【THE MODS ライヴレポート】
『40TH ANNIVERSARY
LIVE ENCORE「続・約束の夜」』
2022年7月9日 at 日比谷野外大音楽堂
2022年7月9日 at 日比谷野外大音楽堂
昨年の『THE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE「約束の夜」』に引き続き、そのアンコールツアーとなった今回も、この日比谷野外大音楽堂を含む全6公演が全てソールドアウトした。まず、これは称えるべきことだし、素直に祝福したい。コロナ禍において、音楽に限らず、多くのエンタテインメントがその活動に難儀していることは言うまでもなかろう。ここ2~3年、満足な活動ができないままに活動休止、解散となったアーティストやバンドは、自分が知るだけでもひとつやふたつじゃない。活動に窮しているのはキャリアの浅い人たちが多いものの、停滞を嘆くベテランも少なくない。そんな中、全国にいるファンがアニバーサリーを祝うために集い、件のようなドレスコードをわきまえた人たちが会場を埋め尽くすというのは、快挙と呼ぶのは大袈裟だが、状況を考えればそれに近いものだと思う。“Here is THE MODS. Rock is not dead. R&R never die.”、このアンコールツアー自体がそれを高らかに示す格好となった。
温暖化によるものと言われる気候変動。未知のウイルスによるパンデミック。大国による侵略戦争。加えて言うならば、前日には、この日本で元首相が凶弾に倒れるという前代未聞のテロ事件が起こった。THE MODSがメジャーデビューした1981年に、40年後の未来がよもやこんなふうになっていようとは誰が想像しただろう。そんな状況を嘆き悲しみ、そして、改めて警鐘を鳴らすかのようなセットリストは、さすがにTHE MODSであり、さすがに森山達也(Vo&Gu)である。オープニングから「S・O・S(SONG FOR ONLY ONE EARTH)」。続いて「F.T.W.“Fuck The World”」、さらに「MAYDAY MAYDAY」~「Story」と畳みかけた。
《血に塗られた 人と人 どれぐらい 傷を受ければ 気づく》《S・O・Sが聞こえる 地球が崩れ出してる》(「S・O・S(SONG FOR ONLY ONE EARTH)」)。
《NO! Hate & War NO! Bombshell/NO! Kill & Murder NO! Ground Zero》《歪んだ世界の真ん中で ロックしてやるぜ》(「F.T.W.“Fuck The World”」)。
《口だけのボスがシケた名声のために/名も無き声達を殺す》《メーデー! メーデー!》(「MAYDAY MAYDAY」)。
《疵痕が語る あの叫びも/焼け焦げた あの日の写真も/To the sand/To the rain/To the ground 土へと還る》《俺達は見つめるだけ Time goes by 愚かな動物(いきもの)/流された血と涙 Day after day いつか知るだろう》(「Story」)。
これらの楽曲の間にはMCタイムもあったが、そこで森山は楽曲を説明するようなことはしなかった。楽曲を聴けば十分。これまでTHE MODSを聴いてきた者に皆まで語る必要はない。そういうことであろう。THE MODSはコメンテーターでもアジテーターでもなく、アーティストでありロックンローラーである。そんな当たり前のことを教えられたような気がした。
以降は、ソリッドなロックチューン、ダンサブルなナンバー、メロウなバラードとバラエティー豊かな楽曲を披露。歌詞はボーイ・ミーツ・ガールもあれば、フラストレーションを露わにしたものもあれば、自らの活動スタンスを託したような内容もある。30作を超えるオリジナルアルバムをリリースしてきたキャリアは伊達じゃない。社会性を帯びた内容もTHE MODSの魅力ではあるが、そればかりではないことがその魅力をいっそう確かなものにしている。加えて言えば、サウンドはギター、ベース、ドラムの3ピースで構成されたアンサンブルを基調としたものであって、そこにヴォーカル&ギターが乗るというミニマムなスタイル。古今東西のロックバンドの大半がこのかたちであろうし、それが当たり前すぎて、そのこと自体に何の感慨も抱いてこなかったが、そのロックバンドの枠を堅持しながら、バラエティー豊かな楽曲を創作し演奏してきたこともまた称えられるべきことではないかと、今さらながらに思う。苣木寛之(Gu)の歌う「BOOGIE BOMB」や北里晃一(Ba)の歌う「JOHNNY COME BACK」もそうだし、それこそこの日に開催が発表された『THE MODS Premium Acoustic Tour 2022 “DRIVE WAY JIVE”』のようなアコースティック形式でのライヴもそのバリエーションの発露であろう。THE MODS 40周年をひと口で語るのも恐縮ではあるが、創意と工夫──そこに真摯に打ち込んできたバンドであることを改めて知らされたような気がする。
ライヴの内容はここまで記したとおり、バラエティー豊かな内容の中にもTHE MODSらしいメッセージ性を湛えた、アニバーサリーのアンコールツアーに相応しいものであった。それは間違いないが、最後にひとつ、あえて苦言めいたものを記しておく。今回も“本ツアーの全公演は、厚生労働省のイベント開催に関するガイドラインに基づき、『大声での歓声や声援がない公演』として、各地規制された収容人数の範囲内で実施いたします”と事前に告知されていた。最初のMCでも森山はそのことに触れていたし、そうは言ってもロックコンサートなので少し声が出るのは仕方がないとしながらも、“初日の大阪ではいっぱい声を出す連中がいて軽くお説教もした”と言いながら注意を喚起していた。しかしながら、本編中盤以降、一部に明らかに声を張り上げる観客がいた。アルコールも進んでいたのだろう。ファンにとってはいわゆる“晴れの場”であるので、大人であれば多少のお神酒が入るのも仕方がない。だが、大人であればこそ、節度は守らなければならなかったと思う。酒量もルールも…だ。その一部の客に対しては森山が直接お説教していたが、その後も、それほど多くはなかったけれど、歓声を上げる観客は一定数いた。野音であるからして、事前のセットリストにはなかったものの、最後の最後には、おそらく「TWO PUNKS」を演奏するプランもメンバーの頭の中あったはず。それを期待するファンも多かったに違いない。それがその一部の人のせいで実現できなかった…というのは筆者の勝手な想像で、そもそも端から演奏するつもりはなかったのかもしれない。ロックコンサートは本来好きに楽しむものだし、大声で歌えないという今の状況のほうが異常であることは疑うまでもない。また、事前に注意されてもルールを守れないファンは、40年経っても“不良少年”のままなのであろうし、そう考えるとどこか愛憎めなくもある。だけれども…だ。油断するのはまだ早い。が・ま・ん・す・る・ん・だ。
撮影:斉藤ユーリ/取材:帆苅智之
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