝澤
『なまえ』はやっとできたと言うよりは、わりとぽんぽんできていったアルバムだったんです。僕が持っていった曲に応えてくれるふたりのポテンシャルもあって、すごく良い作品ができたと思うし、3人の距離感が『なまえ』を作る前より近くなった。そういう手応えが一番大きいです。ぴのりちゃんは以前からサポートしてくれていましたけど、メンバーとしては僕らふたりに比べて歴が短い分、多少は遠慮しているところがあったんじゃないかな? 今もあるかもしれないけど(笑)。でも、それを乗り越えていってくれているなって。メンバーとしてもドラマーとしても。歴が長い秋山と僕の間でも、前よりも音楽の話やバンドの話をより濃くできるようになったと思うし。
秋山
それはライヴにも表われていますね。
岡田
もともとライヴが力強いというか、インパクトのあるバンドだと思っていたんです。けど、『なまえ』の曲をライヴでやり始めてからはもっとライヴバンドになったような気がします。ライヴに対する個人個人のアグレッシブさもそのツアーを通して結構出てきたと思えたので、そこはすごく成長させてくれたアルバムだったし、それが今回の曲にも活きていると思います。
秋山
お客さんももちろんなんですけど、対バンを含め、バンドマンに好かれるようになりました(笑)。“チェリナいいね”って言ってくれるバンドがすごく増えたんですよ。そういう意味では、ぴのりちゃんが言う通りライヴバンドとしても一歩進めたのかな。
さて、今回のEP『檸檬』は“fruits E.P.”と題したシリーズの第一弾ということですが。
滝澤
夏前にリリースしたいという話をレーベルとしながら曲を作っている中でリード曲の「ランナーズ・アイ」ができた時、“この曲をどうしても出したい!”と言ったら“じゃあ、出そうよ”となって。最初はEPにするかシングルにするか迷っていたんですけど、EPでシリーズ化したらいんじゃないかって思ったんです。何かテーマをひとつ決めてシリーズで出したいっていうのはずっと考えていたんですよ。フルーツはテーマとして可愛いし、ネタも尽きなそうだから(笑)。
それにしても、いっぱいフルーツがある中で今回はなぜ“檸檬”なのでしょうか?
滝澤
パッと思い浮かんだのがパイナップル、林檎、檸檬で…その時ちょうど洋服屋さんに行ったら檸檬柄の服があって、かわいいいと思ったんです(笑)。それで檸檬の花言葉を調べてみたら“情熱”だったので、今のバンドの状態にぴったりだし、収録しようと考えてた楽曲もそういう楽曲だったし、“檸檬”にしようと。
「ランナーズ・アイ」以外の3曲はどんなふうに選んでいったのですか?
滝澤
「ランナーズ・アイ」が決まったあと、次はパンチある曲が欲しくて「オーバータイムストリート」を急遽作りましたね。
秋山
そのあとに過去の曲を入れてもいいんじゃないかってアイデアが出て、いくつか候補がある中からライヴでも結構やっている「トゥビコン」にしようって。以前にも音源化しているんですけど、前のギターが脱退する際のワンマンライヴだけで販売したので、音源として聴きたいって声も多かったんです。だったら、このタイミングで入れようかなと。
滝澤
わりとアッパーな曲が続いたので、それからはミドルテンポの「わたしたちの毎日」を加えました。前からある未発表曲なんですけど、ずっと頭の中で覚えていた曲のひとつで、どこかのタイミングで入れたいと思っていたんです。
どの曲も耳に引っ掛かるキャッチーな要素を持ちながら、それぞれに違う魅力を持った4曲が揃いましたね。
秋山
曲数的にもシングルとミニアルバムの中間なんで聴いてもらいやすいし、手に取ってもらいやすいと思うんですけど、いろいろな角度から自分たちを伝えられるものになったと思います。チェリナの王道と言えるような曲もあれば、歌を聴かせる曲もあるし、アレンジ面でも面白いことをやっている曲もある。そういう意味では、改めて“チェリナってこういうバンドなのか!”って思ってもらえるんじゃないかな。
岡田
「オーバータイムストリート」はライヴでもやっているんですけど、結構チャレンジした曲なんです。ドラムのフィルが一瞬ソロっぽくなったり、秋山さんもベースをめっちゃ歪ませてたり。大地さんは畳み掛けるように歌っているんですけど、刺々しさもありつつやさしい面があるような曲にもなっていて。『なまえ』の時も“自分たちの中でチャレンジしてできた作品”って言ったと思うんですけど、今回もそれを上回ってチャレンジしたという実感があります。押し引きというか、曲の足し算引き算も含めて満足ができる作品になったと思っていて、レコーディングも前回は自分の中で難産という感覚があったんですけど、今回は終わった瞬間に“はぁ、終わった。良い作品になった。みんなに聴いてもらうのが楽しみだ”と思えたんですよ。だから、早く聴いてほしいです(笑)。
「オーバータイムストリート」のAメロで、あえて言葉を乱暴に投げかけるように歌っているのはチャレンジだったのではないですか?
滝澤
新しいチャレンジと言えばチャレンジだったかもしれないですけど、イントロのギターリフから素直に作っていったら自然とこうなりましたね。
秋山
ぴのりちゃんも言ってましたけど、「オーバータイムストリート」のベースは初めてがっつり歪ませてみました。普段そんなにやらないから、初めてライヴでやった時は新しいことをやったという感じがありましたね。
今回、滝澤さんにとってチャレンジだったと言える部分はありますか?
滝澤
「ランナーズ・アイ」の歌詞がチャレンジと言えばチャレンジなのかな。すごく考えました。今までは自分から出てきたものをまず書いて、それを直して、また書いて…という作業だったんですけど、今回は書く前にしっかり書きたい人物像とか誰に伝えたいかを考えたんです。もちろん自分の気持ちを書いてはいるんですけど、そういうことをやったのは初めてでしたね。
なぜ、それをやったのでしょうか?
滝澤
“新しいことにチャレンジしていかなきゃ”って思ったんです。僕、すごい猫背なんですけど、猫背すぎて去年肩がおかしくなっちゃったんですよ。それで整体に行って猫背矯正をやってたんですけど、やりながら“今までやらなかったことをやっていこう”と思って、去年末からちょっとずつやり始めているんです。「ランナーズ・アイ」で、これまでと違う歌詞の書き方をしたのもそのひとつで。今までの歌詞の書き方も正しいと思うけど、新しいことにチャレンジしないと自分が成長できないし、自分に納得できなくなってくるんじゃないかと思ったんです。
誰に伝えたいと考えたのですか?
滝澤
もちろんみんなに聴いてほしいですけど、最初に思い浮かべたのは高校を卒業する手前の女の子でした。なぜかと言うと、自分が高校生だった頃に進路について考えている時、すごく不安だったんです。その不安って目には見えないけど、自分の中では絶対的な圧力として存在していて…親、先生、友達に相談しても“やりたいことをやればいい”って言われるんですけど、自分がやりたいことが分からないっていうか、やりたいことはあるけど誰にも言えなくて。その時期がすごく辛かったんですよ。だから、同じ気持ちになっている人がいるなら伝えられることがあるかなと思って、そのぐらいの子たちを想像して書いたんです。
そういうチャレンジをすることで、歌詞の書き方や言葉の選び方は変わりましたか?
滝澤
変わりました。使いたい言葉っていうのが今まであったんですけど、使いたい言葉が本当に必要なのかって分別ができるようになりました。サビは《走り出した》って言葉で始まるんですけど、今までだったらサビ頭でその言葉は使わなかった。なんか狙ってる感じがしたんですよ。でも、人物像を想像したらその言葉しかないと思えて、その言葉に対してちゃんと胸を張れたんです。
今作はどの曲も大きな意味では生き方について歌っているんじゃないかと思うのですが、その中でバンドに対する取り組み方にも今一度向き合ったようなところもあるのではないでしょうか?
滝澤
そうですね。バンドを真面目にやるようになりました(笑)。っていうか、バンドをより楽しめているのかな。生き方という意味では、なるべくハッピーに楽しく生きたいんです。だから、悲しいことがあったとしてもそれを根っこから解決するというよりは、それを見てみぬ振りをしたほうがいい時はそうしてもいいと思っているし。だから、できるだけみんなで楽しくできたらいいなと思っているし、バンド活動も以前に比べてどんどん楽しくなってきています。
取材:山口智男
「ランナーズ・アイ」MV
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