【ネクライトーキー
ライヴレポート】
『オーキートーキー!vol.5』
2022年12月8日
at 渋谷CLUB QUATTRO
2022年12月8日 at 渋谷CLUB QUATTRO
『オーキートーキー』は彼ら恒例の対バンライヴイベントで、第5弾の今回は11月から全国5都市で開催。愛知ではWienners、大阪ではオメでたい頭でなにより、福岡では板歯目、北海道では突然少年をゲストに招き、各地で熱演を繰り広げてきたが、これでもかというほどにパンパンの観客が詰めかけた渋谷CLUB QUATTROでHump Backとともに行なった東京公演は、ネクライトーキーのメンバーにとってとりわけ思い出深い夜となったに違いない。
■ Hump Back ■
場内の歓迎ぶりに驚きつつ、ぴかが“ネクライトーキーがHump Backを『オーキートーキー』のファイナルに選んでくれました!”と感謝を伝えると、林も“それがどれだけすごいことかっていうのは知ってる”と返し、“来る時に新幹線に乗ってたらバリ虹出とってさ。みんなに見せてあげたかったけど、無理やん? でも、今日のウチらの衣装、世界中の色を集めてきたみたいになってるんで、いいことあると思います!”と宣言。
続いては、最新EP『AGE OF LOVE』から歌詞のとおり《ご機嫌》《いい感じ》なムードが加速した「犬猫人間」。対バンゲストであるにもかかわらず、もはやホームのような、ワンマンライヴのような空気が生まれており、インディーズ時代のアルバム曲「チープマンデー」のイントロでも嬉しそうに拳が上がる。よくよく考えてみれば、それもそのはず。Hump Backとネクライトーキーは、ヴォーカルの林萌々子ともっさがどちらもチャットモンチーの影響を強く受けているバンドなので、ファンが重なり、共鳴し合うのは自然の成り行きなのだ。
そう思っていた矢先、“私ともっさちゃんは同じバンドがすごく好きでね。こうして競演できるのは奇跡みたいなことやなと感じてます”と林が話し、約4分にわたる即興の弾き語りを披露。
この対バンならではのマジックが生まれ、夢中の最強さを落とし込んだような「番狂わせ」へとパワフルにつないだ。林の真っ直ぐで凛としたメッセージと骨のある3ピースサウンドに乗せて会場の一体感はさらに増し、ステージに明るい光があふれた「ティーンエイジサンセット」からの《光になるのさ》と歌う「クジラ」への流れもドラマチックでしかない。
“バンドを始めてからいろいろ試したり間違えたりしてきたけど、やっぱりやりたいことをやるって最高やなと思います!”(林)
終始痛快なパフォーマンスで圧倒したHump Backは、彼女たちの美しい人間性や支持される所以が顕著に表れた「きれいなもの」「星丘公園」を最後に語りかけるように聴かせ、見事ツアーファイナルの対バンを務め上げた。
■ ネクライトーキー ■
愛と感謝を込めたHump Backのカバー「LILLY」までが立て続けに披露され、すでにポジティブなエナジーが渦巻く渋谷CLUB QUATTRO。ネクライトーキーのメンバーも“Hump Back、とんでもねぇライヴをしてくれてありがとうございます!”(もっさ)、“あまりにも良すぎるバンドを呼ぶのもちょっと考えものやな。もっさが泣いちゃうんで(笑)”(藤田)、“Wienners、オメでた、板歯目、突然少年とやってきて、今日を迎えてますけど、それぞれの場所でそれぞれのバンドに言い表せないものをもらって、本当に幸せなツアーだったなと思います”(朝日)と、最初のMCで興奮気味に話す。
橋本絵莉子のアルバム『日記を燃やして』のTシャツを着たもっさは、“全員いいバンドすぎて、もらったものがいっぱいありすぎて…みんなの前で泣きたくないよー!”と感極まりまくった様子だが、涙を振りきってなんとか演奏を再開。鮮やかな拳のコール&レスポンスがビフォーコロナのライヴを思い出させた「許せ!服部」、タイトルそのままの音使いが映える「八番街ピコピコ通り」といったアップナンバーに加え、水色のシックな照明とファンクな横ノリで踊らせた「深夜の街にて」、もっさのアカペラを含むスケールの大きいバラード「ゆうな」と、中盤はより幅広いアプローチで魅了してくれた。
“うまくしゃべれへんけど、バンドはすごいぞ! わけの分からん力をもらえるしさ、ほんまにたくさん勘違いしてきて私も。(Hump Backのメッセージが)めっちゃ分かると思った。そういう力をもらえんのよ。強くありたいのに、こんなんでごめんな! 私もカッコ良いバンドになりたかった(泣笑)。今日泣いたこと、絶対に誰にも言わんといてなっ!”(もっさ)
ずっと落ち着かない様子で泣きっぱなしのもっさに、藤田からタオルが手渡され、観客からも温かい拍手が贈られる。ライヴは後半に突入し、8ビートの爽快なギターロックで駆ける未発表となる新曲以降は、もっさと朝日のツインギターソロが決まったシングル曲「ふざけてないぜ」、オーケストラヒットに併せてオーディエンスが拳を突き上げたキラーチューン「オシャレ大作戦」と畳みかけ、場内が最高潮にヒートアップ。パンキッシュな音塊がドカシャカと横溢する「遠吠えのサンセット」で本編を高揚感たっぷりに締め括った。
アンコールでは藤田ともっさのツインヴォーカルで聴かせる「君はいなせなガール」、Hump Backの選曲に合わせるように「ティーンエイジ・ネクラポップ」を投下。さらにダブルアンコールにも応え、最後は渾身の「明日にだって」で、喜びのあまり涙声で歌うもっさをはじめ、全てを出しきったネクライトーキー。
“コロナ禍になってからは対バン相手とゆっくり話すような機会が激減していたんですけど、久しぶりにそういう楽しさを味わえました。何かをもらうライヴってすごくありがたいものだったんだなと改めて感じられて嬉しかったです”と語る朝日の言葉が印象深かったし、彼女たちを導いたチャットモンチーにまで感謝したくなる、バンドのロマンが詰まった最高のイベントだった。強気な歌と演奏でパワーをくれるHump Backも、ちょっと弱気でもやれるんだと思わせてくれるネクライトーキーも、どちらも魅力的で素晴らしい。
なお、ネクライトーキーは来年4月に新たな東名阪ツアー『ゴーゴートーキーズ!番外編 ~泣いても笑ってもアンケート順に演奏ツアー~』が決定。ファンからのリクエストを募ってランキングを作成、その順番どおりに披露していくというスペシャルなライヴとなる。
撮影:垂水佳菜/取材:田山雄士
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