ひろゆきの児童書:ロマン優光連載2
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西村博之
「子どもたちが、物事をちゃんと勉強したりせずに、屁理屈と論点ずらしとあげあし取りで相手を黙らして勝った気になることを推奨しているような内容だったらどうしよう」と心配している人もいるでしょうが、自分は内容自体はわりと無難な感じにまとまっているのではないかと思っています。社内で監修も入るだろうし。しかし、西村氏の児童書を出版することの一番の問題は内容自体がどうこうというところにはないのではないでしょうか?
水野氏は、村上ファンド事件で知られる村上世彰氏監修のお金に関する児童向けの本も担当しています。まあ、これも当然批判されています。
氏のnoteの記事を読んでみると、編集業とビジネス、漫画の未来などについて意識の高そうだけど深い思索があるようには思えない記事が並んでいます。その時々の流行りものに反応しているだけで、掘り下げがない感じも強いです。『鬼滅の刃』がなぜ売れたかの分析について書かれた文章が、その「何か言ってるようで何も言ってない感」の代表作ではないでしょうか。時代の流れに敏感なのは編集者としての美点ではありますが、あまり深い考えがなさそうに見えるのは良いこととは思えません。
また、小学舘から出た竹宮恵子先生の『少年の名はジルベール』を読んだ感想として、自身のTwitterアカウントで21年7月25日に「『大泉サロン』を舞台にしたドラマや映画が観てみたい!(既に企画は進行しているはず…。)」と発言しているのですが、この時期は萩尾望都先生が『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)をだし、その内容が話題になった直後なわけです。萩尾先生が「大泉サロン」についてどのような想いを抱いているか、それについていかに触れられたくないかについて重い胸のうちを語っているわけで、ドラマ化などはありえないこともはっきりわかる内容です。そういう萩尾先生の想いは大きな反響を呼びましたし、プロ、アマ問わず多くの人がそこに言及した書評や感想をあげています。また、両作品を並べて取り上げていた人も多いです。それなのに、こんな呑気すぎる発言をしていることに「萩尾先生どころか、竹宮先生にも本当は関心がないのかもしれない…」と心配になってしまいます。漫画関連の編集者としてアンテナが鈍すぎるし、うかつすぎるのではないでしょうか?
炎上ビジネスと水野氏をを批判している人もいますが、実は狙ってやっているわけではなく、素直に良いものだと思ってやっているような気がします。 西村氏や村上氏の起用に関しても、炎上狙いとかではなく、本当に価値がある作品をつくろうとしていたのかもしれません。 一見、インフルエンサーを指向しているようにも見える彼ですが、そういう人にみられるようなガツガツした力強さはないんですよね。「12歳の文学賞」といった彼の過去の仕事をみても話題性を重視しているふしはありますが、なりふりかまわない感じでもない。若干目立ちたがりだったり、流行りに弱かったり、発言が軽率であるといった軽薄さは感じられますが、何が何でものしあがろう、儲けようといった気概は感じられないんですよ。インフルエンサーというものが何なのか理解して自分もそうなろうとしている人というより、インフルエンサーの気が利いてる感じの発言を真に受けて感心してしまうタイプ。インフルエンサーというよりは、インフルエンサーのお得意様タイプなのではないでしょうか。
Twitterアイコンが西原理恵子先生の絵であることからうかがえるように編集者として西原作品に登場していたり、サイバラ酒場という期間限定のコラボ居酒屋を企画した人でもあります。言われてみたら、ある意味で西原先生と相性がよさそうな人ですよね。その縁から、高須克弥氏が子ども向けの選挙の本とか歴史の本を出してしまうようなことがあったらどうしよう…。
こういった人物を公的事業のアドバイザーとして起用したり、メディアが肯定的にエンターテイメントの場に登場させるのはさすがにどうかと思うのですが、児童書での起用も同じ問題があると思います。そういえば、西村氏がメディアで旧統一協会を批判していた時に、彼に批判的だったリベラル・左翼系・人権意識の高い人たちの中にも彼を褒め称えるような言動を見せる人もいたのですが、それもどうかと思いました。彼は勝ち馬に乗るのが得意な人であり、旧統一協会のときはそっちが勝つだろうという判断で動いていたということなのだと思います。案の定、沖縄の辺野古基地のロケでそういう人たちを激怒させるような言動をとるわけですが、そういうことが起こるのなんてわかってた話じゃないですか。自分に都合がいいからといって、普段どういう発言している人かを考慮せずにもてはやすのは無思慮なことだと思います。
児童を対象とする本の場合は内容だけでなく、出版されることで生じる可能性がある問題についても、慎重に考えるべきなのではないかと思いますし、それは表現の自由を侵すとかそういう話とは、また別の話だと思います。
雨宮純 ✕ロマン優光
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既刊『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
https://wp.me/p95UoP-3N (コピペして検索窓に)
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