平手友梨奈というアイドル:ロマン優
光連載153
おすすめ雑誌バックナンバー:ROCKIN'ON JAPAN 2019年6月号(ロッキングオン)
しかし、別に提示されたコロナ流行というテーマについて書くよりはまだ書けることはある。俺は医療従事者でも何でもないから「手洗い! 殺菌! マスク! うがい!」みたいなことしか言えないだろうし、バカなデマとか、便乗差別ツイートみたいなのをいちいち探して検証して具合が悪くなったりしたくはないのだ。それに、欅という存在から直接的な影響はないとはいえ、自分がどんなアイドルを見たいかということを考えるにあたり、間接的な影響は確実にある。それは「スーパー転校生のサイマジョカバーが最高だな」という話とは別にだ。
平手さんを中心にした欅坂46のあり方というのは、非常に歪な雰囲気を感じていた。大人に対する不信感、社会に関する違和感、孤独感を感じるようなタイプの女の子に、そういったテーマの歌詞を歌わす。彼女がいっそう、その不信感や孤独感をつのらせていくような環境において、それをやらしていくというのやり方には、怖さを感じていた。そういう資質の子を、そういう気持ちにさせる環境にさらして、そういうテーマの歌を歌わせれば、それは真に迫ったものになるだろう。テレビで見てすら感じる、異様な切迫感を感じずにはいられなかった。それは確かにかっこよかったのである。
アイドルに興味がない、あるいはアイドルを嫌いな層にしてみれば、平手さんのパフォーマンスする、反抗や孤独の歌など、業界人が金のためにやらせてる茶番にしか思えないだろう。しかし、それがどんな目的のために書かれた歌詞であろうと、そのテーマを本気でとらえて本気で演じれば、本物になる。もっとも卑俗な部分に真実がやどってしまう。演者が本気でやれば、受け手にもその本気が伝わる。外野がなんといおうと、本気で信じる演者がいて、本気で信じる受け手がいれば、その歌のメッセージは真実として機能する。平手さんはそういう力を持っていたと思う。少なくとも映像の中では。
身を削るような表現は人の心をとらえる。平手さんのやっていたことはそういうたぐいのことだ。だから、彼女は多くの人の心をとらえた。ただ、それを本人が表現として自発的に選びとったというよりは、周りの環境がそういう風にしていったのではないかという感じが拭えない。それはどこまで意図的に行われたのかはわからない。なんにしろ不自然な感じがして、彼女のパフォーマンスが素晴らしくても、なんとなく敬遠したいような気分があった。自分自身を追い込んで生まれるような表現、切迫した気持ちの中から生まれるような表現は、それを自発的に内的な必然性が本人にあって行われるぶんには別にかまわない。しかし、そういうある意味危険を伴う表現を他人にやらす、しかも10代の少女にやらせているように見えることにツラさを感じていたからだ。
単に大人にやらされているのではなく、やらされている環境の中で、自分の意思で何かを自発的にやろうとするアイドルはその人らしさが見えて、自分は好きだ。周囲の環境や理不尽に対して自分の頭で考え、自分の意思で動くようなアイドルが好きなわけだが、それは活動していく中で偶発的に生まれてくるものだと思う。それが欅坂46の場合は、そういった部分すら最初から織り込み済みで、ビジネス的に回収されるのが最初から決まっているようなやり方をしているように感じていた。アイドルの魅力の一つに「やらされている感」があるというのは、よく言われることだが、それが本来アイドル自身の中から自発的に生まれてくるような部分までコントロールしようとしているような、心の領域に踏み込んでしまっているような変さを感じていたのだ。黒い羊をわざわざ作ろうとするのは違うだろうと思った。
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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