【THE BACK HORN インタビュー】
この10年はお客さんがよく見えている
L→R 岡峰光舟(Ba)、山田将司(Vo)、菅波栄純(Gu)、松田晋二(Dr)
結成20周年を飾るベストアルバムが完成! DISC-1には2008年の「覚醒」から今年の「孤独を繋いで」までのシングル表題曲を中心に、最高の新曲も収録。DISC-2ではファン投票で選ばれた人気のナンバー他、初期曲の再レコーディング版も楽しめる。
10周年のタイミングでもベスト盤を出してますが、その時も踏まえて今何か感じることは?
松田
前半の10年はTHE BACK HORNの音楽性やオリジナリティーを探してた期間だと思いますね。で、後半10年は意識的にやりたいアプローチを試していけたので、“もう10年経っちゃったんだ!?”みたいな放心状態っぽさがないんです。しっかり自分たちを把握できてる。
岡峰
前回はバンドとしてガンガン行ってる最中だったしね。その締め括りに初めての日本武道館ワンマンがあって、やっと目出度いことだったんだなと思いました(笑)。ステージに出た時のお客さんの雰囲気がバトルモードじゃなく、すごく祝福してくれていたし。ライヴが終わったあと、感謝の想いが芽生えてきたのを覚えてますね。余韻に浸る暇もなく52本のツアーが始まったんで、そこからはまた怒涛の10年でしたけど(笑)。
山田
そこからの10年はステージでも、曲を作る時も、お客さんがよく見えていますね。恥ずかしい言葉かもしれないけど、俺らがあるのはみんなのおかげだなって。“じゃあ、自分は何をすべきなのか?”と考え始めて…「世界中に花束を」「シリウス」の頃かな。大きい変化が訪れてました。まぁ、最初の10年は憧れというか、“ライヴのやり方はこうでなくちゃいけない!”みたいなツッパる感じや小さいこだわりがあったなと。ツアーで「シンフォニア」をやり始めたら“それ、いらないな”って思えて、残ったものがすごく大事になったんです。お客さんと瞬間をどう過ごしていくか。シンプルなところに意識が向いている気がします。
菅波
ちょうど「覚醒」の頃から、よりお客さんと熱く一体化できる曲を意識して作り出したんですよ。なので、リズムがガッと強くて、ギターリフをガンガン弾くっていうロックな統一感がある。そこに近作の「With You」「あなたが待ってる」「孤独を繋いで」と新曲「グローリア」が入って、いいバランスになりましたね。そう言えばね、“今日、取材だな”って思いながら歩いてる時に気付いたんだけど、俺のグレッチのギターも20周年なんだよ。
松田
言われてみれば、ずっと使ってるね(笑)。
確かに。だけど、曲の幅は広がってきてますよね。
菅波
頭の中で鳴ってる音を聴いてくれる人に正しく伝える演奏、音作りができるようになりたくて、そう切り換えられたのは、まさにこの10年かな。初期の頃に馴染みのイベンターさんから“やりたいことは分かるけど、たぶんそれが音になってないよ”って言われて、“アーッ!”と思ったことがあって。でも、その時は意味がよく分からず、“もっと気合入れてやればいいのか”って勘違いしてたんです(笑)。だから、武道館のライヴでは身体がボロボロになってた。これじゃダメなんだって身に染みましたね。
松田
曲作りの合宿に行かなくなったってのもあるよね。“合宿をすれば何か生まれるんじゃないか”っていうレコード会社と自分たちの淡い期待が恒例行事化してたんです。毎回やってたなぁ、山中湖のスタジオで。そこで作った曲のイントロを聴くと、つい合宿所の景色が思い浮かんじゃったりする(笑)。
山田
極端なことを言うと、前半10年は山中湖が作らせた曲みたいな。山の中にあるあのスタジオのさ、外に出ると音がしない静かな感じが、分かりやすく曲に表れてたりもするんだよね。
岡峰
『パルス』(2008年)までだもんね、合宿やってたの。そうか!偶然だけど、ベスト盤2作はわりときれいに分かれてるんだな。
山田
『アサイラム』(2010年)の時もちょっとだけ行ったけど、“行くなら短くしよう”って言ってたよ(笑)。
岡峰
たまには合宿のセッション感に戻ってみても面白いかもね。
「泣いている人」「無限の荒野」を新録した理由というのは?
松田
「無限の荒野」はライヴの肝になってるけど、すごく初期の曲だし、今の4人で浮上させたくて。このタイミングかなと思って、僕が提案しました。
山田
いろいろ若すぎるしね、当時の音源は(笑)。「泣いている人」は僕が挙げました。《どうかあなたが 幸せでありますように》ってメッセージを、もう1回みんなで録音したかったんです。今、ふと思ったんだけど、俺がさっきしゃべったライヴへの姿勢にも通ずるところがあるかな。
松田
時を経て今にフィットした感じだよね。あの頃はこうつながるなんてまったく思わなかったな。震災を含めていろんなことが起きてしまったあとでは、同じ歌詞でもまた違う聴かれ方をするだろうし。
菅波
MVも作ったしね。
山田
TYPE-AのDVDに入ってて、俺が監督してます。そちらも楽しんでもらえれば!
新曲「グローリア」についても聞かせてください。
菅波
最初に歌詞を書き始めて、“この内容でパンクな感じだったらカッコ良いな!”と思ってアイリッシュのノリが浮かんだんです。でも、途中でもう少し曲調に変化を付けると面白いかなと。デモ段階で僕はベースのアレンジがイメージできなかったけど、“俺に任せとけ”って光舟が言ってくれて。ほんの数日で上げてきたし、すごいよね。ベースのメロディーで曲がめちゃいい流れになったから。
岡峰
栄純がデモを持ってきた時に、THE BACK HORNらしさと新しさのどっちも感じて、特異なパターンだなって思ったんだよね。歌詞の場面場面を大切に汲み取れば、いいアプローチができる気がしました。
山田
そうそう! 力強くもあり、寄り添える曲だなと歌ってて思う。それってTHE BACK HORNの魅力だけど、両方を1曲の中で持ち合わせてて、あの感じで表現できたのは、今だからこそなんだろうね。
菅波
サビの《この世に生まれてきたのなら》《あきらめなんかに用はねえ》がまず出てきたんですよ。友達と横に並んで座って、一晩中飲んでる感じ。そういう近さの曲にしたくて。飲んでるうちに盛り上がってきて、“明日からやったろうぜ!”みたいな。
松田
20周年のタイミングで、僕らの音楽をまだ必要としてくれる人がいる中で、どうすればパワーを感じてもらえるか。THE BACK HORNの現段階での伝え方、関わり方が一番真っ直ぐにかたちになった曲だと思います。
取材:田山雄士
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