【ザ・クロマニヨンズ
(デザイナー・菅谷晋一氏)
インタビュー】
アルバムのジャケットには
ストーリーがある

L→R 小林 勝(Ba)、桐田勝治(Dr)、甲本ヒロト(Vo)、真島昌利(Gu)

14枚目のアルバム『MUD SHAKES』が完成! 新作をリリースするたびに大胆なアートワークでファンを驚かせるジャケットは、デビュー以来、デザインを手がけている菅谷晋一の手によるものだ。そのデザインのこだわりとバンドとの関わりを氏に語ってもらった。

菅谷晋一

責任を考えていたら
デザインはできない

以前からメンバーと面識はあったんですか?

↑THE HIGH-LOWS↓の最後の頃、『Do!! the☆MUSTANG』(2004年9月発表)っていうアルバムのあたりからですね。

何がきっかけで知り合われたんですか?

ヒロトさんとマーシー(真島昌利の愛称)さんのハッピーソングレコードという事務所のロゴデザインのコンペがあって、そこで採用されてからです。

ふたりに会った時、どんな印象を受けました?

想像した通りというか…テレビの画面でしか姿を観たことなかったですけど、そのままでしたね。

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会

それまでにライヴに行かれたりとか?

なかったんですけど、そのあとにライヴ写真を撮ることになって、そこで初めてライヴを観ました。

ザ・クロマニヨンズのスタート時、ビジュアル面での話はされました?

マスコットキャラクターを作りたいという話はしました。あとは、ロゴのデザインとか。

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会

ジャケットのデザインを考える時には音源だけしかないわけですよね?

そうですけど、音源とタイトルをもとに作ることに慣れていますから。そこは他と変わらないですね。音源だけでデザインを考えるというのは珍しくないので。

かなり重要なポジションなので、責任が重いですよね?

責任を考えていたらできないですね。震えちゃうじゃないですか(笑)。毎回、音源をもらって、“カッコ良いな〜”と思って、無我夢中で作って作品を出しているだけで、責任は考えないです(笑)。

逆にそれが楽しみかもしれないですね。

うん、それが一番です。中学生の時にCDを買って、畳の上にジャケットを並べて、“カッコ良いな〜”とか思っていた、その延長線上ですね。だから、あまり重く考えないです。“今回はこう来たから、こう作ろう”とか、その繰り返しです。

そこでの“こう作ろう”というのが重要だと思うのですが。音源とタイトルだけで、どうひねり出されているのかなと。

いつも言ってるのは、一回寝るんですよ。考えながら。で、起きたらアイディアが思いつく。…って言ってますけど、実際はアイディアを考えているうちに寝ちゃってて(笑)、そこで頭の中が整理されて、タイトルと音を聴いた時のイメージがひとつになって、だいたいできてくる。その表現方法は絵だったり、彫刻だったり、いろいろあるんですけど。

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会

寝ている間に考えが整理されてイメージが絞り込まれる?

そうですね。音もあまり聴きすぎないで、一回目に聴いた時のインパクトを大事にしていて。ファンの方がCDを買う前に試聴機で聴いたとしても、最初のインパクトが一番大きいじゃないですか。僕もそこは一緒にしたいという想いがあって。

その時におぼろげなイメージがあったり?

いや、それはなくて、“改めて”という感じで作ります。

毎回、いろんなタイプの曲があって、いろんなイメージが生まれると思うんですけど、どうやってひとつに絞るんですか?

やっぱりアルバムタイトルが大きいですね。それでまとめているから。アルバムタイトルと、収録曲の中で自分なりに一番グッとくる曲に重点を置いて…というのはあるかもしれない。

歌詞の中のキーワードに引っかかるものがあったり?

あぁ、結構大事かもしれないです。自分の耳で聴いて言葉を書き出してみて、自分の中で重要なフレーズを探したり。『YETI vs CROMAGNON』(2013年2月発表のアルバム)でステンドグラスを作った時は、「チェリーとラバーソール」という曲があるのでチェリー色を使ったり。そうやって色を決めたりすることもあります。

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会

ステンドグラスもそうですけど、そういった実物や立体も作られるんですよね?

僕が全て作ってます。

ご自身で作ったほうが、意図する意味がより強く伝わるからですか?

自分が思ったことをアートディレクターとして、他人に絵を発注すると薄くなると思うんです。僕にいくつかの閃きがあるとしたら、それをガーっと集めて、一枚の絵として表現しやすいのは自分かなと。いろんな作り方はあると思うんですけど、僕は全部ひとりで作るスタンスですね。

基本は手描きですか?

手描きとか手彫りとか。「生きる」(2018年8月発表のシングル)では彫刻も作りましたけど、結構でかいんですよ。

なかなかイメージが湧かなくて苦労した作品とかは?

それはないですね。迷ったらその日は考えないで、潔く次の日に考えようとするので。

いくつか提出して、どれかを選んでもらうという感じですか?

それもないです。ひとつですね。作り込むものが多いので、一個しか作る時間もないし、一個に集中して愛情込めて作ったほうが伝わりやすいですから。

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より (C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会

毎回、ヒロトさんとマーシーさんに取材した時、ジャケットのデザインは菅谷さんに丸投げしていて、それで何の問題もないと答えているんですけど、それが毎回なのですごいなと思っていて。特に方向性を語るわけでも資料があるわけでもないのに、思った以上のデザインが上がってくるっていう。

大喜利みたいなものですよ(笑)。音源とタイトルがあって、“菅谷くん、どう出す?”、みたいな。僕はさっき言ったように、音源を聴いて、集中して一個のものをドーン!って作るわけだから、メンバーにもドーン!っていう衝撃を与えられたらいいなぐらいの気持ちで作りますけど。

あと、これも毎回出てくる話なんですけど、そのジャケットのTシャツを着たくなるかどうかというのが大きなポイントだと。

あっ、そうなんですか。それは初めて聞きました。

グッズにした時に欲しくなる絵柄だからカッコ良いと言ってましたよ。

あぁ、なるほど、でも、大事ですよね。最初に音を聴かせてもらうというのは、ファンの方よりも前に僕が聴くわけで。アートワークもファンの方より前にバンドの方に見てもらう、そんな作業なんですよね。それがお互いを通して、ファンの方の反応が分かるというか。“ファンの方もこういう顔をするのかな?”とか、メンバーの方の顔を見てそう思うし。それも面白いです。