【GLIM SPANKY インタビュー】
GLIM SPANKYという
総合的なポップスにチャレンジした
L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)
苦境を乗り越え、困難には柔軟な姿勢と豊潤な発想で打ち勝ち、心のスイッチを自在に切り替えながら完成させたアルバム『Walking On Fire』。“今”だからこそ生まれた、2020年のGLIM SPANKYが歌い奏でる音楽は強くてやさしく、そしてしなやかだ。
再デビューのつもりで作った
アルバムでもあります
コロナは音楽の世界にも大きな影響を及ぼしましたが、おふたりの音楽への触れ方、向き合い方に変化はありましたか?
松尾
私は一時期、家にこもりまくってたのですが、ひとり暮らしをしているとめちゃくちゃ孤独で。最初の頃は音楽を聴く気にさえならなくて、“おうち時間”を充実させてみたのですが、やっぱり無音状態では寂しくて。そんな中、思いきって音楽を流してみたら、その瞬間に忘れていた音楽の力を改めて実感したんです。そこからは音楽のパワーで乗りきってきたので、“自分たちの音楽を聴いて少しでも元気になれた人がいたらいいな”と思って宅録で曲を作ったりとか、アルバム制作にもより力が入りました。
亀本
僕は人とコミュニケーションを結構とってました。友達とLINEのビデオ電話で会話したり、Instagramでライヴ配信をやってファンの人たちとやり取りしたり。そういう中で、音楽だけじゃなく、どの業界でもオンラインというのは重要視しなきゃいけなくなっているというのは感じましたね。インターネットを活用する動きは、ますます加速していくでしょうし。
レミさんがおっしゃった“孤独”というのは、今回のアルバムを聴いていても感じました。やはり孤独感は作品に投影されています?
松尾
されていると思います。今回のアルバムは孤独から抜け出すとか、そういうことをいろんな曲でいろんな視点から歌っているんです。それがアルバムの中でだったり、GLIM SPANKYの過去曲のアンサーソングになっていたりもして。例えば「By Myself Again」は「大人になったら」(2015年4月発表の配信シングル)の反対側にあるアンサーソングですし。そういうふうにいろいろつながっていく仕掛けをしているので、そこで“孤独”というキーワードが今の状況と合わさって大きく伝わるのかもしれないです。
「By Myself Again」が主題歌になっている映画『実りゆく』の舞台は地元の長野でしたね。
松尾
はい。私たちが通っていた高校がある街です。しかも、テーマが自分たちにもリアルなことだったので、それをやさしさでもって包み込み、なおかつ田舎の風景を表現できるものにしたくて、フォーキーでカントリーチックなサウンドにしました。
亀本
もともとそういう音楽が得意ですし、オーガニックなものや懐かしいものは松尾さんの声にハマるからやりやすいですね。ただ、メロディーやコード進行は今まで以上にポップに作ったよね?
松尾
そうだね。サビのところは歌い方も変えています。今までのフォーキーでカントリーなものよりもポップなアプローチにしたかったので。
以前だともう少しいなたい感じでしたね。
松尾
あー、そうです! もうまさに!
「ストーリーの先に」(2019年11月発表のシングル)の時に“新しいジャンルにいろいろトライできた”とおっしゃってましたが、得意技のひと捻りを含め、アルバムのどの曲でも新しい世界を感じます。
亀本
それは個人的に一番のコンセプトだったというか…トオミヨウさんやmabanuaさんにプロデュースをお願いしたのは、いろいろなサウンドやモダンなアプローチを試したかったからですし。ただのロックは古典芸能で、もはやポピュラーミュージックとも違うものになっていると感じてて。だから、自分たちのベーシックな部分とロック的ではないビートを組み合わせて、GLIM SPANKYという総合的なポップスにしたいという気持ちが強かったんです。そこにトライできた第一弾としては、すごくいい作品になったと思っています。
確かに。ルーツ的な部分を消化・昇華している印象もありました。
松尾
自分の中では結構攻めた、今までのアプローチとは違う歌詞や曲の作り方をしたので、亀本が言ったようにモダンなサウンドメイクとかが合うと思って、今回は進めていきましたね。でも、私はジャズとかにも興味を持ち出したので、自分の欲望的にはまだまだそういうレトロなものも面白く取り入れていきたいんですよ、表現としては。
トオミさんとコラボした「東京は燃えてる」は、心の中の熱と視線のクールさのコントラストにハッとさせられました。
松尾
こういうビートって自分のルーツの中になかったので、どういうテーマで書こうか、どういう言葉の乗せ方をしようかとすごく悩みましたね。何度も書き直して…実は別の歌詞で歌入れをしたんですけど、納得がいかなくて。で、“東京は燃えてる”という言葉がパッと浮かんだんですね。自分の心の奥底から出てきたものこそ本当のメッセージだと思って、そこから新たに書いたんです。心の中は燃えているんだけど、ちょっと第三者的な視線もあるっていう。結構、クールな感じで完成しましたね。あと、歌詞を書く自分の心が初心に戻れた気がした…嬉しい苦しみを乗り越えたデビューの時の気持ちを思い出したり。いい意味での創作の苦しみを味わいながらアルバムを作ったので、ジャケットもデビュー作の『焦燥』(2014年6月発表のミニアルバム)と同じ配色だけど進化しているものにして。だから、再デビューのつもりで作ったアルバムでもあります。
「こんな夜更けは」は先ほど話していた宅録の曲ですよね。
亀本
これは緊急事態宣言中、そういう時代にたまたま直面したから…最悪ではあるけど、せっかくだから記録に残しておいたほうがいいだろうって、アルバムに入れるとかは考えずに作った曲なんです。それぞれが家で作ったほうがコンセプチャルだし、モラル的にもいいなとも思って。この時の空気を録っているというのが大事だったので。で、何も背負ってないから、普段とは違って“こういうのをやりたい”と思うことをかたちにした感じです。
アーティスト
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