【Fear, and Loathing in Las Vegas
】バンドの現在値を示す濃密度な傑作
シングル!
L→R Tomonori (Dr)、Kei(Ba)、Taiki (Gu)、Minami(Vo&Key)、So (Vo)、Sxun(Gu)
Fear, and Loathing in Las Vegasのニュー・リミテッド・シングル「Let Me Here」が完成! 表題曲はアニメ『寄生獣 セイの格率』のオープニング曲に抜擢。作品ごとに確かな成長を刻み付ける彼らがさらなるネクストレベルを提示する。
文:荒金良介
神戸発の6人組、Fear, and Loathing in Las Vegas(以下ラスベガス)。3rdアルバム『PHASE 2』レコ発ツアーを終えたばかりの彼らが、早くもニュー・リミテッド・シングル「Let Me Hear」をリリースする。今回の表題曲はアニメ『寄生獣 セイの格率』のオープニング曲に起用されることになった。このニュースは3rdアルバムのレコ発ツアー初日(9月4日@新木場STUDIO COAST)に、メンバーの口から直接告知されたものである。僕もツアー初日に足を運んだが、最初から隙のないパフォーマンスで度肝を抜かれた。この日はヘヴィメタル界の大ベテラン・バンド、LOUDNESSを迎えた異色の組み合わせで、高崎晃(Gu)の超絶ギターに沸くラスベガス・ファンの姿を観て、素晴しい光景だなぁと感慨に浸った。同世代で固まってライヴをやるのもいいだろう。しかし、自分たちが軸足を置くシーンやジャンルとは違う人と他流試合を試みることで得るものはたくさんある。そういう意味でも今回のツアーはUZMK、GOOD4NOTHING、locofrank、dustbox、TOTALFAT、BIGMAMA、さらにファイナル・シリーズではMUCC、キュウソネコカミ、でんぱ組.incと、自分たちよりも経験値の高い先輩格や他ジャンルのアーティストと積極的に関わろうとする意志が対バンからもうかがえた。アルバムのタイトル通りにフェーズ2に突き進んだことを意思表示し、さらなる目標に向かってバンドサウンドを進化させるためにも新たな刺激や挑戦は必要だろう。外的環境を大きく変えることで内部変革をもたらす。今回のツアーを通して、バンドはひと回りもふた回りも大きくなっている。いや、僕の予想を上回るほど凄まじい成長を遂げていた。ファイナル・シリーズの東京公演(12月9日@ZEPP TOKYO)はこれまた異色のでんぱ組.incを対バンに迎え、彼女たちがエンタメ性に優れたパフォーマンスを展開して熱く盛り上げた後、ラスベガスは自分たちの持てる力をフル発揮する底なしのエネルギッシュさでZEPP TOKYOの屋根を吹き飛ばさんばかりの迫力を見せつけた。
話が随分長くなったが、そろそろ本題に入りたい。今回できたばかりの3曲入りシングル「Let Me Hear」を聴き、またしても興奮が収まりそうにない。内容がすごすぎるのだ。シングルとはいえ、普通のバンドで言えばミニやアルバム級の濃度と密度を提示しながら、ラスベガスの現在値を刻み込んだクオリティーの高さ。振り返れば、前作3rdアルバムはリスナー、もっと踏み込んで言えば、ライヴハウスで対峙する観客をこれまで以上に意識した作風だった。つまりライヴ感ということになるのだが、フレーズ、曲展開を含めた楽曲面において、観客がハンドクラップしたり、ヘッドバンギングしたり、両手足を使って踊ったりする光景を具体的に描いたサウンドアプローチを実践する。今回はそれが血肉化された上で、さらに次のレベルに突き抜けた印象を受ける。
まず1曲目「Let Me Hear」はすでにライヴでも披露されているナンバーで、冒頭でも説明した通り、アニメのオープニング曲という位置付けでイントロから歌で始まるキャッチーな幕開けだ。もちろんツインヴォーカルを活かした歌メロ、スクリームのせめぎ合いもありつつ、勇壮なコーラスワークでもガンガン援護射撃し、歌だけに注目しても実に表情豊か。またラウドやエレクトロの要素を盛り込みながら、ぐっちゃぐっちゃに猛攻撃を仕掛けるかと思えば、グッとシンプルに聴かせる場面もあり、押し引きのある曲調が魅力的。中盤に日本語詞も挿入され、柔和なメロディーラインがすっと表出する場面もいいフックになっている。2曲目「Sparkling Sky Laser」は彼らが得意とするディスコ/ダンスミュージック的なテイストを基調にひたすらアッパーに煽ってくる。空間を意識したシンフォニックなパートも心地良く、奥行きとスケール感のある楽曲で後半になるにつれて加速するビートもたまらなくカッコ良い。3曲目「Abyss」はホラーチックなイントロが面白く、言葉の発語感もユニークで遊び心に満ちている。片時も耳が離せない熱量でこちらを引き付けながら、ふっと流麗な鍵盤が挟まれるパートにゾクッとさせられるという、よりドラマ性の高い曲調に仕上がっている。
全3曲とも3分台で収まる楽曲がずらりと並ぶが、その限られた容量にとんでもない熱量、エネルギー、ロマン、ドラマ、荘厳なムードを詰め込むだけ詰め込み、さも当たり前のように聴かせる手腕は、今作でひとつの到達点に辿り着いたような完成度で驚きを禁じ得ない。本当に恐るべき才能だと思う。
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