【吉田山田】吉田山田のことをちょっ
としか知らない人に届けたい
L→R 吉田結威(Gu&Vo)、山田義孝(Vo)
4枚目のオリジナルフルアルバムであり、結成7周年目のリリースということで、“47【ヨンナナ】”というタイトルを掲げた最新作が完成! ふたりも“過去最高傑作”“一曲一曲が濃い”と語るほど、相当な手応えを感じているようだ。
取材:石田博嗣
セルフタイトルを掲げた3rdアルバム、シングルコレクションを経ての4枚目のアルバム。しかも、47都道府県ツアーを見据えてのリリースということで、今までの作品と制作に入る前の意気込みは違いました?
吉田
それがあんまり今までとは違わず…特にコンセプトもなく作っていたし、“47”というタイトルも一番最後に決まったので、作り方としては変わってないですね。ただ、自分たちにしか分からないのかもしれないですけど、確実にこの1~2年で変わっていっている部分があって、その時々に曲を作っていたので、次にアルバムを出す時にかたちにしようと思っていたものばかりが収録されています。
山田
だから、このアルバムって一曲一曲が濃い。それって、この1~2年の間に深夜ラジオをやらせてもらったり、テレビのレギュラーが始まったりして、新たなことがどんどん増えていったんで、そこで吸収したものが大きかったんだなって。注がれているものが今までと違うのかな?って感じていますね。
アルバム全体としては一曲一曲が濃く、それぞれで曲を作るスタイルが定着したことで個々の色がより強くなったし、それによって吉田山田としての色も強くなっている印象がありましたよ。
山田
あ~、そうかもしれないですね。ふたりで作った曲も何曲か入っているんですけど、それは曲作りの終盤のほうでできたものだから…だから、ある時期からふたり別々に作業をするようになったんですけど、また戻ってきた…別れたカップルがよりを戻したような(笑)、そういうところがちゃんと収められているなって思いますね。前作アルバムとは逆のグラデーションを描いているっていうか。
吉田
個々で曲を作るようになった時も、お互いのスキルが高まったところでまた一緒に曲作りをすれば、すごい作品ができるんじゃないかって、インタビューとかで漠然と言ってましたけど、こういうかたちで一緒に作るようになるんだなって思いましたね。言葉にしてしまうとすごくありふれてるんですけど、お互いの良さをお互いに理解し合って、その中で一緒に曲を作る…今までは吉田らしさ、山田らしさが出たらゴールっていうか、“らしくていいよね”で良かったんですけど、今回は“いい曲だね”にならないとダメだと思ったんですよ。このアルバムを一番届けたい人って、吉田山田ってどっちが吉田か山田か分からなくて、おじいさんとおばあさんの曲を歌ってるやさしそうな二人組ぐらいにしか思ってないような人で、そういう人に“吉田山田っていい曲を歌ってるし、カッコ良いね”って思われたいんです。どっちが作ったなんてどうでもいいんですよ、そういう人たちって。僕も好きな人の曲を聴いた時にクレジットなんて見なかったし。だから、ふたりで素晴らしい曲を作るにはどうすればいいのか?っていうのが、少し見え始めたところですね、今は。
山田
これは後付けなんですけど、よっちゃん(吉田の愛称)からいいバラードが上がってくると、そのあとに僕が作り出す曲って結構アップテンポだったりするんですよ。なんでそうなるかは今でも分からないんですけど、そこが吉田山田らしいのかなって。方や「母のうた」を作ってる裏で、「押し出せ」で《はみ出せ はみ出せ ポロリとはみ出せ》と歌ってるわけですからね(笑)。だから、個々で作ってていいんじゃないのかなって思ってたんですけど、やっぱり交わり合う部分も吉田山田の色として濃いと思ったので、ここからまたそういうことも始めていけばいいのかなって思いますね。
今回のアルバムを作るとなった時は、結構な数の曲があったと思うのですが。
吉田
そうですね。そこから厳選され、さらに厳選されて、この12曲になりました。
その厳選のポイントというのは?
吉田
厳選のポイントってなると“気分”っていう(笑)。“この曲、好きだから”とか、“この曲、47都道府県ツアーで歌いたいから”とか、“この曲が今の心にすごくフィットするから、今出したい”とか、そういう衝動的な気持ちが結局は一番強かったのかなって。
吉田山田的に旬なもの?
吉田
そうですね。とある曲がアレンジまで進んでいて、歌詞だけがない状態だったから、山田が歌詞を書いてたんですけど、行き詰まってしまって僕にバトンタッチしたんですね。で、僕も書き始めたら行き詰まってしまって。でも、それは“この曲は今じゃないんだ”ってことに行き着いたんですよ。そういう意味では、旬の吉田山田が入っていると思いますね。無理して“もうアレンジまで進めちゃったからやるしかない!”って進めるんじゃなくて、自分たちが納得したものばかりが収録されています。
“押し出せ、押し出せ、ネガティブ押し出せ”という山田くんがデビュー当時から言っていたフレーズが曲になったのも、タイミング的に“今”だったわけですか?
山田
実は昔に作ってはみたものの、お蔵入りになったんです。で、今回、アホみたいに盛り上がる曲を作りたいと思った時に、“あのフレーズ!”って思い出して。あと、サウンドプロデューサーがすごく敏腕で、カッコ良いものにしてくれたんですよ。そのサウンドプロデューサーとの出会いも、この曲のいいスパイスになっていると思いますね。
サウンドプロデューサーとの出会いも含め、まさに“今”が曲にすべきタイミングだったわけですね。では、そんな今回のアルバムの中で、おふたりの印象的な曲は?
吉田
僕は「ためいき」ですね。一番最後に作ったから、一番最新の曲なんですよ。ほんと久しぶりに、サウンドプロデューサーとマネージャーと僕と山田とで真面目に音楽の話をしたんですけど…頑張んなきゃいけないこととか、怠けていられないこととか、現状で満足していられないこととかって、みんな分かってることだから、あえて膝を突き合わせて話し合うことでもないんですけど、たまにはそういうことも必要だったというか。それこそ新たに出会ったサウンドプロデューサーが話をしたいと言わなければしてなかったと思うんですよ。漠然と“今の自分たちにできる一番いいものを作る”ってことではなくて、“次のレベルにいくためにはどうすればいいか?”っていう話を久々にしましたね。で、現状として発売される前に“このアルバム、いいアルバムだな”ってこんなに思えたことって今までなかったし、“早く次のものを作りたい!”ってこんなに思っていることもなかったので、そのひとつの象徴として、僕は一番最新の「ためいき」ですね。次なる楽しみを感じてるっていうか。
山田
僕は「てんてんてんて」ですね。レコーディングの1週間前には、あらかた出来上がっていて、“いい感じになりそうだな”と思ってたんですけど、すごくいいサウンドだったし、いいメロディーだったから、自分の中でもう1回可能性を探りたいと思って、一旦ゼロにして作り始めたんですよ。“もっと面白いものが出てくるんじゃないかな?”って。それって自分への期待だと思うんですよ。そこで“てんてんてんて”って言葉が出てきたんですけど、字面的にも、音的にも、歌詞の切り口も、今の自分が面白いと思うものがかたちにできたかなって。それでいてちゃんと恋愛の歌として成り立っているし。これができたってことは、もっといろんなことができそうだなって思った、そんな一曲ですね。
そんな「てんてんてんて」が1曲目なのですが、曲順もインパクトありますよね。ライヴで盛り上がっている絵が浮かぶアッパーな「てんてんてんて」の次にバラードの「告白」がくるという。
吉田
ガッタガタですよね(笑)。
でも、「告白」をライヴで聴くと絶対に感動しますよ。特にアウトロのストリングスとピアノソロは。
吉田
ミックスダウンしながら感動しましたからね。ほんと、曲順は練りました。僕、最初は不安だったんですけど、この曲順通りにアルバムを聴いた時、違和感がなかったので、これで良かったんだなって納得しています。
山田
今までだったら“これが1曲目で、あれが最後だよね”みたいなものが、なんとなくみんなの中に統一してあったんですけど、いかんせん今回のアルバムは一曲一曲が強いんですよ。全部1曲目でいけるし、全部最後の曲でもいけるんですよ。そうなっちゃったら、もうお手上げですよね(笑)。みんなそれぞれに想いがあるから、“誰か決めて〜”って。最終的にこの曲順になって…でも、発売はこれからなんで、反応が楽しみですね。
吉田
そんな中でも、最新の吉田山田である「ためいき」で終われるというのががいいなって思ってますけどね。
吉田山田の旬が詰まっているし、手応えもあるアルバムになったという感じですね。
吉田
こんなにリリース前から過去最高傑作だと思ったことは初めてですね。僕らの作った曲が人の手にわたって、人の反応を見た時に“あぁ、すごくいい曲が作れたんだな”と思うことが多い中で、自分がこのアルバムを聴いた時、シンプルに“すごくいいアルバムだな”と思えたというのは、「日々」を作ってからの喜びや、その反面にある悔しさとちゃんと戦い続けてきたからなんだろうなって。すごく充実感がありますね。これはほんとに、吉田山田のことをちょっとしか知らない人に届けたい傑作です。
山田
今回、ほんとにいろんな出会いがあったんですよ。ミュージシャンとの出会いもあったし、普段接している人たちよりも捻くれている深夜ラジオのリスナーたちとのふれ合いもあったし(笑)。そんな中で完成したアルバムには、小さい子からおじいちゃんおばあちゃんまで聴いてもらえる曲があると思うし、真面目な人から捻くれ者まで“あ、この曲いいじゃん!”って言ってくれる曲があると思うんですね。だから、細かった芯がどんどん太くなっているような印象があるというか…言葉にしてしまうと単純になってしまうんですけど、たくさんの出会いの中で強く、太くなった、吉田山田の芯をかたちにしたアルバムになっていると思います。
ライヴの絵が見えるアルバムでもあるだけに、4月からの47都道府県ツアーも楽しみですね。これがアコギ1本でどう再現されるのかも楽しみです。
吉田
アルバムを聴いてくれている人も多い中でのライヴなので、アコギ1本でも曲に込めた魂みたいなものは、そのままお届けしたいなと思ってます。これまでの7年間の中で培ったものがあるので、できる自信はあるから…それは音圧とか関係なく、ちゃんと伝わるはずと思ってます。
デビュー前後は年間250本ぐらいライヴをしていたとはいえ、結構な過密スケジュールですよね。
吉田
…ですよね。
山田
ワンマンでこの数は初めてだよね。ここにプラス、キャンペーンも入るわけだし…。
ここでツアーの意気込みを聞こうと思っていたんですけど、なんかどんよりしてるし(笑)。
吉田
やる気がないわけじゃないんですよ。やっぱり初めて行く場所になると“ほんとに人が来てくれるのかな?”っていう現実的な不安はある…でも、4日前くらいにみんなと食事会をした時、47都道府県を回る意味みたいなことを話し合ったんですね。このツアーは撒いた種を刈り取りに行くんじゃなくて、種を撒きに行くんだって。それに僕はしっくりときて、そういう意識になれたんです。だから、このツアーはこれからにつながっているし、そういうものにしていくんだって思ってます。
山田
ここで経験するひとつひとつのライヴによって、10周年の迎え方が変わってくるし、見える景色も変わってくると思うんですよ。ふたりだけでこの数を回るのって毎年できることではないし。先日、兵庫県の龍野市ってところに初めて行って、ライヴをやったんですけど、たくさんの人が来てくれたんですね。その3分の1くらいの人が僕たちの歌を生で聴いたことがないっていう人たちだったので、そこでの盛り上がりって新鮮なんですよ。“待ってました!”感っていうか、お初ライヴのエネルギーがあるんですよ。そういう意味では、今までの大きな会場では味わえない、新鮮な空気が味わえるんじゃないかなって。“大変だな”って思う反面、始まってしまえば楽しめると思ってます。あと、47県も回るんだから、歌とは別に何かしたいと思いますね。何かかたちに残るものを。今、考え中です。セットリストはエリアごとに変えるつもりだし、“今日、これ歌っちゃう?”って毎日変わると思うし。冒険だったり、挑戦ができるので、ひと皮剥けるチャンスかなとも思ってます。
8月の日比谷野音では、ひと皮剥けた吉田山田が見れると?
吉田
そうじゃなきゃダメでしょうね。でも、そこはツアーファイナルではないんですよ。『吉田山田祭り』という単独のイベントなんで、バンド形態でド派手にお祭りをやろうと。ツアーファイナルの東京の場所はもう少ししたら発表しようと思ってるんで、楽しみにしておいてほしいですね。
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