【Hilcrhyme】『Hilcrhyme 10th Ann
iversary TOUR 2016 BEST10』2016年
12月11日 at TOKYO DOME CITY HALL

取材:帆苅智之

 ニューアルバム制作のための渡米、19thシングル「パラレル・ワールド」の発売、ディファ有明でのスペシャルライヴと、その公演の3D映画化&ライヴ音源化、20thシングル「WARAE~In The Mood~」のリリース、そして7thアルバム『SIDE BY SIDE』の発表と、結成10周年という節目の年に相応しく、多忙を極めたHilcrhymeの2016年。『Hilcrhyme 10th Anniversary TOUR 2016 BEST10』は、その充実し切った年の締め括りとしてこの上ない全国ツアーであったし、フィナーレの東京公演でまさしく大団円を迎えたと言っていいだろう。

 会場を埋め尽くしたファンは3,000人。ザッと見渡したところ、20代が多いようではあったが、年配者や親子連れも散見でき、幅広い年齢層のリスナーがHilcrhymeの活動を支えてきたことが分かる。ほぼ定刻通り、ステージのバックの円形スクリーンに往年の人気歌番組“ザ・ベストテン”を模した画像と過去作のジャケが次々と映し出される。サイリウムが振られる場内、ひと際大きくなった歓声に包まれながら、メンバーのふたりが登場。1曲目は「トラヴェルマシン」。今回のセットリストは、ファンから募った“あなたが選ぶHilcrhymeの曲BEST10”の結果で構成されている。しかも、10位から1位までカウントダウン形式で披露していくというエンターテインメント性の高いスタイルだったが、アップチューンがオープニングで、それに続くのが「エール」「NewEra」だったというのは、このふたり、やはり何かを“持ってる”。もちろん10曲だけで本編を構成するわけもないので、“Ballad Mix”“Live Mix”というふたつのメドレーコーナーを用意して、ファン投票上位10曲以外から、文字通り前者はバラード、後者はライヴで映える曲をチョイス。それぞれ15分間の中で10曲をつないだ。何でもインディーズ時代、クラブに出ていた頃はよくこうしたスタイルを披露していたらしく、結成10周年のアニバサリーならではの原点回帰だったと言える。

 アリーナから1~3階のバルコニー席が設置された東京ドームシティホールは、ステージから見ると前と左右、視界の全てにオーディエンスがいるようだと聞く。全方向に注意を払いながらパフォーマンスを繰り広げるTOC(MC)の姿も印象的だった。「エール」「友よ」「想送歌」と、いつもに増してコール&レスポンスが多めだったのも、アニバーサリーイヤーのライヴならではと言ったところだろう。「春夏秋冬」「大丈夫」では場内は大合唱。ヒップホップアーティストの楽曲で、これだけ幅広い年齢層のオーディエンスが声を合わせることができるナンバーは、おそらく他にはない。それがHilcrhymeの最大の強みだと言える。「春夏秋冬」はファン以外にも浸透している、言わば“外向きな代表曲”。一方、「大丈夫」はファン投票で“ぶっちぎりの1位”だったというから、コアなファンにはなくてはならない楽曲と言える。その2曲が1、2フィニッシュというのは、Hilcrhymeの10周年の軌跡を端的に表していたとも言えまいか。

 アンコールでは、この公演の5日目に発売されたばかりのニューアルバム『SIDE BY SIDE』収録の新曲「クサイセリフ」「Side By Side」も披露。「クサイセリフ」では最前列の女性の頭部をTOCが抱えてその人に向かって歌い続けるという、かなり大胆なパフォーマンスを行なったのにはびっくりしたが、全国ツアーフィナーレのアンコールだからこそのスペシャル感ではあった(あの子、過呼吸とかにならなかったのかな?)。また、新譜を聴いた人なら分かると思うが、アルバムのタイトルチューン「Side By Side」のリリックは、Hilcrhymeとそのリスナー、オーディエンスとの関係性を綴ったもの。冒頭で“大団円”とは書いたが、もちろん、きれいにその円が閉じたわけではなく、しっかりとネクスト・ステージへとつながるナンバーを提示していたことは流石と言える。10年後、あるいは20年後に再びHilcrhymeの活動を振り返る時、結成10周年の2016年の活動が重要なポイントとして思い出されることは間違いない。その思いも強くさせられた今回の全国ツアーであった。

セットリスト

  1. トラヴェルマシン
  2. エール
  3. NewEra
  4. Your Smile
  5. Lost Love Song
  6. Hilcrhyme 10th Anniversary Ballad Mix
  7. 言えない言えない
  8. ~Shampoo
  9. ~Please Cry
  10. ~My Place
  11. ~雨天
  12. ~YUKIDOKE
  13. ~Changes
  14. ~光
  15. ~鼓動
  16. ~ツボミ
  17. 友よ
  18. 想送歌
  19. パラレル・ワールド
  20. Hilcrhyme 10th Anniversary Live Mix
  21. ルーズリーフ
  22. ~LAMPLIGHT
  23. ~臆病な狼
  24. ~押韻見聞録
  25. ~続・押韻見聞録 -未踏-
  26. ~ライジングサン
  27. ~ヒルクライマー
  28. ~East Area
  29. ~TOKYO CITY
  30. ~NOISE
  31. 春夏秋冬
  32. 大丈夫
  33. <ENCORE>
  34. WARAE ~In The Mood~
  35. クサイセリフ
  36. ソウサ
  37. Side By Side
  38. マイクリスマスキャロル
  39. らいおんハートRAP
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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