【Brian the Sun】
『ブライアンフェス』
2017年10月9日 at 赤坂BLITZ
Brian the Sun
結成5年目ながらBrian the Sunとは前身バンド時代からの付き合いだという感覚ピエロは、“先輩枠でも(2015年の『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR』で共演した)列伝枠でもない自分たちがなぜ呼ばれたのか分からないけど、むちゃくちゃができる立場と受け止め、暴れたいと思います!”と序盤に宣言したとおり、ラップから歌に雪崩れ込んだ1曲目の「CHALLENGER」からミクスチャー感覚満点のロックナンバーを連打。“手を挙げろ! 遊べる奴、声上げろ! 全員まとめてかかってこいや!“と横山直弘(Vo&Gu)がかける発破に観客がジャンプ、モッシュ、タオルを振り回しながら応え、早くもスタンディングの客席に大きな盛り上がりが生まれた。
終盤ではテレビアニメ『ブラッククローバ』のオープニングテーマに起用された疾走感満点の新曲「ハルカミライ」も披露。Brian the Sunとの馴れ初めを話したあと、ナイーブな「拝啓、いつかの君へ」をじっくり聴かせ、“おや? 憎まれっ子世にはばかるを地で行く彼らが!?”と思わせたが、“こんな感じでは終わらない。めちゃめちゃにして帰ります!”とラストはラウドロックな「メリーさん」で再び観客をモッシュさせた。
ジョークだったのか、それとも“一度ステージに立ってしまえば、キャリアの長さは関係ない。物を言うのは演奏しかない”と暗に言いたかったのか、終始Brian the Sunと同世代だと主張していたSPECIAL OTHERSは、Brian the Sunのメンバーたちが高校時代に通学中聴いていたという先輩だ。その彼らは感覚ピエロによる、いわゆるアゲアゲのライヴから一転、この日の顔ぶれの中では異色とも言えるインストかつ長尺の4曲で観客を酔わせた。
インプロから雪崩れ込んだ1曲目の「TWO JET」。ギターがバリバリと鳴り、ベースのフレーズが絶妙に跳ねると、客席から手拍子が起こった。そこからジャズっぽい演奏につなげた「ORION」では、芹澤“REMI”優真(Key)がエレピを連打、演奏の熱が一気に上がる。どこかエキゾチックなところもある3曲目の「I’LL BE BACK」では、宮原“TOYIN” 良太(Dr)が演奏に重ねたハーモニーにたっぷりとリバーブを掛け、歌というよりも音色のひとつとして聴かせた。そして。跳ねるエレピのフレーズで始まったラストの「AIMS」では、白熱のインプロを披露しながら、4人それそれに演奏に熱を込める。終始、己の演奏に向き合う4人の姿はまさにストイックのひと言だった。
そこからまた一転、“やれんのか、赤坂!”という山中拓也(Vo&Gu)の雄叫びとともに、彼らの曲に“狂乱Hey Kids!!”というタイトルがあるように、いきなり狂乱状態を作り出したのがTHE ORAL CIGARETTESだった。ラウドロックと歌謡曲の合わせ技なんて言いたい1曲目の「CATCH ME」から早速、モッシュ、クラウドサーフィンを誘った彼らは、2曲目の「カンタンナコト」で“全員で頭振るぞ!”とヘッドバンギングを求めると、“Brian(のライヴ)じゃ聴けないような楽曲を、今日は聴いて帰ってください”と闘志を剥き出しにしながら、ラウドでファンキーなロックナンバーを次々に観客にぶつけていった。
中盤のMCで、出会った時はあまり良い印象を持っていなかったBrian the Sunのメンバーたちが、実は悩みや迷いを抱えていることを知り、“だから好き。列伝ツアーをやって思った”と語った山中。次に演奏した「DIP-BAP」をBrian the Sunに捧げると、一気にラストスパートをかけるように「狂乱Hey Kids!!」でメンバー全員が激しいパフォーマンスを観せ、“後ろまで声を聴かせろ!”とシンガロングを求める。そして、“思いっ切りかかってこい! ラスト1曲!”と映画『亜人』の主題歌「BLACK MEMORY」を全力で奏でた。“主役を食ってやる”ぐらいの気持ちで挑むことが彼らなりの祝福だったようだ。
4時間に及ぶ長丁場のライヴのトリを飾ったのは、もちろん今夜の主役であるBrian the Sun。「Sister」「Suitability」と懐かしい曲をつなげ、徐々にテンポを上げながら、直前のTHE ORAL CIGARETTESに刺激されたのか、「パワーポップ」では普段やらないコール&レスポンスに挑戦。森 良太(Vo&Gu)がこの日、出演した3組のバンド名をコールすると、観客がそれに応えた。
リフを畳み掛ける「シュレディンガーの猫」、森がギターを掻き鳴らし、田中駿汰(Dr)の手数ががぜん増えた新曲の「フォレルスケット」で一気に演奏が加速したところで、“燃えない曲やります”と「Maybe」につなげる。森によるちょっと皮肉っぽいそのひと言は、アゲアゲのライヴで客席を沸かせた感覚ピエロやTHE ORAL CIGARETTESに対する挑戦と言うか、淡々と惜別の想いを歌い上げる「Maybe」の演奏に込めるBrian the Sunなりの闘志の表れにも聴こえた。
そこからカントリーロックっぽい軽快な演奏に切なさが滲む「隼」、一転して激しいロックナンバーの「パトスとエートス」。そして、“みんなの笑顔を見たくて書いた曲やります”とアンセミックな「HEROES」と続け、抑えた調子の歌で始まった「13月の夜明け」では最後、メンバー全員でラストナンバーにふさわしいカオティックなインプロに突入して、内に秘めた情熱とバンドの底力を見せつけ、本編を締め括った。
そこで大きな手応えを感じたのか、アンコールを求められ、ステージに戻ってきた森は、“いろいろなバンドが出て、自分らのスタイルが分かってきた気がする。普通にやるのが自分たちらしい”とひと言。レポートに書く前に本人に言われてしまったが、筆者もまさに同じことを感じていた。それぞれにユニークな3組と共演したことで、Brian the Sunならではの魅力がより一層際立ったことは、確実に今回の見どころのひとつだった。
リリースに先駆け、11月15日にリリースする新曲「カフネ」を森がピアノを弾きながらアンコールの1曲目に披露。ビートルズを連想させるしっとりとしたミッドテンポのこの曲を“素直な曲”と言った森は、“誰もが違うからいい。違うから生きていける。みんな間違っていない”と客席にメッセージを送った。そして、自分たちのライヴや音楽がみんなが迷った時に帰る場所であってほしいという願いとともに“安心してください。帰る場所はあります”という新たな決意あるいは覚悟を込め、新曲「the Sun」を演奏しはじめた。タイトルから察するに、もしかしたら自分たちのことを歌っているのかもしれない。森、白山治輝(Ba)、小川真司(Gu)と順々にリードヴォーカルを回しながら、厳かな雰囲気の中で終演というところもBrian the Sunらしかった。
取材:山口智男
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