【黒猫同盟 インタビュー】
黒猫目線で書いて、
言いたいことは全部猫に言わせる

L→R コイズミキョウコ、上田ケンジ

コイズミキョウコと上田ケンジによる黒猫同盟の1stアルバム『Un chat noir』。ジャズあり、猫たちも参加したキッチュな曲ありの極上ポップアルバムは、ほぼ宅録で完成させたという。そして、ふたりは異口同音に、中高生時代のように楽しみながら作ったと制作過程を振り返る。ちなみにふたりが同時期に保護猫の黒猫を飼い始めたことがユニット名の由来だ。

世情が世情だったから、
ホッとするようなものを

アルバム『Un chat noir』は1曲目の表題曲から、まるでパリのカフェにいるような旅気分を味わえる心地良い作品でした。楽曲はコイズミさんのSpotify Podcast番組『ホントのコイズミさん』でかけるオリジナルとして作り始められたんですよね?

コイズミ

既存の曲はかけられないということだったので、“オリジナルだったら大丈夫なんですか?”とSpotifyの方に訊いたんです。そうしたら“上に確認したところ前例がないので…”というところまで聞いて、“あっ、ダメなんだろうな”と思ったら、“OKです”って(笑)。それで上田さんに“ちょっとお茶でも飲まない?”と連絡したんです。

上田

焼きを入れられるのかなと思いました(笑)。

コイズミ

(笑)。もうコロナ禍に入っていたし、お互い社長業をしながら音楽もやったり、私は舞台を作ったりもしているから、そんな苦労話から始まって、“ところでさぁ…”と話を振ったら“やりたい!”とすぐに言ってくださって。そこからどんどん曲が生まれて、“いいじゃん、いいじゃん!”と言っているうちに10数曲が生まれました。

上田

トラック数で言うと16ぐらいかな?

コイズミ

歌詞も最初は私が書こうと思ったんですけど、“なんか思いつかないや~”と言ったら、“俺、今思いつく時期だから書いちゃうね”って(笑)。曲ができると上田さんのお宅にうかがって、ご自宅のスタジオで歌を録っていきました。

上田

ほとんどの楽器と歌とは、僕の家のただの一室で録ったんですよ。

コイズミ

でも、すごく音がきれいじゃないですか? できちゃうものなんですよね。

上田

ピアノとドラムだけはデータを送って入れてもらったんですけど、それも全部その方の家で。ドラムは2パターンあって、家でドラムを叩ける人は自分で録ってもらって、データでやりとりして。もう1パターンは、家にスネアとシンバルとハイハットとかだけ置いて、狭い部屋で録りました。マンションなので、バスドラだけは音がうるさいから段ボールを叩いています。

そんな手作り感満載の生まれ方をした作品なんですね!

上田

そうです。でも、たぶんそうは聴こえないと思う。録り方次第ですね。

喫茶店で最初にお話された時、コイズミさんから具体的なリクエストはなかったようですが、何かキーワードは投げかけられたのですか?

コイズミ

“ユニット名は“黒猫同盟”にしようよ”って。その時に降ってきたからお伝えしたら“あっ、いいね!”って。それくらい?

上田

ひと言だけあった。“あまり重たくならないようなものから始めよう”みたいな、そんな感じのことを言われたのは覚えているかな。

コイズミ

そうですね。番組でBGM的にも使いたいという発想があったから。世情が世情だったから、ホッとするようなものを。だけど、ちょっとシニカルっていう。

上田

年明けぐらいだったかな? “じゃあ、こんな感じで作っていこうか”とまずは3曲ぐらい聴いてもらって、歌を入れるためにコイズミさんがうちに来て、そこでいろんな話をしながら、“次はこういう感じもいいよね”とか“世の中が世の中だけに、ちょっと物申す感じとかもいいね”とか…あと、“黒猫目線で書いて、言いたいことは全部猫に言わせちゃう?”みたいな(笑)。

コイズミ

アドリブ的にフランス語の挨拶を入れたりもしてね。ふたりだけで作業ができるから、レコーディング中も全然焦ったりしなくて良かったし、時間にも限りがなかったし…何かあれば上田さん家のリビングでちょっとお茶を飲んだり。そこには黒猫ちゃんもいるしね。

ひじきちゃんですね。

上田

そう! たまにしか出てこないんだけどね。

コイズミ

“ひじきちゃ~ん”と呼びかけて…だから、中学生とか高校生みたいな感じだったよね。気の合う友達ができて、“何かやろうぜ!”“じゃあ、あんたの家に行くわ”みたいな、そんなムードが漂う日々だった。

上田

僕も最初にバンドを作った時の感じを思い出した。高校生とか中学3年ぐらいの時かな? 全部家でやっていたから。

ある意味、一番純粋な音楽作りの仕方だったんですね。その時点で、ゆくゆくはアルバムというビジョンはあったのですか?

上田

どれくらいでそうなったんだろう? なんかね、曲が止まらなくなってきて…

コイズミ

“この先、どうしよっか?”みたいな話をしたよね。例えばビクターさんと一緒にやるか、自分たちだけでひっそりやるか…みたいな。

上田

そうそう。僕が自分のレーベルを持っていたりするからね。

コイズミ

まずはビクターのディレクターと相談したら、“コイズミさんと上田さんがいいようにやるのなら、そこにビクターは別に絡まなくても…”と。なんかね、お互いがお互いを想い合っているものすごく可愛いムードになったんで、“だったら、みんなで一緒にやろうよ~!”みたいな(笑)。

上田

傍から見れば牽制し合っているように思えたかもしれないけど、そうじゃなくて、お互いがお互いのいいようにって。どんどんポカポカしていった(笑)。

コイズミ

ビクターさんが一緒にやってくださることで、いろんな展開ができていて…アナログ盤とかカセットとかね。“これが付いていたら可愛いくな~い?”とか、ちょっとわがまま的なことを言っても実現してくださるんです(笑)。

上田

言ったことが全部通る(笑)。

コイズミ

我々が中学生とか高校生だった感覚で言うと、“顧問の先生がいい先生だったね”みたいなことですよね(笑)。で、“みんなでやろう!”と言ったあたりからアルバムの話になっていって、それで最初は“10曲は必要だよね”なんて言っていたのが、曲がどんどんできていって止まらなくて。

上田

中にはひとつを母体にリメイクする感じで広げていったものもありますけどね。「ニャー」という曲をもとに「ニャーとフェー」と「プロヴァンスでニャー」ができて。あれは全部、コイズミさんが言った“ニャー”をいろんなかたちで曲にしていて、本物の猫たちの声も入ってるんですよ。

では、ひじきちゃんと、コイズミさんのお宅の小福田さんもですか?

上田

はい。小福田さんの動画から声を拾って入れました。

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