【→Pia-no-jaC←】サウンドの向こう
側に広がる美しい世界
L→R HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)
昨年と今年に行なったヨーロッパツアーでの体験が色濃く反映された最新アルバム『BLOOD』。ピアノとカホンから生まれるドラマチックなサウンド、醸し出される豊かな質感やイメージを楽しめる一枚だ。
取材:田中 大
ヨーロッパツアーをした体験が、今作にかなり反映されたみたいですね。
HAYATO
そうだと思います。ヨーロッパはデビューしたての頃に行ったきりだったんですけど、去年から今年にかけてガッツリ回る機会がありまして。ヨーロッパだからクラシックとかディズニーの曲のカバーがうけるかと思ったら、一番反応が良かったのがオリジナル曲だったんですよ。そこで考えたのは、現地の人たちと俺らには何か通じるものがあるのかもしれないということでした。
音楽に反応する根源的な部分は、全人類共通のものがあるのかもしれないですね。
HAYATO
もともとはひとつだったものが少しずつ分かれていって、いろんな血統になったんでしょうね。今回のタイトルは“BLOOD”ですけど、“血統”という意味でして。音楽の血統を探していくうちに生まれた7曲です。
HIRO
ヨーロッパでは各地のお祭りにも呼ばれたりして、伝統的な音楽に触れることができました。そうやって吸収したものも大きかったと思います。あと、現地に行っている期間も長かったので、自分たちを鼓舞するものを生みたいという気持ちも制作につながりましたね。
ヨーロッパって音楽が生活に自然に溶け込んでいるという話をよく聞きますけど、どうでした?
HAYATO
向こうではアパートでライヴをすることも多いらしくて、フランスでそういう場に呼んでもらう機会がありました。人々の熱量がとにかく半端ではなかった。1曲終わるたびにハグですからね(笑)。
HIRO
年配のお父さんが、“何なんだ、この音楽は!? 今までに聴いたことがない!”と興奮していました。
HYATO
“キース・ジャレットかと思った”って、それはさすがに言いすぎだと思いましたが(笑)。アップライトピアノを使わせてもらったんですけど、そのお父さんが1曲ごとにどんどん蓋を開けていくんですよ。“もっと大音量で聴きたいから”と。アパートなのに音量を気にすることなく(笑)。
(笑)。現地で見た風景とかも曲に反映されていったのでは?
HAYATO
それもありますね。でも、海とか山の風景って日本と変わらないものも感じたりして。そういう風景から日本を思い出して曲を作ったりもしました。「Nostalgia」とか、まさにそういう曲ですね。お気に入りです。このフレーズができた時は、ずっと移動中の車内で小っちゃい鍵盤を弾きながら、どういう曲に仕上げていくか考えていました。
「TASOGARE」は古城の日没をモチーフにして書いた曲らしいですね。
HAYATO
イタリアのコルチャーノという、すごくきれいな町に行った時に浮かびました。古城でひとりの英雄が空を見上げて佇んでいる感じのイメージです。悲しみや強さが入り混じったものを表現したいと思ってて。今年のヨーロッパツアーでもコルチャーノに呼んでもらったので、ミュージックビデオもこの町で撮影をしたんですよね。
「Sicilia di mare aperto」はフェリーの船上で作った曲ですよね?
HAYATO
はい。ナポリからシチリア島のパレルモにフェリーで行った時に作りました。今回、そういうツアー中の生活の中から生まれた曲ばかりですね。ライヴのない時は海に泳ぎに行って、部屋に帰ってピアノを弾いて曲を作るような生活をずっとしていたので。
HIRO
HAYATOはずっと泳いでいましたよ。俺なんて1時間とか泳いだら満足して、あとはずっと陸でボーっとしてるんだけど。HAYATOは潜るのも好きだから、“あいつ大丈夫なのか?”っていうことになっていました(笑)。
HAYATO
そんなような中から、いろいろな曲の断片ができていきましたね。それをもとに日本で仕上げていく制作でした。書き留めたメロディーと写真を見ながら“こうやったなぁ…”という感じで。
リスナーは、いろんな空間や風景を感じながら聴くんだと思います。音による写真集という感じもあるかも。
HAYATO
こういう景色があって、こういう人たちに出会って…っていうのをどんどん音にしていったアルバムなので、今回の曲は展開が多いんです。7分超えの曲が結構ありますから。風景とかを感じてもらえると嬉しいです。
あと、「FILMS」はパフォーマンス集団のenraとのコラボレーションですね。
HAYATO
カンヌ国際映画祭のクロージングセレモニーのお話をいただいてから制作した曲です。絵コンテを見たり、メンバーのみなさんともお話をしながら作っていきました。
HIRO
曲の作り方としては、すごく珍しいやり方でした。enraさん側からいくつかテーマをいただいて、“それをひとつにまとめてほしいんです”という要望を受けながらの制作だったので。コラボレーションならではのものになったと思います。
年明けの1月からは国内のツアーですが、意気込みは?
HIRO
海外で得たものがすごく反映されたアルバムになったので、それを日本で表現できるのが楽しみです。今までは日本で培ったものを海外に持って行く感じだったのが、今度のツアーはその逆なので。そういう新鮮さもお客さんと一緒に楽しめたらいいなと思っています。
HAYATO
血統を探って作った7曲が『BLOOD』なので、新しく得たジャンルや物語を、直にお客さんに感じてもらえるツアーにしたいです。
アーティスト
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