【南壽あさ子】出会いと別れ、そして
希望を描いた 春にピッタリの2ndシン
グル

ピアノの弾き唄い、南壽あさ子の2ndシングルは、大事に温めてきた大切な曲「どんぐりと花の空」。その曲とカップリング曲「狼にベルガモット」に込めた想いを語ってもらった。
取材:田中隆信

2ndシングル「どんぐりと花の空」が発売されましたが、この曲はどういうきっかけで生まれた曲なのですか?

20歳か21歳になったばかりの頃に作った曲です。空想の世界に男の子と女の子がいて、よく山で夢を語り合っていました。やがて女の子が短い命だと分かり、男の子は残された時間で何ができるんだろうと思い巡らすんですけど、女の子は亡くなってしまいます。打ちひしがれながら、もう一度山に登っていく過程で、季節が巡ったり、過去を回想したりしますが、最後頂上に辿り着くとそこにはすごく美しい景色が広がっていて、男の子は悲しみを希望に変えていく…というストーリーになっています。時の経過とともに人を大事にしようと思ったことや感動したことが徐々に薄れていってしまう怖さを日々感じているので、そういう気持ちをあえて歌に込めることで、この曲を歌い続ける限り、常に目の前にいる人たちを大事にできるんじゃないかって思ったんです。

2012年の秋に発売したアルバム『Landscape』に入る可能性もあったけど、収録するのを泣いて止めたというエピソードがあるそうですね。

はい。『Landscape』は冬の作品だったので、季節感を大事にするためにも春の歌である「どんぐりと花の空」は入れたくなかったんです。もともとシングルとして春に出したいと思っていた曲でしたし、アルバムの中の1曲に収まるイメージがなかったので、“この曲を入れよう”って言われた時、泣いて拒みました(笑)。

カップリング曲の「狼にベルガモット」は大人っぽい雰囲気の曲ですね。歌い方もちょっと気怠い感じですし。

そうです。気怠さをすごく出したくて(笑)。大学で軽音サークルに入っていたんですけど、その時に初めてライヴハウスというところに行ったんです。毎日地下でロックバンドが演奏を繰り広げて、そこに通い詰めるお客さんがいて熱狂しているという世界にすごく衝撃を受けました。大きな音を浴びて熱狂している女性が、その熱を冷ますように外に出ると日常に戻っていく。そんなところがすごく興味深くて、面白く感じたんです。ステージとフロアーってちょっとした段差しかないんですけど、ファンからしたら見えない壁みたいなものがあるので、バンドマンへの叶わない恋を書こうかなって。

この曲の“赤ずきんちゃんVer.”がサンリオピューロランドの新アトラクションのテーマソングに起用されましたが。

レコーディングがほぼ終わりかけていた頃にお話をいただいて、「狼にベルガモット」を聴いてもらったらすごく気に入っていただけたんです。偶然にも新アトラクションの内容が狼の出てくる『赤ずきん』だったので、元の歌詞との共通点を見い出して部分的に変えていきました。狼に食べられてからの回想シーンになっているので、『赤ずきん』の内容を忘れてしまったという人は読み返してもらってから聴くとより楽しんでいただけると思います。

3月6日が誕生日でしたが、どんな1年にしたいですか?

25歳になりました。アラサーになったというのが衝撃的ですね(笑)。でも、誕生日までに47都道府県ツアーで全国を回れたのは区切りが良かったと思います。まだ助けてもらわないとひとりでは何もできませんけど、その中でも今自分が感じてることとか、体験したことを歌として残していきたいと思っています。今年は生み出す年にしたいですね。

「どんぐりと花の空」

  • 「どんぐりと花の空」
    TFCC-89493
    2014.03.12
    952円

南壽あさ子

ナスアサコ:千葉県出身のシンガーソングライター。1989年3月6日生まれ。両親の影響で、幼少時より洋楽・邦楽問わず、幅広いジャンルの音楽に触れて育つ。東京女子大学在学時に軽音部に所属し、20歳頃からオリジナル曲制作とライヴ活動を始める。2012年、自主制作盤「回遊魚の原風景」を300枚限定で発売。タイトル曲はPS3『エスカ&ロジーのアトリエ~黄昏の空の錬金術士~』のワールドトラベルテーマに選ばれた。ほぼピアノのみで演奏されるシンプルながらも素朴な楽曲と、透明感のある歌声で話題を呼ぶ。同年6月、1stシングル「フランネル」でインディーズデビュー。表題曲はテレビ東京『海外行くならこーでね〜と!』、カップリングの「星のもぐる海」は音楽番組『音流』のタイアップソングに起用された。11月にミニアルバム『Landescape』をリリース。2013年1月にデジタルシングル「街路樹」を1週間限定で配信。同年10月23日発売のシングル「わたしのノスタルジア」で、<TOY’S FACTORY>からメジャーデビューを果たす。

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