【ウォルピスカーター
インタビュー】
“また新しいことがしたい!”
と挑んだ作品
ウォルピスカーター
“高音出したい系男子”を標榜し活動中のウォルピスカーター。そのクリアーで少年性を擁したハイトーンヴォーカルで、これまで多くの株主(ファンの呼称)を魅了してきた。そんな彼のニューアルバム『40果実の木』は新機軸も多数な逸品。歌唱キーのレンジの広さや楽曲タイプごとの表現力も魅力だが、ほぼ全曲自身が歌詞を手掛けたという意欲作でもある。
キーを上げていくことで
従来歌っていたハイトーンが楽になる
ウォルピスカーターと言えば、高音を活かした歌唱が特徴的ですが、まずはその出自とも呼べる“歌ってみた”を始めたきっかけから教えてください。
投稿を始めたのは高校3年の頃でした。もともと高校の軽音楽部でヴォーカルをやっていたんですが、引退して歌う場所がなくなってしまって。そんな時に友人からニコニコ動画の“歌ってみた”の存在を教えてもらったんで、それこそ勢いで始めました(笑)。歌うことは生涯の趣味にしたいと思ってたので。
趣味? 意外です。てっきり“ゆくゆくはプロの歌い手を!”との願望を持っていたと想像していました。
いやいやいや。それこそ長く続けられる趣味として歌い始めました。家でできますし。今ではお仕事として歌をやらせていただいてはいますが、自分としては歌は趣味の範疇を抜け出ていない感がまだあって。もちろんこれからも高い声は開発し続けていくし、歌っていきますよ。
そのハイトーンは当初から?
全然です。当初は今より1オクターブ半ぐらい低い歌声で、普通の男性キーの曲をかろうじて歌えるレベルでした。やり続けた結果、ここまでキーが高くなりました。もともと高い声への憧れはあったんですよ。“こんな高いキーの歌声の方もいるんだ!?”と知り、“もしかしたら自分でも出せるのでは?”と思ったことが挑むきっかけでした。それまでは高い声で歌うのは海外のメタルバンドのヴォーカルの方だけと思ってましたから。ところが、ネットでは普通の会社員の方や学生さんとかまで高い声を出して歌っている。そこで“どうやらハイトーンって選ばれし者のみに与えられる特権じゃなさそうだぞ”と。そこからですね、練習や挑戦が始まったのは。そのうちに高音もどんどん出せるようになり、出せると楽しくなり、もっともっと高い声へと…で、気付いたらこんなことになってました(笑)。
(笑)。今や驚異的でもあります。
今やキーを上げながら、その高さでいかに生で歌えるかへの挑戦でもありますからね。そのキーが上がっていったのも、キーを上げていくことで従来歌っていたハイトーンを出すのが楽になる、そんな考えからなんですよ。150キロの球を投げられる人は120キロぐらいの球なら楽勝で投げられるじゃないですか。それと同じで。より高い声を歌える人のほうが、楽勝でそれまで高かったレンジも歌えるだろうって。
結果、どんどんハードルも上がっていったのでは?
そうなんです。音源に対して実際のライヴで歌うと追い付かない部分も表れちゃって(笑)。作品があまりにもハイトーンなため、ライヴではキーを下げられない曲も出てきちゃったんです。今作でも「キャスティングミス」なんてまさにそれで。全体で2オクターブ半~3オクターブの声域を使って歌っているんですが、キーを少しでも下げると低すぎて出せない声域が生まれてきたりして。自分のポリシーである“ライヴでの歌唱を考えない音源作り”には沿えましたが(笑)。
今、“ライヴ”とおっしゃられましたが、活動開始からここまで、当初の“自分の歌を発表する場”から“聴いてもらう”という意識の変化、さらに今は“歌を届ける”という姿勢への移行も感じられます。
確かにそうですね。聴き手やライヴに来てくださる方々への意識はかなり出てきました。特にライヴを通してのお客さんの反応や表情が、それらの意識の変化へと至らせた感は強くあって。“どのような曲をどんなタイミングで歌ったら喜んでもらえるのか”などを意識するようになりましたね。とは言え、そこに縛られたくない自分もいて。もちろんニーズに応えて供給していく所存ですが、その根底には“僕の出した料理は全て残さず食べてくれよ”という想いもあります(笑)。
“ライヴで作品通りのトーンが出せなくても大目に見てよ”と(笑)。加えて、書き下ろし曲にしても、あえてこれからのクリエーターを起用してきた印象があります。そこにはその方々とも一緒に大きくなっていきたいとの気概もあったり?
自分は“歌ってみた”の界隈にいつつも、どこか“その界隈で流行っている歌はあえて歌いたくない”という、ひねくれた面もあったんです。あえて流行っていない、自分なりにすごくいい曲を探し出して、それを歌ってきたというか。なので、出会いはとても大切にしています。時には丸1日探して、それでも出会えなかったりするし。自分の場合は“こういった曲を歌いたい”と、それに合った曲を探すのではなく、まずは聴いてみて“この曲が歌いたい!”となるかどうかなので。ハイトーンって結構やる気を必要とするものだし、それがないとなかなか理想の声まで辿り着けないんですよ。特に自分の場合はテンションや気持ちを込めて高い声を出している面も大きいので。
アーティスト
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