【宮野真守 インタビュー】
努力が報われるとは限らない
というところに人生の真理がある
宮野真守
ニューシングル「光射す方へ」は自身が出演するTVアニメ『あひるの空』のエンディングテーマ。綺麗事では済まない人生のリアリティーを力強いバンドサウンドにラップを交えて表現したナンバーには、“生きる”ことに対する深い洞察がある。そんな今作について、今のリアルな想いを語ってもらった。
作品から受けた衝撃と感動を
僕の言葉で綴っていきたかった
「光射す方へ」は実に壮大かつソウルフルな楽曲で歌詞もド直球ですが、ご自身も出演されている作品のエンディングテーマだけに、やはり歌詞は自ら書きたいという想いが強かったのでしょうか?
そうですね。茂吉 要という役を演じる上で原作を読ませていただいた時、とても感銘を受けたんです。なので、エンディングテーマのお話をいただいたタイミングで、僕が受けた衝撃と感動を、僕の言葉でしっかりと綴っていきたいと思いました。
その衝撃と感動というのを具体的に言うと?
少年たちの姿から“生きる”ということを学ばせてもらったというか。努力する姿は非常に輝かしいけれど、必ず報われるとは限らないというところに人生の真理があるんですよね。だからって諦めるわけではなく、そこでどう生きていくかというところで少年たちが一喜一憂する姿が本当にリアルに描かれているんです。“青春スポーツマンガでこんなにも人生の芯を突いてくる作品があるんだ!?”って驚いたくらい。特に僕がエンディングを担当させていただくお話は、よりシリアスな展開が待っていたりするので、深く入り込んだサウンド感と歌詞で楽曲制作をしていきたいと考えました。
栄光に向かって突き進むようなスポーツマンガの王道とは違う、言わば“リアル”が描かれているということですね。その自身の弱さと葛藤しながらも諦めずに進んでいくことが、この曲で一番訴えたかったことになるんでしょうか?
うーん…諦めないこと、頑張ることが大事っていうのはちょっと違うかな。それでも“戦っていく姿を見せます”っていう決意の曲ですね。“諦めないことがカッコ良いよね”じゃなくて、例え上手くいかなくても、その先に光があるかもしれないと求めること…そういった渇望だったりが、人生においてリアリティーと言えるところなのかなと思います。
そういった想いを“羽ばたけない鳥”だとか“Ugly duckling”という『あひるの空』の世界観にも通じるワードを交えながら描いている上、サウンド面では地に足のついたリズムが印象的でした。
その浮ついていない感じもリアリティーにつながってくるんじゃないかなと思います。とにかく『あひるの空』のエンディングという在り方が大事だったので、サウンド感についてもアニメチームとしっかり打ち合わせをしました。例えば、力強いバンドサウンドでグルーブ感を加えていったり、当初ピアノだったところをギターにしたりと、アレンジもブラッシュアップさせて、自分たちのイメージを統一させていったところはありますね。
作曲はこれまで何度もタッグを組んできたJin Nakamuraさんですが、特にインパクトがあったのが曲後半にある長尺のラップパートで。メッセージの熱がよりダイレクトに伝わってくるような衝撃がありました。
その辺りのグルーブはJinさんと一緒に作ってきたサウンド感…ヒップホップと他ジャンルとのミクスチャーだったり、クロスオーバーだったりっていう流れの進化形ですね。Jinさんの中に“宮野真守に歌ってほしいサウンド感”みたいなものが確実にあって、それは非常にありがたかったです。テレビサイズではラップは入ってないけど、その分、フルで聴いた時により本音が吐露されるというかたちにもできますし、MV撮影の時も監督から“ラップパートだけカメラ目線にしましょう”っていうアイディアが出たんですよ。そこで世界観の違いを見せられるし、泥くささみたいなものを出せるっていうのがラップの良さでもあるんですよね。きれいなだけじゃない力強さみたいなものを表現できる。
なるほど! しかし、何か明確なストーリーがあるわけでもなく、ただ独り剥き出しの感情をぶつけていくMVに表現者としての真価を実感しました。
採石場というロケーションは曲の壮大さから監督が導いてくれた世界観ではあったんですけど、僕は自分が描いた泥くさい部分というか、ストイックでシンプルな部分を表現したかったんです。壮大な景色の中で気持ち良く歌うっていうだけのものにはしたくなかったので、壮大な絵作りの中でもファンタジーに映らないように、スケール感のある場所だからこその重厚感というものは考えました。クライマックスでは仲間たちがトーチを持って集まってくるんですけど、それぞれが希望の炎を胸に抱いて想いを主張しているというものになっています。
一歩踏み出したら奈落へと落下しそうな絶景と、濃厚な感情表現のスリリングなマッチングが素晴らしかったです。顔も泥で汚れていたり、指の間から砂が零れ落ちる場面もありましたが、そもそも“きれいなだけじゃない力強さ”というのは『あひるの空』自体の世界観でもありません?
そうなんですよ。綺麗事じゃない真実をすごく描いている作品なので、例えば試合の結果を先にバラしてたりするんです。その上で、なぜそうなったのかをあとから説明するという描写もあって。そんな漫画は見たことない!
そういった作品の特性にぴったりと寄り添っている分、青春スポーツ作品のタイアップとしては非常に珍しいタイプの曲ですよね。
そうだと思いますね。
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宮野真守自身が経験したことを軸にしたテーマソングアーティスト
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