【angela インタビュー】
一曲聴くだけでいろんな世界観を
味わうことのできる曲が作りたかった

L→R KATSU(Key&Gu)、atsuko(Vo)

angela初の2カ月連続デジタルリリースは、デビュー記念日にファンへと贈られた切ないラヴソング「Alone」に、一曲で世界中を旅できるハッピーチューン「アロハTraveling」。ノンタイアップという自由度を活かしたギャップ満点の2曲からは、デビュー20周年を来年に控えた今だからこその原点回帰と、ベテランならではのバリエーションの双方が味わえる。国内ツアーとしては実に4年半振りとなるツアーで、ふたりと楽しい“旅”へと出かけてほしい。

“アニソン屋が作るJ-POP”を
20周年を目前にやってみたかった

2カ月連続で配信されるというのに、この2曲はちょっと高低差がありすぎじゃありません!?

KATSU

7月配信の「Alone」を聴いて“angelaいいな”ってなった人が、次に「アロハTraveling」を聴いたら“ええっ!?”ってなりますよね(笑)。だから、アニソン業界一ファンになりづらいユニットっていうのは、もう自負してるんですよ。ラーメン屋さんに入ったはずなのにカレーが出てきた!…みたいな。そうやって違うものを作り続けていくのはangelaの良いところであり、悪いところでもあるんですよね。

atsuko

まぁ、“あまり計画性がなかった結果”というのが正直なところで。「Alone」に関して言うと、5月21日のデビュー記念日に神戸でファンクラブツアーのライヴがあったので、せっかくだから新曲を発表したいっていうところから始まったんです。で、私、一年くらい前からアコギを始めていたので、いつもはピアノで曲を作っているけれど、今回はアコギで曲を作ってみようと。KATSUさんとふたりでアコギを抱えて、歌いながらコードを探していくという、今までとは違った作業を経て出来上がったのが、この「Alone」なんです。

せっかくデビュー記念日にファンの前に立てるんだから新曲を作ろうというのは分かります。ただ、なぜそこでどバラードな失恋ソングが出てきたんでしょう?

atsuko

普通は“みんながいてくれたから今の私たちがあるんだよ、ありがとね!”みたいなものになりますよね?

KATSU

なんでならなかったんだろう?

atsuko

メロディーを先に作っちゃったので、このメロディー感は恋愛系の寂しい、悲しいものがいいってことになったんです。ただ、私、恋愛の曲を書くのがすっごく苦手なんですよ! バトルとか異世界転生とかのほうが書きやすいんで、恋愛曲の感覚を取り戻さなきゃいけないっていう自分への試練も含めて失恋の曲になったところはありますね。どうやったら切ない感じが出るのか全然分からなくて、百回くらい書き直しました!

曲を作っている段階で歌詞も一緒に降ってきた…なんてことはなかったんですか?

atsuko

KATSUさんから、サビの頭は“こわれ”がいいんじゃないかって話はありました。なぜ“こわれ”が出てきたのかは、ご本人の口からどうぞ!

KATSU

僕、響き重視なんですよね。確かにアニソンの文化では、いかに作品に寄り添うかという意味でも歌詞が重要なんですけど、あえて響きを重視して聴かせる、いわゆるJ-POPの文化というか。サビの語末も最初は“独りぼっちなんだよ”だったところ、そこは“Alone”にしたらいいんじゃないかっていうアイディアを出して、《独りぼっちなんだ Alone》にしてもらいました。

atsuko

最初は“Alone”が別の場所にあったんだよね。基本的に作詞は私の名義になっているとはいえ、そうやってKATSUさんからの提案がたまにあるんですよ。もちろん歌詞の内容的にかけ離れてしまう時は“ごめんね”って断りますけど、今回は大丈夫だったので、サビの頭も《壊れた心》になりました。一番音が高くなるところにあ段の音がくるとパーン!と開けるっていうのは私も分かるんですよね。

実際、サビ始まりで《壊れた心》と始まった時、音と言葉が一体となってスッと入ってくる感覚があって、すごくインパクトがありました。

atsuko

やったじゃん!

ええ。とてもメロディアスで、こう言うと語弊があるかもしれませんが、純粋にいい曲だなと。

KATSU

あぁ、良かった! 今のangelaは“アニソン屋さん”というイメージを持たれることが多いですけど、そもそもデビュー前はここまで深くアニソンにかかわるようになるとは思ってもいなかったですし、来年の20周年を目前にして、ここで“アニソン屋が作るJ-POP”というものをやってみたかったんです。個人的なテーマにしていたのが、路上ライヴで聴きたい音楽…もっと踏み込んだ言い方をすると、路上ライヴで人が止まる音楽ということで。それこそデビュー前はCDが売れること、ライヴでお客さんがいっぱいになることじゃなく、路上ライヴで目の前を行く人の足をいかに止めるかということばかり考えて、曲を作っていた時代があったんですよね。なので、もう一回その頃の気持ちを思い出して、路上でふと耳にした時に“ちょっと聴いてみよう”って立ち止まってもらえる曲にしたいっていうのが、僕個人の目標だったんです。

いや、見事に成功していますよ。ちなみに《壊れた心》から始まった歌詞では、どんなストーリーが繰り広げられているんでしょう?

atsuko

ざっくり言うと、一緒に住んでいた男女がすれ違いを繰り返し、ついに女性のほうが出ていってしまったというストーリーですね。最初は小さかった溝が日々の積み重ねで崖のようになって、別れに至る。終わってしまう恋愛って、そんな気がするんですよ。最後の一手は大したことじゃないんだけど、積もりに積もったものが耐えられなくて別れちゃうみたいな。(KATSUに向かって)どうですか?

KATSU

いや、もう、人生経験豊富な人はさすがだなと。

そんな別れの歌をデビュー記念日に初披露してファンの反応はいかがでした?

atsuko

私、この曲をギター弾きながら歌ったんですよ。なので、歌の内容よりも“atsukoさん、人前でギター弾けるくらい頑張ったんだな”って方向に、みんな気持ちが行ってたんじゃないかな?

KATSU

あとは、ファンクラブのライヴだったんで、いつもangelaを応援してくれている人たちはこれくらいじゃ動揺しない(笑)。それを分かっていたから、あえてファンクラブでやったっていうのもあるんです。

atsuko

ある種のギャップですよね。我々的には原点に戻った感じもありつつ、これまでアニソンとして出してきたものとのギャップも楽しんでもらいたいというか。こういう普通の…って言うとおかしいですけど、特に突拍子ないことをしてるわけでなくてもインパクトのある曲を書けるっていう。

アーティスト