【DIR EN GREY】5人の鼓動がひとつに
重なった瞬間
L→R Toshiya(Ba)、薫(Gu)、京(Vo)、Shinya(Dr)、Die(Gu)
3年4カ月という年月は、DIR EN GREYをいっそう強靭かつしなやかな怪物へと変貌させた。ついにベールを脱ぐ通算9作目アルバム『ARCHE』で5人は改めて自らの定義、そして存在意義を問い直す。
取材:金澤隆志
アルバムを通して聴くと、やはりアルバムに先立ってリリースされたシングル「輪郭」と「Sustain the untruth」の2曲が本作の方向性を定める上で重要な道標になったように感じました。
Toshiya
それはあったと思いますよ。このアルバムの出だしは「輪郭」から始まったような気がしますし。この2曲に共通する意識としてあったのが“作り込みすぎない”ということ。なるべく不要なものを削り、同線上にあるものを少しだけかたちを変えてつなぎ合わせていく感じで。まったく違うものを持ってくるのではなくてね。
それは音を重ねることによって構築していった前作『DUM SPIRO SPERO』とは少々違うアプローチですね。
Toshiya
ここ一連の流れとは少し違う作風にはしようという意識はありました。少し巻き戻した感じというか。ここ最近の作品の流れとしては“聴くぞ”と身構えて聴くアルバムが多かった。それが良いほうに働くこともあれば、少し理解するのが難しい部分もあった。今回は頭で考えるというよりも、体で自然とリフを刻めるようなタイプの楽曲が多いと思うんです。長尺の曲もあえて省きましたし。
前作までは、コンピューター上で曲を構築して完結させる手法だったのが、「Sustain the untruth」からはレコーディング前に5人で一緒にプレイして確認するようになったそうですね。これも“体が自然と動く”“作り込みすぎない”といったことに通じる?
Toshiya
通じますね。画面上でのやり取りで終わらせずに、5人のタイム感を合わせたかったんです。一緒に音を出してみることで、初めて“もう少しテンポを上げたらどうなるだろう?”という選択肢が出てくるので。コンピューター上で作る方法は机上の空論のようなやり取りだったので、現実の世界に持ち出した瞬間、初めて“こんなふうになるんだ”というのが分かるというか。それと同時に、これまで培ってきたもの、吸収してきたものを繰り返すことによって、新たなもの、洗練されたものを創造していく、という意識もありました。
8月に行なった1stアルバム『GAUZE』の再現ツアーもまた“培ってきたもの”との対峙でしたよね。あえてこのタイミングでこういったツアーを入れたのにはどんな意味があったのですか?
Toshiya
あれは単純に15周年というだけで、このタイミングに意味はないんですよ。本当にたまたま。このアルバムに向かうために『GAUZE』をやったということではないです。
とはいえ、『GAUZE』の曲を改めて自らの中に注入することで、今の自分たちにはない要素に刺激された部分もあったのでは?
Shinya
あったとは思うんですけど、レコーディングはツアーの前だったので(笑)。ただ、良い影響はありました。単純に楽しかったし。
Toshiya
当時はできなかったけど今のスキルだからできたこともあるし、今では出てこないフレーズというものを再発見することもできました。それに毎回やるような楽曲ではないので、自分の中で噛み締めながらやれてる部分はありましたね。
あと、『GAUZE』ツアーではDIR EN GREYとしては珍しく発表前のアルバムからの新曲を披露していましたね。
Toshiya
「Un deux」と「Chain repulsion」を日替わりでやっていました。「Un deux」はイマイチまとまり切れてなくて未知数の要素があったので、ツアーでやることによっての変化を期待していて。でも、実際にやってみたら全員の中で意外にもすんなりと収まっちゃって(笑)。この曲は初期のほうに出てきたもので、一度ボツってるんですけどね。
もう1曲の「Chain repulsion」は『GAUZE』の「MASK」にも通じたビート感を持つ曲ですよね。
Toshiya
この曲はだいぶ早い時期に出てきていたかな。当初からこういう感じのビート感で、それが新鮮と言えば新鮮だけど、経てきているものでもあるので、すげぇ新鮮かと言われればそうでもない。自分にとって今回のアルバムでリズム的に新しかったのは「鱗」。こういうハネ感って、これまであまりなかったパターンなんですよね。
Shinya
「鱗」はハネ具合が難しかったですね。
全体的な音像も前作と大きく異なっていて、とても風通しが良く、それぞれのパートがクリアに聴こえます。
Toshiya
とても鮮明ですね。分離がすごく良くて、ワイド感もあるし、下から上までレンジが広い。それはアレンジでだいぶ削ぎ落としていったのもあると思います。
ミックスはここ最近の作品を手掛けているチュー・マッドセン?
Toshiya
ええ。今回は太鼓の音が大きく違いますね。とてもファットだけど、かといってボヤけてるわけではない。圧とパワー感がいい感じに出ていると思います。
Shinya
最初は自分の中のイメージと大きくかけ離れたかったので、かなりやり取りを重ねましたね。それでどんどん良くなっていったんです。
ファンのみなさんがこのアルバムの楽曲を、そして音をどのようにとらえるのか、すごく楽しみですね。
Toshiya
『UROBOROS』『DUM SPIRO SPERO』の流れで聴いてくれていたお客さんには物足りないと感じられる部分もあるかもしれない。そこで意見が分かれるであろうことは自分らでも分かっています。それらを全てねじ伏せる気持ちでこのアルバムを作っていた部分はやっぱりあって。もしそれができたら、本当の意味での怪物アルバムになるんじゃないですかね(笑)。ただ、今回はひとつの断面を見せたというだけで、根本は何も変わっていないと思っています。手法的には幅が広がったけど、これまでの作品でしてきた通り、その時々に自分たちがやりたいことを素直にやっているだけなんです。
Shinya
みんな気に入ってくれると思います。
アーティスト
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