【LACCO TOWER インタビュー】
このバンドで
追い求めてきたものって、
生きていくための術だった
L→R 真一ジェット(Key)、細川大介(Gu)、松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(Ba)、重田雅俊(Dr)
結成20周年を迎えたLACCO TOWERがオールタイムベストアルバム『絶好』を完成させた。インディーズ時代の楽曲から24曲(再録3曲含む)、メジャー時代の楽曲から26曲(新曲3曲含む)、総じて全50曲を収録した4枚組の壮大な作品だ。バンドを代表して松川ケイスケ(Vo)と細川大介(Gu)に同作について訊いた。
少しずつ成長しているけれど、
LACCO TOWERらしさは残っている
ものすごいボリュームの作品になりましたね。
細川
“オールタイムベスト”と掲げたベストアルバムを作ろうっていうところがスタートだったんです。2021年3月に出した『闇夜に烏、雪に鷺』はベストアルバムと言えなくもない内容だったとは思うんですけど、あれは過去の楽曲を白盤と黒盤に分けて、僕たちの楽曲のカラーをパッケージしたものなので。今回は歴史をパッケージするということで、20年間を表現しようとしたら曲数が多くなったという。
リリースを機にバンドの20年間を振り返ってみていかがでしたか?
松川
振り返る作業を、今までそんなにしてこなかったんです。でも、20年やっていると時代もすごく変わったというか。最近だとコロナとか、その前も同世代のバンドがなかなかいなかったりとか。僕らがライヴを始めた頃はライヴハウスも元気で、先輩方がライヴハウスで精力的に活動していて、いろんなムーブメントもあったけど、僕らは結果的にそことは違う活動をしてきたから、目の前にあることをやり続けてきた感覚なんです。なので、ようやくここにきて、このアルバムを出すとともに振り返り中みたいな感じですね。
細川さんはいかがでしょうか? 途中加入なので、また違った想いがありそうですが。
細川
5年前だと、やっぱりあとから入ったコンプレックスから“俺は最初からいないからな”という想いもあったんですけど、僕は3代目で、1代目が5年、2代目が5年務めていて、僕は倍の10年務めたっていう想いが、やっと生まれてきたっていうか。ふたりのギターもたくさん聴いてきて、やっと肩を並べられるようになった感じなんですね。どこかしら、LACCO TOWERに僕が連れてきてもらった感覚だったので、21年目からは僕がLACCO TOWERを連れていきたい気持ちがあります。
では、おふたりとも今作を聴いて、改めてLACCO TOWERをどんなバンドだと思いましたか?
松川
自分の成長日記を見ているような感覚もありましたし、このメンバーだからこそ作れた音楽かなという気もします。良くも悪くも他にはいないバンドだなって。○○っぽいとか言われることもなかったですし。それが自信になったというか。アルバムを聴いても、これで良かったって改めて思いますね。
細川
すごい人間臭いバンドだとは感じていて。初期と今とでは曲調がかなり違うじゃないですか。“俺たちはこういう音楽でやっていくんだ”って最初から決めているバンドもいると思うんですけど、LACCO TOWERはその時々で常にチャレンジしてきたっていうか。“俺たちはもっと上に行けるんだ! もっといい音楽を作れるんだ!”って、その時期でもがき苦しみながら曲を作ってきたことが、聴きながら分かってしまう。本当に子供の成長を見ているような感覚ですね。少しずつ成長しているけれど、ずっと目は同じっていうか、LACCO TOWERらしさは残っている。
まさに子供の写真を選りすぐって一冊のアルバムにするのって悩むんですけど、『絶好』も選曲には悩んだんじゃないんですか?
松川
今のLACCO TOWERの音楽の世界観は大介と真一がメインで作っているので、基本はふたりに任せました。僕らは何かに対して、一番想いのある人がやるべきだと考えているので。もちろんアイデアを出してもらったら、みんなで話し合うんですけど。そこはオールタイムベストだからって特別にすることはなく、いつもどおりにふたりがやるかたちでした。
こういった適材適所で分担する方向性は、LACCO TOWERのインタビューではたびたび聞く話ですが、それも20年やってきて信頼感が生まれたからできることですよね。
松川
もちろん意見を戦わせて良くなることもすごくたくさんあるし、その先にある結果が不安だから、みんな喧々諤々するわけじゃないですか。でも、自分の意見を押し通すのと、自分の意見をみんなの意見に混ぜるのは全然違っていて。信頼と実績がないとなかなか難しいことですけど。
細川さん、今作の選曲のポイントをうかがえますか?
細川
最近のアルバムの作り方なんですけど、今回なら僕が4枚組のベースのかたちを作らせてもらって、それを真一に提示して、そこから変えていきました。今回は歴史にフォーカスするということで、Disc.1、Disc.2はメジャー盤の楽曲、Disc.3、Disc.4はインディーズ盤の楽曲を収録するというのは決めていて。その歴史の都度都度で僕たちの道を示してくれた曲たちを選びました。だから、リード曲やタイトルトラックが多くなったんですよね。あとは、アルバムのバランスもすごく考えました。一枚のアルバムからたくさん曲を選ぶとかはやめようと。
インディーズ時代の楽曲からは「藍染」「斜陽」「後夜」「未来」を再レコーディングしていますが、この4曲を選んだ理由というのは?
細川
実はちょっと前にレコーディングしている曲もあって、「斜陽」はインディーズ時代の曲を僕が入ってからのアレンジで録り直そうっていうアイデアがあったんです。でも、インディーズ時代に権利問題がめちゃくちゃになっていて、再レコーディングしたいんだけどできない状況もあり、権利がはっきりしていてレコーディングできるも曲の中から、僕たちが好きなものを選んだんです。
アーティストとしての欲求、プラス大人の事情というか…。
松川
そうです! 綺麗事だけではできないですからね(笑)。でも、それが僕らっぽいと思います。僕らはバンドの運営を自分たちでやっているので、泥臭いことのほうが多いし、そういうことも正直に話すっていう。そんな中でも“これで良かった”と思えるものになりました。
細川
フォローありがとうございます! すぐ言っちゃうんで、本当のことを(笑)。
おふたりが先ほど言っていたバンドの人間臭さは、そういう正直さにも出ていると思いますよ。
松川
そう言っていただけるとありがたいです(笑)。
再レコーディングした「後夜」「未来」がつながっていたり、曲順にもこだわりを感じました。
細川
曲順は相当やり合いましたね(笑)。ただパッケージするだけだと、今の時代ってサブスクでいいじゃないですか。みんな自分の好きなようにプレイリストが作れる。でも、“僕らの歴史を感じてもらうならこうだ”と一番言えるのって曲順だから。そういう意味では「後夜」「未来」がつながっているのも、「未来後夜」(2009年5月発表のシングルで「後夜」「未来」を収録)っていう作品を出していたりもするので意味があって。いろいろ含めながら曲順は決めたから“こういうことなんだ!?”と思ってもらえると嬉しいですね。
こういうアルバムを聴くと曲順も含めて表現なんだと改めて思います。
細川
自分だけのプレイリストを作るのも、その人の物語を作るという意味ではすごくいいと思うんですけど、“本人たちが作ってみたらどうなんだ?”というところは示しておきたいなって。
アーティスト
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