【ネクライトーキー インタビュー】
フルサイズを聴いてくれる
物好きな人たちに
サプライズを与えたい

L→R 中村郁香(Key)、もっさ(Vo&Gu)、藤田(Ba)、朝日(Gu)、カズマ・タケイ(Dr)

アルバム『FREAK』(2021年5月発表)の制作を経て、音数の抜き差しを意識するようになったネクライトーキー。ニューシングル「ふざけてないぜ」はタイアップのTVアニメ『カノジョも彼女』の世界観を取り込みながら、キャッチーな曲展開と編曲の遊びを一曲にまとめ上げ、アニメサイズ以降も楽しめるユニークなナンバーに仕上がった。

シンプルさとウズウズ感の
絶妙なバランスで成り立っている

新曲「ふざけてないぜ」はTVアニメ『カノジョも彼女』のOPテーマとして書き下ろされた一曲で、アニメは突拍子もない展開で進んでいきますが、朝日さんはどんな印象を受けましたか?

朝日

原作を手がけているヒロユキさんの以前の作品も知っていたので、ハイテンションな感じのギャグコメディーだと思っていました。やっぱり登場人物は傍から見たらめちゃくちゃなギャグマンガの住人なんですけど、本人たちはいたって真面目だからおかしな展開でも“真剣にやっている”という印象があって、その感じを曲でも出したかったので、一回真剣に歌詞を書いてみようと。このアニメは喜劇だけど、本当だったらつらさとか、普通じゃない苦しさもあるだろうと思ったので、歌詞は悩んでいる様子が出たものになりましたね。その上で編曲は遊べたらいいなと思って、メンバーにも遊び心を入れるにはどうしたらいいか相談しながら作っていった感じです。

浮遊しているようなシンセサイザーの音が不思議な感じを醸し出していて、アニメの雰囲気にもぴったりです。

中村

浮遊している効果音自体は朝日さんがアレンジ段階から作っていて、それをキーボードのパットで押しているんですけど、フワーッとしている感じから現実に呼び戻されるような変化も出ていて気に入っています。ギターがちょっと癖のある音を出してくれているので、その他のキーボードはポップに全振りして、何も考えずに自分の妄想も入れて作りました。

朝日

最初は効果音をたくさん入れようと思っていたんですけど、作っているうちにいらない気がしてきて。一個くらいは面白い音を入れたかったので、ディレイがかかったふにゃふにゃした音を残しました。

ネクライトーキーの曲としてはシンプルな印象も受けました。さりげなく音が散らばっているけど、ベースとドラムがしっかりリズムを刻んでハネ感を出しているので、しっかり締まっているというか。

タケイ

『FREAK』からの流れで、“どっしり、シンプルに”という志向の割合が多くなっているんですよね。男気を感じるようなイメージというか。だから、上モノはいつもどおり自由にやってもらって、ドラムは土台を支えようという気持ちで演奏していました。

藤田

まずリフを活かしたいと思ったので、Aメロはリフをメインにユニゾンさせたり、8ビートで刻んだりしています。Bメロあたりからだんだんベースラインを動かして、サビでポップにするためにオクターブで弾いてみたり、基本的にはドラムのリズムに噛み合うような意識で作っていきました。

ポップだけど軽すぎず、低音もズンズンくる感じが聴いていて気持ち良いです。藤田さんがおっしゃってたようにギターリフもギラッとしていて。

もっさ

デモを聴いた時に、キンキン鳴るジャズマスターの曲にしたいんだろうなって思ったのが第一印象でした。シンプルに聴こえるっていうのもすごく分かるというか、サビの感じもノリやすくて、ギターソロも歌メロをなぞっているから、恥ずかしいくらいにストレートです。でも、シンプルでポップに聴こえるのに、ジャズマスの音はそこまでストレートにいかせてくれないんですよね。ちょっと引きずり戻される感じがあったり、2番は“トリッキーなことをしたい!”というネクライトーキーがウズウズしている感じも出ていて(笑)。その絶妙なバランスで成り立っていると思います。アニメ尺だけだとシンプルなんですけど、何か音が普通じゃないような…

朝日

最近のアニメで流れるバンドの曲に比べて、この曲はあまりにも生々しすぎるので、みんながバチバチで決めている中、結婚式に私服すっぴんで行くみたいな…なのに堂々としてるという(笑)。自分が作った曲なのに笑っちゃうんですよね。

油断ならない感じも潜んでいる気がします。中毒性があるリフもそうですし、《今はそんな流行り廃りのことなんて》で1番のメロディーからさらに下っていって、全体のリズムが裏表がひっくり返るところとか。

朝日

そうですね。躓かせてます。

あと、最後のサビ終わりのところで謎のキメが入るところとか(笑)。

全員

あははは。

藤田

あれはマジで謎なんですよ!

タケイ

朝日が送ってくれたアニメサイズのデモからどう広げていくかっていう話の過程で、もっと面白いことをしたいっていう、さっきもっさが言った“ウズウズ感”がそういうかたちで表れているんだと思うんですけど、何なんでしょうね(笑)。

朝日

でも、アニメソングってアニメを観てる人からしたら一番記憶に残るところは最初の1分半じゃないですか。それが頭に残っている中、フルサイズを聴いた時に驚きがあるといいなって思うんですよね。僕も子供の頃に感じたんですけど、シンプルな繰り返しではなく、全体を知った時に“こうなっていたんだ!?”という発見があると、当たり前だけど、作っている人のこだわりが詰まっているのが分かるというか。アニメのために作った曲だとしても、1分半以降にもちゃんと愛とこだわりを持って物作りに当たってるんだなっていう感動があったんです。だから、フルサイズを聴いてくれる物好きな人たちにサプライズを与えたいという気持ちがありました。

それだけ遊びを入れているのに、まとまりも出せるのって朝日さん的にはなぜだと思いますか?

朝日

タケちゃんが言っていたように、『FREAK』くらいから引き算ができるようになったというか、必要なシンプルさを考えて演奏をしているからだと思います。足してばっかりだと曲が散らかっていくので、実は曲の中の情報量は減らせたらいいと思っているんですよね。それがまとまりとして表れていたら嬉しいです。

アーティスト