黒夢が東京公演で魅せた、出し惜しみ
のないライヴ!
8月1日@赤坂BLITZ
名古屋公演の際と同様に、場内は開演定刻に暗転。オープニングSEの「ZERO」が聴こえ始めてから、四度にも及ぶアンコールに応えきった彼らがステージを去るまでには、実に3時間15分ほどが経過していた。名古屋での全27曲という演奏曲数を超え、ことにアンコール時には新旧のファンが「まさか!」という声をあげそうな楽曲たちも惜しみなく披露。以前から清春は「大きな会場では一般層の要求も意識しながら。コアなファンが集まる場ではそうしたファンしか知らないような曲も」といった発言をしているが、この夜の公演はまさにその双方を満たしていたと言えるのではないだろうか。
このツアーは、8月8日には新潟で三番目の夜を迎え、その先も各地を巡演しながら、10月30日の東京・新木場STUDIO COAST公演まで続いていく。さらに12月からはこのツアーの“VOL.2”が『毒と華』というタイトルを掲げながら始まり、2015年2月9日まで継続されることになっている。そうした事実からすれば、この“最後のロング・ツアー”が幕を閉じるのはまだまだ先のことのようにも感じられるが、忘れてはならないのは、ひとつひとつのライヴはその日に最期を迎える、ということだろう。もちろんそれは他のアーティストの公演についても同じことではある。が、現在の黒夢は、同じことを何年続けられるかを見据えるのではなく、“今しかできないこと”をその都度徹底的に実践しながら、また新しい在り方を求めようとしているのではないだろうか。その違いは、実は小さくないものであるように思われる。
ツアー初日の清春はステージ上から「初日だけどファイナルみたいな感じで!」と観衆に呼びかけていたが、この夜も、赤坂BLITZでのライヴが最後になる可能性を示唆しながら、「ラスト50本」という言葉を口にしていた。実際、50公演にも及ぶツアーを実践するアーティストはきわめて少ない。しかし彼に言わせれば「僕らの感覚にしたら(50本ぐらい)すぐに終わっちゃうんで」ということであるようだ。
「すごくいい1日が今日も終わるね。参加してくれた人が、すごく有意義だと思ってくれたなら、やった甲斐がある」
終演間際、清春はオーディエンスにそう告げ、客席からはそれに応えるように温かい拍手が聞こえてきた。これからこのツアーは、誰もまだ見たことのない場面をいくつも迎えることになる。が、それらはすべて、二度と目にすることのない光景でもある。当然ながら可能な限り各地での公演の模様もお伝えしたいところではあるが、出来ることならば誰かの目撃情報の到着を待つのではなく、あなた自身の目でひとつでも多くの場面を目にして欲しい。そして、まだ黒夢に触れたことのない人たちにも、この限りある機会を逸して欲しくないものである。
TEXT:増田勇一 PHOTO:宮脇進
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