【吉田山田】このアルバムを作って怖
いものがなくなった
L→R 吉田結威(Gu&Vo)、山田義孝(Vo)
王道もあれば、チャレンジもあり、まさに“渾身”と言える2ndアルバム『ココロノート』。“今年は勝負の年だと思っている”と、吉田山田のふたりが本作にかける想いを語ってくれる。
取材:石田博嗣
1年5カ月振りとなるアルバムが完成したわけですが、年間100本以上ライヴをやられている中で、このアルバムを作るのは大変だったのでは?
山田
1stアルバムの時はデビューまでに準備期間が結構あって、曲を作り貯めていたので、そんなに苦しくはなかったんですけど、今回は苦しかったですね(笑)。
吉田
テーマはすぐに決まったんですけどね。前回も言いましたけど、今の自分たちの歌っていることに物足りなさを感じたんですよ。それがはっきりと確信に変わったのが昨年9月のワンマンツアーだったので、早い段階から今の自分たちにぴったりとくる曲を作ろうってことになって、どんどん曲を作ってました。ただ、作業的には1月に入ってもやってましたけど。
山田
昨日まで歌入れをやってました(笑)。
(笑)。その“自分たちにぴったりとくる曲”というのは?
山田
僕の座右の銘が“押し出せ、押し出せ、ネガティブ押し出せ!”だったんですけど、今は“抱きしめ、抱きしめ、ネガティブ抱きしめ! そして、最後に押し出せ!”なんです。ネガティブの中には、大事なものがたくさん詰まっているんですよ。だから、ネガティブを受け入れて、ちゃんと噛み締めて、最後に押し出すっていう。
吉田
今まで吉田山田って、そこを怖がっていたところがあるんですよ。例えば、ライヴでネガティブなことを歌った時に、お客さんがネガティブな気持ちになって帰ったらどうしようって。でも、どうしても避けることができない悲しみを目の当たりにしても、そこから再び歩き出す強さみたいなものを信じられるようになったんですね。僕らがネガティブなことを歌っても、聴いてくれた人の中で何かの強さに変わるんじゃないかなって。ほんと、昨年の震災の時は応援歌なんか歌ってる場合じゃなかった…みんな頑張ってるんだから、その人たちに対して何を歌えばいいんだろうっていう壁にぶち当たってしまったんです。その中で出てきたのが…それまでの吉田山田の歌っていうのは絵描き歌だったんですよ。一緒に描いて楽しくて、最後に同じ絵が出来上がるっていう。でも、今回のアルバムは吉田山田作の絵画なんです。希望に満ちた絵に見える人もいれば、すごく暗い絵に見える人もいるかもしれない。もちろん、僕らの中には答えはあるんですけど、みんなが同じ答えじゃなくてもいいかなって。そういう気持ちが強いアルバムになりましたね。あと、挑戦もたくさんしました。今まで頼んだことのないアレンジャーさんにお願いしてみたり。
山田
今までってアレンジャーさんが何人か決まっていたんですけど、今回は新しい出会いをしたい、新たな化学変化を楽しみたい、と。ふたりだけっていうか、知っている人とだけで作っていると、新たなものはなかなかできないんで、それこそ僕らとは一緒にやらないような人たちにもお願いしたんですよ。
陰りのある「天使と悪魔」は今までにない曲調ですよね。焦燥感のあるロック調のアレンジも新鮮でした。
吉田
何でもそうだと思うんですけど、一旦、マックスまでやってみようって(笑)。で、行き過ぎたらちょっと戻すっていう。特に「天使と悪魔」は、そういう感じでやってましたね。
山田
だから、このアルバムを作って、怖いものがなくなりましたね。このふたりが一緒にやれば、打ち込みでやろうが、何をしようが、吉田山田になるって。
逆に「カシオペア」は王道で。思春期特有の不器用な恋の歌というのも、吉田山田らしいところだし。
吉田
そうですね。インストアライヴとかをやるとファンの方から直接手紙をもらうんですね。例えば、17歳の子から手紙をもらって、それを家に帰って読むと思春期の思い切りリアルな心情が覗き見れるわけですよ。だから、未だに思春期をリアルに感じられるんです。…って、山田は今でも思春期だっていう話もありますけど(笑)。
山田
あんまり変わってないですね、恋の仕方は思春期の頃と(笑)。
全体的に見ても、一曲一曲が濃いですよね。
山田
バランスとか全然考えずに作りましたからね(笑)。
吉田
タイトルの“ココロノート”って、2011年にいろんなことを感じた僕らの心の中にあるノートに記された12曲だっていうことで付けたんですね。子供の頃に自由帳ってあったじゃないですか。僕、自由帳が一番好きだったんですよ。自由帳は何を書いてもいいわけだから、明日忘れてはいけないものをメモしたり、絵を描いたり、ボールペンが出ないから出るまでグチャグチャやったり(笑)。それに近いんですよね、今回のアルバムって。ココロノートに自由に書き殴った曲たちだから、すごく強い感情で“君のことが好きだー!”って書いた隣に、“君のことなんて大嫌いだ!”って言っているという。だから、一曲一曲が濃くて、バラバラなのかなって。
でも、散漫になっていないのは、さっき山田くんが言ったように、このふたりが一緒にやれば、吉田山田になるっていうところなんでしょうね。
吉田
どんなに自由に書き殴ってあるノートであっても、持ち主の特徴が出る…名前が書いていなくても誰の持ち物なのかが分かるっていうことだと思います(笑)。
なるほど(笑)。あと、“ノート”ということは、“音”でもあると?
吉田
はい。僕らの心に刻まれた言葉であり、その言葉から出てきたメロディーでもあり、両方が合わさったものなので。
そんな今回のアルバムはデビュー3年目ということもあって、準備を万端に整えて、得意技や必殺技を磨いて、新しい技も覚えてっていう、次のフィールドに向かうための作品になった感じですね。
吉田
ほんと、その通りですね。吉田山田にとって、今年は勝負の年だと思っているんですよ。だからこそ、今さら怖がっている場合じゃないし、やりたいことをやるんだっていう気持ちが強い。それは「旅立ちの合図」という曲にも表れている…前面に押し出すつもりはなかったんですけど、自ずとそういうアルバムになってるのかもしれないですね。
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