【androp ライヴレポート】
『androp
-10th. Anniversary live-』
2020年1月12日 at 人見記念講堂
2020年1月12日 at 人見記念講堂
まずは舞台の暗がりに内澤がひとり現れ、ギターを鳴らして静かに弾き語り始めたのは、バンドの原点となった曲「Image Word」。そこに佐藤拓也(Gu&Key )と伊藤彬彦(Dr)が加わり、最後に前田恭介(Ba)のベース音が入れば“andropの音”の完成だ。まるでバンドの始まりを再現するかのような景色で幕開けると、少しずつ時代を進め、信号色のライトでタイトル通りの景色を創る「Colorful」からミラーボールが星空を映す「MirrorDance」では、フロアをクラップの嵐に。ダンサブルな響きでオーディエンスの心の箍を外し、光の洪水でトランスさせて、「Bright Siren」では白い光が垂直に走る中、大きく身体を揺らして“バイバイ”とエモーションを爆発。ライヴバンドとしての地力とバランスの良さを、初期曲を並べた最初のブロックで早くも証明してくれる。
そこに、より説得力あるメッセージが備わるターニングポイントになったのが、2012年に発表されたアルバム『one and zero』収録のバラード「End roll」。
“自分が音楽をやるのがつらくなってきた時に、終わりの曲を作ろうと取り掛かった曲です。結局終わらせることはできなくて、今、どう思ってるかと言うと…音楽やってて良かった。今日このステージに立てて、良かったなと思ってます”。
そう前置いてピアノで弾き語り始めた内澤が“あなたを照らす光になりたい”と歌い上げると、その潔くも感謝を湛えたヴォーカルが心に響き、暗いステージにミラーボールの光が満ちて、場内に大きな拍手が沸き起こる。一転、エキゾチックな4つ打ちで躍動する「World.Words.Lights.」に、スラップベースから紅白の光があふれるファンクな「Boohoo」と多彩な音楽性でフロアーを揺らしたあとは、オーディエンスと共に歌うブロックへ。「Voice」で“今の自分を好きでいたい”と宣言すれば、「One」で“自分だけのストーリー”へ進み、「Yeah! Yeah! Yeah!」では大量の紙吹雪が舞う中、“光が見えるよ”とオーディエンスを祝福する。そのドラマチックな流れは「End roll」での誓いを確かに有言実行するものだった。
気付くとステージを囲んでいた壁は消え、不穏なノイズとスモークから今日まで続く主催レーベル『image world』の初アルバムに収録された「Kaonashi」へ。不協和音と歪んだサウンドが場の空気を一変させると、そこからあふれる憎悪と悲痛に呼応するかのように、大量のモノクロ写真が会場いっぱいに映し出され、オーディエンスを圧倒する。以降、幾何学模様のライトが光る「Joker」、一面の“青”が広がる「Prism」等、andropワールドのさらなる広がりをダイナミックな映像&照明演出でも表現。極めつけに「SOS!」では音源でコラボしたCreepy Nutsがサプライズ登場して、場内は歓喜の渦に! DJ松永のスクラッチに大歓声が沸き、R-指定の“楽しんでますか”という問い掛けにフロアーは全力で腕を掲げて呼応。披露後に“多幸感と緊張で2回くらい噛んだ”とR-指定が告白すれば、内澤は“すごく幸せです”と感慨無量の様子。そして、“これからも貴方の心に届く曲…悲しい時、辛い時に貴方の側にいられる曲を作っていきたい。貴方の心に光がたくさん見出せますように”と続けられた「Hikari」は、そのMCを体現するような温もりに満ちて、満場の拍手を巻き起こした。
モニターに映る“10”の文字が“11”に進んでのアンコールでは、明治 ザ・チョコレート のキャンペーンソングとして書き下ろされ、前田がユーフォニウムを吹く愛らしいポップチューン「C」や、“いつでも“おかえり”って言える場所でありたい”と名曲「Home」も登場。さらにダブルアンコールでは、この2デイズ初日の明け方に出来上がったばかりだというスタイリッシュな新曲もお披露目して、早くもオーディエンスのクラップを引き出していた。“まだまだやりたいことがたくさんあるの で、これからもよろしくお願いします。また音楽で会いましょう!”と最後に内澤が挨拶した通り、6月12日からは全国8都市9公演に及ぶライヴハウスツアーも決定。andropの世界はさらに色鮮やかに広がりながら、いつでも聴き手の傍らに寄り添い、それぞれの“光”へと続く道筋を示し続けてゆく。
撮影:Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)/取材:清水素子
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