【Hilcrhyme】今作はラップアルバム
というよりも、俺の中で歌のアルバム
に近いんです
L→R DJ KATSU(DJ)、TOC(MC)
結成10周年の今年、記念ライヴとそのライヴの3D映画化、そしてアニバーサリーツアーと、節目の年に相応しく精力的に動いている彼らが、ついに新作『SIDE BY SIDE』を発表! まごうことなきHilcrhyme史上最高傑作が完成した!
取材:帆苅智之
L.A.に行ってなかったら、この発想は絶対に出てこなかった
ニューアルバム『SIDE BY SIDE』は、過去作との比較云々をはるかに超越したハイクオリティーな作品だと思いますし、Hilcrhyme自体のステージが2~3ランクアップしたような印象を受けました。ご本人たちにもそういった手応えはあるのではないでしょうか?
TOC
それはありますね。
DJ KATSU
“今までで一番いい”ってアルバムを出すたびに言っていたかもしれないんですけど、今回はガチで一番いいですね。
どうしてこんな大傑作が生まれたのかと考えると、やはりL.A.へ行ったことが大きいのでしょうか?
DJ KATSU
今年1月にL.A.に行ったんですけど、完全にそれがきっかけですね。向こうでラフトラックを7つくらい作ってきたんで、アルバムのほぼ半分はL.A.で作ってきた感じです。
TOC
それ以降は、これまでとは全然違う。音の仕組みが分かるというか、ちゃんと各楽器が絡み合っている印象があって。しかも、L.A.に行ってL.A.みたいになって帰ってきたら、意味ないと思うんですよ。“L.A.にあるものを吸収してるんだな”というオケができましたから。
本当に今回のトラックはカッコ良いものばかりだと思います。まず1曲目「VESPER」。高揚感はあるのですが、決してビートが忙しいわけでもなく、所謂南米系のリズムなのに、もろにその派手さはない。抑制の効いたトラックですよね。
DJ KATSU
これはまさにL.A.のトレンドで。トロピカルな4つ打ちだけど、テンポはゆっくり。いろいろ作った中で、ジャスティン(=ジャスティン・トラグマン。本作のプロデューサー)もこの「VESPER」のトラックを一番気に入っていて。向こうではサビでビートを抜くのが流行っていて、「VESPER」もサビのところはビートを抜いている…そのあとにビートが戻ってくるんですけど、そういったところは大分反映されていますね。L.A.に行ってなかったら、この発想は絶対に出てこなかったと思います。
DJ KATSUさんにとってL.A.での音楽体験は、階段を何段も飛ばしてかけ上がった感じですか?
DJ KATSU
まぁ、俺が飛ばして行ったというよりは、はるか先にいる人が降りてきてくれた…そんな感じですかね? 例えば、リバーブひとつでも音って劇的に変わるんですよ。ジャスティンが使っていたリバーブにしたら、すげぇ音作りが楽しくなって(笑)。それまで“プラグインのメーカーを変えても、そこまで大差はないだろう”という考え方だったんですけど、それがめちゃくちゃ甘かったことも分かったし。
「HINOTORI」もいいですね。シンセで壮大感を出そうとすると、電子音特有のエグみのようなものが出がちだと思うのですが、これはそうなっていない。恐縮ながら“Hilcrhymeはこういうこともできるのか!?”と思って聴かせてもらいました。
TOC
もともとそっちだもんね?
DJ KATSU
そうだね。DJとしての入口がハウスやテクノで、もともとピアノがちょっと弾けたから、MIDIでどんな電子楽器も鳴らせるし、とりあえずキーボードが弾ければ曲が作れるだろうって、曲作りの入口はシンセありきだったし。…俺も「HINOTORI」は結構気に入っていて。TOCが歌を入れる段階でちょっと速くしたいってテンポを変えたんですね。テンポを変えると結構懸念することがあるから、最初はどうかなと思ったんですけど、やってみたらめちゃくちゃ良くて。ちょうど気持ちの良いところにきたな、と。結果的にこのトラックは気に入ってますね。
個人的には「Side By Side」が今作のベストトラックではないかと思います。「VESPER」とは逆にビートが細かいのですが、だからって、楽曲全体が前のめりになっているわけではなく、むしろドシッとしている。ビートは速いんですが、楽曲全体は落ち着いた感じで、その融合が素晴らしいと思います。
TOC
「Side By Side」は、俺も今までで屈指のトラックだと思ってますね。DJ KATSUっぽいんだけど…今までより音が詰まっているけど、整理されていて、歌を入れやすかった。歌の入りづらさみたいなものがL.A.行ってから劇的に減ったんですよ。今まではそれで衝突することもあったんですけど、それが全然なくなった。
DJ KATSU
“L.A.でやってみないか?”という発案をもらっても、実際に行く前まではかなり半信半疑だったというか、どうなるかまったく予想もできずにL.A.へ行ったんですけど、結果的にはそれが大当たりしちゃったという感じですよね。
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