【メトロノーム インタビュー】
周りが心配するほど前向きなシングル

L→R リウ(TALBO-02)、シャラク(VOICECODER)、フクスケ(TALBO-01)

エレクトロでニューウェイブでパンクで歌謡。ビジュアルシーンの異端児と評されているメトロノームの結成20周年の幕開け第一弾は、シャラク開眼の歌詞にも驚かされるナンバー「弊帚トリムルティ」。その心境の変化を含め3人を直撃した。

結成20周年の第一弾シングル「弊帚トリムルティ」を制作するに当たってメンバー同士で話したことは何かあります?

フクスケ

音源を作る前にツアータイトルに“弊帚トリムルティ”って付けたんですよ。後付けで20周年の意味合いを含めてシングルのテーマにしたんです。

“弊帚”には“ボロボロになった箒(ほうき)”という意味があって、トリムルティには“三神一体”という意味がありますよね。

フクスケ

もともと“弊帚千金”という四字熟語が好きなんです。“ボロボロになったものでも自分のやってきたことには千金の価値がある”という意味なんですけど、それだと自分のことになってしまうので、弊帚に“3つの神に同等の力がある”というヒンドゥー教の教えの“トリムルティ”という言葉をくっ付けてみました。おこがましいことに自分たちを3体の神ととらえて、昔から培ってきた千金の価値を今こそ使うべきだと。“弊帚”は“並走”という意味も含んでいて、3人で20周年をともに走っていこうという想いですね。

なるほど。「弊帚トリムルティ」はエレクトリックポップなイントロと疾走感のあるサウンド、キャッチーなメロディーが印象的で間奏にはヘヴィロックの要素もある。メトロノームのいろんな要素が詰め込まれていますね。

リウ

今おっしゃっていただいたように、曲を書く時はイントロのシンセには相当こだわります。繰り返して何度も聴きたくなるようなインパクトのあるフレーズを考えますね。それと、この曲はライヴをイメージして作りました。シャラクくんが一番気持ち良く歌えるメロディーで、間奏のボコーダーを使っている部分はフクスケくんがスポットライトを浴びて歌っているイメージでギターソロもあったり。20周年だし、お客さんとみんなで歌える曲があってもいいかなと思って、Aメロやエンディングはコーラスパートを入れました。

歌詞では以前は現実に振り回されていたけれど、今は現実を受け入れているという心境の変化が出ているのと同時に、感謝の想いも歌っていますよね。

シャラク

昔は“全部嫌だ!”みたいに我が儘だったんですけど、最近は冷静に物事をとらえられるようになったので“みんなに助けられているんだな”って。最近、厄払いに行ったんですけど、お坊さんが“全てに感謝しなさい”って言ってたんです。その経験が反映されていると思います。

こういう歌詞を書くのは珍しいのでは?

シャラク

嫌味じゃなく“ありがとう”って歌うのは初めてだと思います(笑)。

フクスケ

珍しいなとは思いましたけど、20年以上一緒にいるので“本当かな?”と思いました(笑)。“本当にありがとう”なら分かるんですけど、“ありがとう本当に”って歌っているのが何か嘘っぽいなと(笑)。

シャラク

厄落とし一緒に行ったのに(笑)。

リウ

曲は僕が書きましたけど、作詞がシャラクくんでタイトルのアイデアをフクスケくんが持ってきたっていうのが、みんなで作った感があっていいなと思いますね。

まさにトリムルティですね。では、2曲目の「ボクになりたかった僕」はどんなイメージで書いた曲ですか?

フクスケ

20周年だったり、新しいビジュアルが相まって昔を思い出したので、以前に自分が書いた曲のようにAメロでちょっと変なメロディーを入れてみました。シンセやコーラスの掛け合いは最近っぽいんですけどね。

ベースソロではスラップがフィーチャーされていますね。

リウ

LINEで“さりげなくベースソロみたいなものを”って注文が来たんですけど、“それ難しいな”と思って。

フクスケ

ベースソロを聴いたら全然さりげなくなかった(笑)。

ははは。厄除けの話を聞いたので《厄にまみれた人生さ》で始まる歌詞が笑えます(笑)。

シャラク

「弊帚トリムルティ」は襟を正して張り詰めながら書いたんですけど、これはもう少し緩く構えて。

“ボク”は理想の自分で、“僕”は現実の自分ですか?

シャラク

“ボク”はメトロノームの自分だったり、お客さんから見た自分です。実際の僕とはギャップがあるけど、ゆっくりでいいから近付けていきたいなと。

2曲とも全然後ろ向きじゃないですね。

シャラク

そうですね。すごく前向きなんですけど、それがちょっと自分でも気持ち悪いというか…お坊さんの話が大きかったんでしょうね(笑)。周りが心配するほど前向き。

前向きになって心配される人も珍しい。

フクスケ

昔からそうなんですよ。

ということはこのシングルは新境地ですね?

シャラク

僕の中では新境地です。

フクスケ

お坊さんのおかげですね。

友達の友達を紹介されても他人だからと戸惑いを歌っている「友達の和」は今まで通りのシャラクさん?

シャラク

はい。これは全然前向きじゃないです。何も考えずに普段感じることを歌ったというか。いろんな歌い方をしたくて作った曲ですね。

最後に3月からツアーが始まるので、20周年の抱負をお願いします。

フクスケ

20年前にやりたいと思っていてもできなかったことが、今ならできるのでそれをかたちにして、ツアーにしてもCDにしても喜んでもらえたら嬉しいですね。

シャラク

とにかくまず自分が楽しめたらいいなと思います。それが結果、お客さんが楽しんでもらえることにつながるので。あまり張りつめずピリピリしたりせず、余裕を持って過ごしたいですね。

リウ

まだ発表できないけど、今年はいろいろ楽しいことを企画しています。20周年は大事ですけど、そのまた先につながって加速していけるような活動にしたいと思っています。

取材:山本弘子

シングル「弊帚トリムルティ」 2018年3月7日発売
KING RECORDS

  • 【初回限定プレス盤(DVD付)】
    KICM-91835 ¥2,500(税抜)

  • 【通常盤】
    KICM-1835 ¥1,300(税抜)



ライヴ情報

『メトロノーム QUATTRO東名阪ツアー
「弊帚トリムルティ[ 05→98→18迄-7=20 ]」 』
3/17(土) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
3/18(日) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
3/25(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO

『致死量フリーク 症例・羊
[ 05→98→18迄-7=20 ]』
5/05(土) 東京・Shibuya WWW X
w)MERRY

メトロノーム

メトロノーム:1998年結成。東京を中心に活動開始。メンバー全員が黒/黄の衣装を着用しており、音楽性はテクノポップの影響下にある独自のサウンドをプレイ。ニューウェイヴやパンクロックからの影響も感じさせる唯一無二の個性を放つJ-ROCK/POPバンド。09年5月31日の渋谷C.C.Lemonホールでのライヴを最後に無期限活動停止となったが、16年9月19日、チケットが瞬殺となった満員のZepp Tokyoワンマンライヴで再起動(活動再開)。18年に結成20周年を迎え、21年には再活動5周年を迎え、同年12月にライヴベスト+新曲の2枚組スペシャルアルバム『5th狂逸インパクト』をリリース。そして、翌22年8月にはオリジナルアルバム『阿吽回廊』を発表した。

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