アニマルズ解散後、
エリック・バードンが挑んだ新境地
エリック・バードン&ウォー(Eric Burdon & War)のデビュー作『宣戦布告(原題:Eric Burdon Declares "War")』(’70年)である。
エリック・バードンと言えば、なんといっても彼を一躍有名にした60年代の英国R&Bバンドの筆頭格であるアニマルズ(The Animals)だろう。まともに考えればそこから一枚と思ったのだが、良いのが多くて絞り込めない。そこで、ついでに聴いたエリック・バードン&ウォー名義のアルバムを聴いてみたら、内容が今日的で、初めてエリック・バードンを聴くという方にも受け入れられやすいのではないかと思い、選んでみることにした。
白人R&Bシンガーを
代表する存在だったエリック・バードン
62年、大学のクラスメートだったジョン・スティール(Ds)の紹介でアラン・プライス(Org,Pt)と出会い、アニマルズを結成。ラインナップはスティール、プライス、バードンの他にヒルトン・ヴァレンタイン(Gu)、チャス・チャンドラー(Ba)を加えたラインナップ。チャンドラーは後にジミ・ヘンドリックスのマネージャーを務める人物として有名である。明らかにジェームス・ブラウンを始めとしたソウル・シンガーに影響を受けたと思われる熱烈なバードンのヴォーカルをフロントに据え、ジャズ、ブルースバンド出身者からなる腕達者なバンドは、ほぼ同時期にデビューしたローリング・ストーンズやザ・フー、キンクスらより遥かに黒っぽいサウンドを打ち出し、英国で最も突出した電化R&Bバンドのひとつとして評価された。英米のヒット・チャートでNo.1に輝いた「朝日のあたる家(原題:The House of the Rising Sun)」をはじめ、「悲しき願い(原題:Don’t Let Me Be Misunderstood)」(英3位 / 米15位、オリジナルはニーナ・シモン)、「朝日のない街(原題:We gotta get outta this place)」(英2位 / 米13位)、「悲しき叫び(原題:Bring It On Home to Me)」(英7位 / 米32位、オリジナルはサム・クック)と立て続けに世界的ヒットを放った。アメリカ民謡の「朝日のあたる家」はディランより先に取り上げており、彼にエレクトリック化のヒントを与えたとも言われている。ディランとの関連で言えば1965年のディランの渡英時にはアニマルズを脱退したアラン・プライスが側近のひとりとしてツアーに同行している。
日本の耳ざとい若者へのアニマルズの影響も大きく、ロカビリー・ブームに湧くバンドはプロからアマまでこぞって彼らのコピーにはげんでいたという話もある。上記のヒット曲の多くが動画で残っているので、年若いエリック・バードンの異様に黒っぽいヴォーカルを再確認できるだろう。彼を聴いた後ではR&Bシンガーとしてのミック・ジャガーはそれほどでもない風に聴こえるかもしれない。カリスマ性は別として。ただ、アニマルズは65年に一旦解散、翌年に活動拠点を米西海岸に移して再結成するが、69年頃には再び解散している。その間にはトラブルまみれの来日公演(’68)があるのだが、その際のギタリストは後にポリスのメンバーになるアンディ・サマーズだったりする。
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ウォーとの出会いアーティスト
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