K-POPと日本のアイドル&2020年度ロマ
ン優光アイドル楽曲大賞:ロマン優光
連載177
中野カルチャーセンターのシングル『金曜劇場 好きだけじゃダメみたい』(音楽配信サイトで配信中)
あの筆者の人って、よく知らないことに対して偏見で小馬鹿にするようなことを言っては批判されることを度々繰り返してきた人なんですけど、未だに編集者から需要があるのを見ると不思議になりますね。情報部分の正確さよりも、編集が求めているような内容をわかりやすく書いてくれるライターに需要があるということなのでしょうか? 編集者がよく知らないジャンルに関しては、編集サイドからファクトチェックができないのもあるとは思いますが、K-POPを評価するにしても、48系を批判するにしても、他にちゃんとして書き手がいるのではないでしょうか。
話は変わるんですが、K-POPと日本のアイドルの比較する場合、世界戦略を企てるタイプのもの同士を比べるとか、スキルの高さが重要視されるようなもの同士を比べるような、同一の価値観を持っているもの同士を個々に比べないと意味がないと思うんですよ。スタジアムコンサートをするようなバンドと、アンダーグラウンドで活動するハードコアパンクやメタル、アヴァンギャルドのバンドを比較して、売れてる売れてないとか、技術がある技術がないみたいな話をしても意味がないですよね。「ダニエル・ジョンストンはアリアナ・グランデより歌が下手だからダメ」と言われても、ダニエル・ジョンストン好きな人にとっては「なんじゃ、それ?」みたいなもんです。日本のアイドルをこの十年で細分化が激しく、送り手の音楽性や価値観、受け手の需要も多岐に渡っています。ライブ活動の楽しさに主眼をおいて活動している人もいる。それをひとまとめにして、K-POPの世界的に成功している部分と比較したところで、界隈によっては全く関係ないというか。 K-POPの側にたって比較している人が日本のアイドルに関して多岐に渡って精通しているわけでも、日本のアイドル好きもK-POPの細部まで知ってるわけでもないでしょうし。両方の細部に渡り精通している人でないと、そんな大きな主語を使って語れないわけですよ。多分、そういう人は大きな主語を使って雑に語ったりしないし。だいたい、K-POPと比較すべきなのはJ-POP全般でアイドルだけを取り出すのも変な話です。
ここでまた話は変わりますが、日本の女性アイドルに関していうと、本来一般的なポピュラリティのない音楽をアイドルを通して発信することで、その楽曲が本来持っているポピュラリティ以上に売ることができるというものだと思っています。その「ポピュラリティのない音楽」の中には、ノイズやプログレのようなアンダーグラウンドなもの、マニアックで良質な広義の意味でのポップス、単に出来のよくない普通のJ-POP、製作した意図がよくわからない偶然産み出された事故のような楽曲までが含まれています。その人の聴いてきた音楽歴であれば本来聴くことのなかったような音楽を、アイドルというフィルターを通すことで「良い曲」として需要できるようになる。そういうふうになってるんですよね。
マニアックなパンクやメタルを聴いてきた人が、BABYMETALやWACK系のアイドルを入り口にアイドルのライブに行くようになり、のめり込んでいくうちに普通のアイドルポップスが好きになったりする例はよく見聞きされます。他にもクラブ・ミュージックが好きな人、ギターポップが好きな人とか、音楽歴も入り口も色々ありますが、マニアックな音楽側にいた人が普通のアイドルポップスを需要するようになるという例は数えきれないくらいあるでしょう。
その一方で、今までの人生で全くマニアックな音楽に興味がなかったおじさんが、アイドルを通すことでシューゲイザーのような楽曲を良い曲だと思うようになってたりもするわけです。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインを聴いてもうるさいくらいにしか思わなかったであろう人がアイドルが似た形式の楽曲をやれば良い曲だと認識してしまう。アイドルの身体性(身体能力とかそういう話ではなくて)を通して楽曲を需要する、その楽曲の良し悪しが規定されるという聴き方をするのが、「アイドル・ポップス」なのだと思います。
私は人生の中でハウンド・ドッグというバンドのことが全然好きであったことがありません。当然、その楽曲を良いと思ったことがありません。ところで、中野カルチャーセンターという東京のローカル・アイドル・グループがあるのですが、私は最近好きなんですよね、中チャ(※中野カルチャーセンターの略称)のことが。当然ながら、その曲も大好きです。そこで重要なことが一つあって、中チャの楽曲を制作しているのはハウンド・ドッグのキーボーディストであり、バンドの楽曲制作の中心人物である蓑輪単志さんなんですよ。意識して聴くと、キーボードのフレーズとかハウンド・ドッグのヒット曲みたいだったりもするんですよ。ポップ・ミュージックというものは、演者によって楽曲の魅力を規定する割合が高いということに改めて気づかされます。大友康平氏の身体を通してなされる表現は私には届かなかったけど、いぬいぬいさんの身体を通してなされる表現は私に届く。そういうことなんですよね。
そういうわけで、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
長々と書き連ねてきましたが、私の2020年度の個人的アイドル大賞(12月30日調べ)を書かせてもらいますね。順不同。日によって気分も変わるのでノミネート作も入れ替わりますが、こんな感じです。ジャーナリスティックな視点などいっさい入ってません。
・季天烈ノンフィクション/スチャラカサンデー
・佐倉雅/この病は一生治りません
・ステラシュガレット/ニャンとワンだふる
・中野カルチャーセンター /てずくりモノレール
・どうして友達がいないのか。 /ティーチャーテイチャー
・鈴田ねこ /惑星Q
・リリスリバース /ジュブナイル
・美味しい曖昧 /角砂糖とセイロン
・小日向由衣 /ネコみたいに
・回せグルーヴ!開発部 /♯FFFFFF
・鈴田ねこ「生誕記念3daysワンマンライブ」(8/8~8/10)
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
https://wp.me/p95UoP-3N (コピペして検索窓に)
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